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弓 (2005年) いかがわしくも美しい愛の物語

弓 (2005年) いかがわしくも美しい愛の物語_d0235336_22393019.jpg 公開中の『嘆きのピエタ』が気になる、キム・ギドク監督による異色の恋愛ドラマ。
見出しの“いかがわしくも美しい”は、allcinemaさんの解説からいただきました。
だってそのままピッタリなんだもの。
(とくにいかがわしいが)
良作も問題作もいっぱいあるけれど、韓国映画はやはり一定してあざといとおもうなあ。

鬼才ギドク作品は、これがはじめて。
ゆいいつ、山に遁世しているあいだに作られたチャン・フン監督の『映画は映画だ』で、ギドク氏が製作と原案を務めていて、楽しんだ記憶があります。
本編は、孤独な老人の純愛を描いた恋愛もの。

(あらすじ)
広い海に浮かぶ船の上、老人と少女は2人だけで穏やかに暮らしていました。10年前、どこからともなく連れてきた少女を、老人は慈しむように大切に育て、少女が17歳になったら2人は結婚する予定でした。しかし、3ヵ月後に迫ったある日、生計のため開放している船に釣り客としてやってきた青年に、少女が淡い恋心を抱いたことから、2人の穏やかな関係は大きく揺らぎ始めるのです―。

弓 (2005年) いかがわしくも美しい愛の物語_d0235336_22402394.jpg

ハン・ヨルム演じる少女は、幼いなかに蠱惑的なところのある美しい娘。船に連れてこられた記憶はすでになく、ゆいいつのよすがとして、慈しんでくれる老人を盲目的に慕っています。先に控えている婚姻に懐疑心はなく、ふたりはいつも幸せでした。若い釣り客の青年に出会うまでは.....
弓 (2005年) いかがわしくも美しい愛の物語_d0235336_22395169.jpg

文明と隔絶され純真に育った17歳の娘が、青年に惹かれて少女から大人になっていくのは本能。
これまでも、奔放な彼女を女として扱い、手を出そうとする輩は大勢いたけれど、そのたびに老人は、弓矢で不届き者たちから少女を守ってきました。
その老人が、いくら純愛とはいっても、契を結ぶその日をじっくり待っているというのは、お伽噺のようでいて、どこかちょっといかがわしい。青年と出会い、はじめて自我を持った少女が、彼と船を離れることを願うのもきっと本能。

ふたりの間には、育て育てられた恩と情がたしかにあって、そこを断ち切ろうとすれば、激しい葛藤は免れません。神聖ともいえる娘と一体になる日を夢見る孤独な老人の気持ちはわからなくはないけれど....冷静に考えてみると、おおいにゆるせない気がする。ハン・ヨルムの撮り方は、男性の妄想域にあるようだし。
ただ、愛の決着点を、若造が入り込む余地もない境地まで高めたギドク監督は、やはりすごいといわざるをえなくて、老人の愛の真骨頂を描いた、なんだかものすごい映画でした、というところに落ち着きました。

おもしろいのは主演ふたりのセリフをほとんど排除したところでしょうか。目で語り合う姿に愛情の深さが表れています。それからタイトルの弓矢が、楽器に、武器に、占いの道具に、全編通して大きな存在感を放っているところもいい。極めつけは男根の表象にまでなっていてびっくりしましたが。
好きすぎて変態的行動をとる作品は私的偏愛ジャンルだけど、本編はややちょっとちがうかも。


(監督・製作・脚本・編集 キム・ギドク/90min)
by haru733 | 2013-08-08 00:00 | 韓国映画 | Comments(0)


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