『家畜人ヤプー 第五巻』 沼正三
2014年は、ヤプーにはじまりヤプーに終わったような...気が。4月から読み進めてきた幻冬舎アウトロー文庫版、シリーズ全5巻を読み終えた。
変な夢見に合いながら、ものすごいマゾヒズムの世界に陥る。他に得がたい読書体験は、嫌悪しつつも完遂可能だったけれども、本物の読者は、これを2度は読む者であるという。わたしは一度で良い。いつか再読しそうな予感すら今はないのが、正直なところ。
ある夏、ドイツ留学中の瀬部麟一郎は、婚約者のクララとともに、ポーリーンと名乗る美しい白人女に連れ去られる。たどり着いたそこは、男女の立場が逆転し、日本人が白人世界の底辺で家畜人”ヤプー”と成り下がった2千年後の未来国イースだった。わずか2日間で!麟一郎はヤプーへ、クララはイース人へと変わりゆく物語が、5巻に渡っておぞましく描かれる逆ユートピア小説。
存在する意義を知ってこわごわ手にとってきた本に、サドの『ソドム百二十日』や、バタイユの『ダマム・エドワルダ』がある。哲学として理解することも難しく、官能小説との境界さえおぼろで凄まじさばかりが記憶に新しい。そんななか『家畜人ヤプー』はただ長いだけじゃなく、だたグロイだけじゃない辛辣なものを感じながら読む事ができたのは、日本人による日本人の物語だったからだろうか。
戦後最大の奇書という位置づけが、表紙や内容のわりに手に取りやすくしてくれるのがありがたい、ヘビーながらも、読んでおいてよかったとおもえる難書だった。
アウトロー文庫の巻末には、幾度も改訂されたり豪華版の出た本書らしく、その都度、沼正三氏が認めてきた「あとがき」が纏めて収めれていて興味ぶかい。長い時を経て完成された作品らしい、一個の文芸ロマンをおもう。
そして高橋源一郎氏による解説はこんなニュアンスで締めくくる。
このSF小説は「死」に辿りついていながら、「宗教」や「文学」が表現しようとしてきた「死」とは違う。…マゾヒズムの棲息できる空間。それはなかに住むこともできる空間であり、しかし近づいても見ることはできない、そんな空間のことを、わたしたちは「暗黒星雲」と呼ぶのだ、と。
変な夢見に合いながら、ものすごいマゾヒズムの世界に陥る。他に得がたい読書体験は、嫌悪しつつも完遂可能だったけれども、本物の読者は、これを2度は読む者であるという。わたしは一度で良い。いつか再読しそうな予感すら今はないのが、正直なところ。
ある夏、ドイツ留学中の瀬部麟一郎は、婚約者のクララとともに、ポーリーンと名乗る美しい白人女に連れ去られる。たどり着いたそこは、男女の立場が逆転し、日本人が白人世界の底辺で家畜人”ヤプー”と成り下がった2千年後の未来国イースだった。わずか2日間で!麟一郎はヤプーへ、クララはイース人へと変わりゆく物語が、5巻に渡っておぞましく描かれる逆ユートピア小説。
存在する意義を知ってこわごわ手にとってきた本に、サドの『ソドム百二十日』や、バタイユの『ダマム・エドワルダ』がある。哲学として理解することも難しく、官能小説との境界さえおぼろで凄まじさばかりが記憶に新しい。そんななか『家畜人ヤプー』はただ長いだけじゃなく、だたグロイだけじゃない辛辣なものを感じながら読む事ができたのは、日本人による日本人の物語だったからだろうか。
戦後最大の奇書という位置づけが、表紙や内容のわりに手に取りやすくしてくれるのがありがたい、ヘビーながらも、読んでおいてよかったとおもえる難書だった。
アウトロー文庫の巻末には、幾度も改訂されたり豪華版の出た本書らしく、その都度、沼正三氏が認めてきた「あとがき」が纏めて収めれていて興味ぶかい。長い時を経て完成された作品らしい、一個の文芸ロマンをおもう。
そして高橋源一郎氏による解説はこんなニュアンスで締めくくる。
このSF小説は「死」に辿りついていながら、「宗教」や「文学」が表現しようとしてきた「死」とは違う。…マゾヒズムの棲息できる空間。それはなかに住むこともできる空間であり、しかし近づいても見ることはできない、そんな空間のことを、わたしたちは「暗黒星雲」と呼ぶのだ、と。
by haru733
| 2014-12-14 14:32
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映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく
by haru733
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