カテゴリ:イギリス映画( 17 )

U Want Me 2 Kill Him ユー・ウォント・ミー・トゥ・キル・ヒム (2013年)

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 2003年に英国で実際に起きた事件の映画化。
 高校生のマーク(ジェイミー・ブラックリー)は、インターネットを通じて知り合った女性レイチェル(ジェイミー・ウィンストン)に好意を抱く。チャットの世界に没頭するうち、とんでもない情報操作によって殺人まで犯していく、青年たちの危ない心理を描いたサスペンス。

一度も会ったことのない相手に本気になれる気が知れない。とはいえ、好きになった人から、いじめられっこの弟と仲良くしてあげてと頼まれたら、クラスにいる弟ジョン(トビー・レグボ)に目を掛けてあげるようにはなるだろう。ふたりは気が合い、急速に友情を深めていった。
ある日、チャットルームからレイチェルが消え、ジョンから“姉が死んだ”と告げられるマーク。アパートの屋上からの飛び降り自殺だった。
恋人のケビンからDVを受けていたことを知るマークは、ケビンの仕業だと思い込み復讐を計画するが―
しかし、おそるべきは、その先。
ケビンを囮に、テロリストを追っているという英国諜報部MI5のエージェントがマークに接触してきて、本物であることを確信した彼は、ケビンではなく別の人物の殺害依頼を受けてしまう。その標的とは、継父がイスラム過激派であると噂される、親友のジョンだった....。

架空の出来事を信じさせてしまう、凶器としてのネット。そこはウソで溢れている。無思慮な一面を持つマークは、だけど激しい怒りで判断力を欠き、英雄になれるというMI5からの言葉を鵜呑みにしてしまった。
親友を殺す、という...信じられない行動にまで出て。

ネタバレになるので割愛しつつ。マークが掛かったのは、あまりにも姑息な、もっとも身近な者が仕掛けた驚くべき罠だった。英国諜報部なんて存在しないのだ。
地味な本編の強みは、ただひとつこれがノンフィクションであるという事実だ。

ちなみに。スチール奥のおしゃれパーマの青年がマーク。彼は決行前に頭を刈るのだが、イケメンな雰囲気は髪型から漂っていたようで、坊主になったマークをすぐに認識する事ができなかった。持論では、ほんとうにカッコ良い人は、坊主も似合う。

 (監督 アンドリュー・ダグラス/92min)
 
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by haru733 | 2015-03-07 09:55 | イギリス映画 | Comments(0)

HUNGER ハンガー (2008年) 政治犯として生きるための死

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 『それでも夜は明ける』のアカデミー作品賞受賞をきっかけに、日本でも遅れて上映された、スティーヴ・マックイーン監督の長編デビュー作。主演はマックイーン作品には欠かせないマイケル・ファスベンダー氏。
とても初期作品とはおもえない、静謐に削ぎ落とされたドラマ。IRAものとしては珍しく、戦闘シーンがなく、刑務所を舞台にした閉塞感のうちに、実際に起こった事件とIRAの悲惨な歴史を浮かびあがらせていく。

1981年、北アイルランド、メイズ刑務所。政治犯としての権利を奪われたIRAの囚人たちは、看守たちの凄惨な暴力によって制圧されていた。あらゆる抵抗を重ねても変わらない現状に、ボビー・サンズ(マイケル・ファスベンダー)を核とするメンバーたちは、最後の手段にハンガー・ストライキの決行を決意するのだが―

ついわたしは、食餌を絶つことを、神聖な行為として尊んでしまう。ハンガー・ストライキに悪印象はなく、たとえば生前、幾度も絶食したガンジーさんがイギリスを困らせた頑固な姿には、辟易しながらも尊敬やまない。だけど、ガンジーさんの場合、まだ死ねないと、思ってはいなかっただろうか。ボビー・サンズ氏を筆頭に餓死していった7名のメンバーたちは、死ぬことを覚悟していた。

ソツがない、スティーヴ・マックイーン作品はどれも好き。
冒頭は、新入りの囚人目線で、悪意と暴力に満ちた刑務所内部の恐ろしさに、一緒になって震える。並行して描かれる名もなき看守の目線は、その平凡な日常と、勤務中の暴力と、虚無感を映し出す。
やっと中盤になってボビー・サンズが登場してからは、死へと辿る道筋が淡々と描かれていく―。
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すごいのは、看守が雪のなかで煙草を燻らすシーンに漂う哀愁。得意とする凄まじいシーンの数々。
そして、ハンストを決意した主人公が、牧師と、4本の煙草を吸い終わるまで対話をつづける、驚異的な長回しだ。
食餌を絶った人の体はどんなふうに破壊され死に至るのか―。冷静な傍観者たるがゆえに見えてくる、事実の重さにおののいた。
『SHAME』の前にこんな凄い作品があったとは。

(イギリス=アイルランド合作/96min)

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by haru733 | 2015-02-03 12:31 | イギリス映画 | Comments(0)

バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所 (2012年) ホラー的ニュアンスの積み重ね

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 原題『Berberian Sound Studio』から『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』とは、なんと素敵な邦題。劇場未公開作は、あらゆるホラー映画のエッセンスだけでできている、血も惨劇もない、地味ながらもちょっと良い変り種ホラー。
『ムカデ人間2』のローレンス・R・ハーヴェイ氏を彷彿する主演トビー・ジョーンズ氏が、小太りで醜い小男の風貌でホラー映画によく似合う。

ホラー映画の巨匠サンティーニ監督に雇われ、イタリアのB級怪奇映画専門特殊音響スタジオ、バーバリアン・サウンド・スタジオに赴任してきた音響技師ギルデロイは、突如異国の地に放り込まれた上、高慢な女優やお役所仕事しかしない事務員たちに囲まれ戸惑うばかり。毎日のように残虐シーンに触れ続ける彼は、やがて自身に潜む凶暴性を目覚めさせていく……。
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舞台がサスペリアなイタリアというだけあって、原色を多用した映像美と、恐怖を増幅する音楽などアーティスティック。製作に名を連ねるキース・グリフィス氏は、過去にヤン・シュヴァンクマイエル作品を手がけてきた人で、キッチュな手作り感など何気に微笑ましくさえあった。
全然怖くないけれど、絶叫する声、野菜を切り刻む音、色彩の妙だけで構成される不気味な小品は、単にニュアンスの積み重ねであっても、捨てて置けないホラー映画へのリスペクトに溢れていた。
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(監督・脚本 ピーター・ストリックランド/92min)
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by haru733 | 2014-09-30 20:42 | イギリス映画 | Comments(0)

サンシャイン/歌声が響く街 (2013年) スコットランド版『マンマ・ミーア!』誕生

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 スコットランドの人気バンド、プロクレイマーズの名曲をフィーチャーした英国のヒット・ミュージカルを映画化。
(あらすじ) スコットランドの田舎町リース。結婚25周年を迎えた夫婦ロブとジーンのもとに、アフガニスタンに出征していた息子デイヴィーが親友のアリーとともに無事帰還する。デイヴィーの妹リズも恋人アリーとの再会に大喜び。そんな矢先、ロブには隠し子騒動が持ち上がり、リズはアリーの突然のプロポーズに応えることが出来ず、デイヴィーさえも新恋人との間に暗雲が...。それぞれに傷つき、すっかりバラバラとなり人生最大の危機を迎えた一家は、再び絆を取り戻すことができるのか― (allcinemaより)

先週劇場で観てから、時は経ってしまったけれど、期待以上に面白かったので一言感想。
冒頭、長男がいるアフガニスタンの戦場場面から、とってもいい。ミュージカルに限らず、掴みはやはり大切。
人気バンドのナンバーを知らなくても、時に涙しながら最後までノリよく楽しめる、元気になれる一本。

隠し子騒動のあとに突然倒れる夫の構図は もうかなり王道をいっているし、はたして妻ジーンのように寛容になれるかは大いに疑問。いたるところに既視感。でも希望的観測が似合ってしまう好編もたまには悪くない。

民衆が揃って歌い踊るラストの場面を観て、インド映画を連想してしまうのはイジワルだろうか。イギリスもまた、いま最も熱いボリウッドの影響を受けているとしたら、それはそれでうれしたのしい。
監督は2作品目となる『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』にも出演していた有名俳優、デクスター・フレッチャー氏。3度目もありそうな予感。 (100min)
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by haru733 | 2014-08-21 23:56 | イギリス映画 | Comments(0)

マン・オン・ワイヤー (2008年) 美しき自由の伝説

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 アメリカ同時多発テロ事件911で崩壊した、ワールド・トレード・センタービルに、かつて鋼鉄のワイヤーをはって綱渡りした男がいた。名前はフィリップ・プティ、フランスの若き大道芸人。
その、無謀かつ美しく詩的なパフォーマンスへのチャレンジには、多くの仲間たちの支えと周到な計画とがあった。途方もない夢を抱いたプティが、それを実現させるまでの長き道のりを、関係者の証言を挟みつつ、当時の映像と再現ドラマを織り交ぜ明らかにしていく衝撃と感動のドキュメンタリー。

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もうとても現実とはおもえないほどすばらしい、遥か上空の揺るぎないプティの歩み。神々しい彼の表情と仕草のひとつひとつに目を逸らすことができない。
着実に夢の成功へとむかった若者たちの挑戦、友情と反目、栄光とその先にあるもの―。

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己の能力を100%信じる自信に満ちたプティは無敵で、命懸けの挑戦さえ美しい見世物に変わる。
1974年のニューヨークから、時を経て、今なお目撃するすべてのひとの心を掴んで離さない、この夢のようなひと時は、ドキュメンタリー映画の枠を超えて、深い感慨で包みこんでくれる。

あんなに愛しあっていた恋人との別れ。彼を支えた仲間たちとの決別。
綱の上では時空さえ超越したかにおもえるプティでも、夢を叶えた先にあったのは、けして栄光だけではなかった。当然、時は移ろい、人々や時代は変わりゆく。
なによりも、いまや老い、あの頃の自信と技術と夢は過ぎ去り、相応に肉体の変化したプティ氏の歩みを見つめていると、おおきな切なさに見舞われるのはどうしたことだろう。余韻はそこはかとなく。

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(監督 ジェームズ・マーシュ/95min)
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by haru733 | 2014-06-17 01:21 | イギリス映画 | Comments(0)

グランド・ブダペスト・ホテル (2013年) 究極のおもてなしとミステリーへようこそ

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 ウェス・アンダーソン監督の最新作は豪華キャストを迎えて贈る群像ミステリー・コメディ。
 1932年、ヨーロッパの一流ホテル"グランド・ブダペスト・ホテル”のとある常連客をめぐる殺人事件。その遺産争いに巻き込まれた伝説のコンシェルジュ、グスタヴ・H(レイフ・ファインズ)は、忠実なるベルボーイ、ゼロ・ムスタファ(トニー・レヴォロリ)と共に、自らの誇りとホテルの威信を懸けて事件を解明すべく繰り広げる大冒険の行方をユーモラスに描く。
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評判のすこぶる良いウェス・アンダーソン作品の過去作を辿りたくなる面白さ。
見た目に可愛らしいホテルᰮでの室内劇にはじまり、投獄・脱獄・追跡・逃亡と、めまぐるしく展開する、『ダージリン急行』を彷彿するロードムービー。色彩豊かな手作り感あふれる、底抜けに明るいキッチュな世界観。ミニチュア撮影などまさしく、ミシェル・ゴンドリーやロイ・アンダーソンの、あの敬愛する雰囲気に似ているのだけれど、、なぜだろう、心底楽しむ気分には至らなかった。それはきっと、陰気あっての陽気さが好きだから、根っから陽気なだけは物足りないのかも。
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アンダーソン作品を辿っていくと、壮年になってますます魅力的なビル・マーレイ氏が、毎度キャスティングされている。何年も前からマーレイ氏の魅力に気づいていたのだなあ。ジェイソン・シュワルツマンをはじめ、コッポラ一族へと繋がる、素敵なトライアングルが形成されていて、本編の豪華顔ぶれと合わせて豊かな人脈が垣間見えるよう。
ちなみに、ミニチュア撮影を使った、痛快なスキー追跡シーンは噂通りの可笑しさ。だいすきなロマン・ポランスキーfilm『吸血鬼』の素敵な滑降シーンを思い出した。

(100min/イギリス=ドイツ合作)
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by haru733 | 2014-06-16 23:58 | イギリス映画 | Comments(0)

カルテット!人生のオペラハウス (2012年) 名優陣と名音楽家たちの豪華共演

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 先進国のいたる国で、老いをテーマにした作品が次々と作られている昨今。若い頃、アメリカン・ニューシネマで光り輝いていたダスティン・ホフマンも歳をとり、初監督作のテーマが、ズバリ”老い”であることに、一抹の淋しさと感慨を覚えます。
こどものころ、老年期には必ず諦めの境地に入ると信じて疑わなかったのに。幾つになっても、ひとは人生に迷い、苦しみ、恋をすることを、これだけ多くみせられると、神妙な気持ちになってくる。
自分らしいより良き人生を求めて、あがき続けるのが幸福か。宮沢賢治じゃないけれど、欲はなくけして怒らずいつも静かに笑って波風の立たない人生が幸福か。わたしは後者のように老いたいと、願うのだけどな。

引退した音楽家たちが暮らす”ビーチャム・ハウス”には、カルテット仲間であるレジー(トム・コートネイ)、シシー(ポーリーン・コリンズ)、ウィルフ(ビリー・コノリー)が暮らしている。そこへもう一人の仲間である、レジーの元妻・ジーン(マギー・スミス)が新たな入居者としてやってきた。彼女はかつて仲間たちを裏切り、傷つけ、今は大スターになっていた。そんな中、”ビーチャム・ハウス”が閉鎖の危機を迎える。存続の条件はただひとつ、コンサートを成功させること。しかしジーンは過去の栄光に縛られ、歌を封印してしまっていた―。  (allcinemaより〉

たくさんの音楽家たちが奏でる音の数々。場面転換ごと挿入される音楽が小気味よい。
輝かしい経歴を誇る表現者たちの共演と、音楽の妙味。これがあるから、凡庸な作品になるのをまぬがれている、そんな一本だとおもいます。

『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』につづいて、マギー・スミスが、あまり魅力的に映らないのはなぜだろう。マクゴナガル先生のころから、徐々に大きくなってきたせいかも。

 (99min)
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by haru733 | 2014-05-27 22:19 | イギリス映画 | Comments(0)

星の王子さま (1974年) 大切なものは目には見えないんだよ

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 ひさしぶりに読む『星の王子さま』でした。回を重ねるごと、こころに沁みる素朴なあじわい。新訳版は読みやすいとしても、内藤濯さんの翻訳の古風な語彙選びはとても好きです。
読み返すうち、ミュージカルになって映画化された『星の王子さま』を思い出して、過去の日記からひっぱってみました。
スタンリー・ドーネン監督、キツネ役にジーン・ワイルダー、ヘビ役にボブ・フォッシー、なんて豪華!
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王子さまも僕もイメージに反さず、原作に忠実で、物語の本質をちゃんと捉えた映像化。DVDに吹き替えはなくて、単に子どもばかりが観る童話とはいえないおもしろい位置にあります。
子どもには難しいメタファーがいっぱいあるけれど、それを手作り感あふれるセットでファンタジックに近づきやすいミュージカルで見せて、独特な雰囲気を醸し出したあったかい作品は、歌とダンスが秀逸です。

愛すべき小さな星のワガママなバラ、キツネが残した言葉、ふと消えてしまった王子さま....様々なことが身近なものに通じて切なく、物悲しく、愛おしい。
このスチールだけでも、なにか伝わってくるものがあります。
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by haru733 | 2013-08-16 23:01 | イギリス映画 | Comments(2)

マドモアゼル (1966年) 傲慢な女教師の欲望 

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 フランスの農村。村人から信頼の厚い女教師は、欲求不満から裏で悪質ないたずらを繰り返している。やがてイタリアからの出稼ぎ労働者である木こりを誘惑し、息子共々不幸へと追いやる、魔性の女の行状を描いたスリラー。

これはたしかにトラウマ系の作品かも。欲求不満のマドモアゼルって...想像に難くない(爆)。脚本にはジャン・ジュネと、あのマルグリット・デュラスが名を連ねている凄みがあります。

極端に潔癖で神経質なマドモアゼル(ジャンヌ・モロー)は、淑女の仮面をかぶった厳格な教師。しかし実際は陰険で、どす黒くて、ど変態。
村の女たちと同じように、イタリアからやって来たヤモメの木こりの虜となり、放火を繰り返しては、騒ぎのなかで活躍する彼を見つめるのが悦楽の時となっているのでした。

マドモアゼルが欲望を募らせ疼いているさまはなんとも強烈。ついに淑女の仮面を剥いだ彼女の奔放な淫らさは、間接的描写ではあるけれど執拗でエロティックです。
束の間、愛し合う男と女―。しかしことの顛末は、悪女マドモアゼルの冷酷な仕打ちによって悲劇へとむかうばかり。

彼女の正体を見抜けるのは、木こりの一人息子で、マドモアゼルの教え子である少年、ただひとりだけ。
彼は倒錯したマドモアゼルによって、父親への欲望の裏返しに虐められ蔑まれるというのに、先生が犯人であることを、さいごまで黙っているのです。いたいけでなんて可哀想なの!
しかし、マゾヒズム・マドモアゼルはどこまでも下劣、親子の絆を裂いて欲望を貪ったあとは、そそくさと村を去っていくのでした。

抉くてこわくて、無駄のないおもしろさでした。



 (102min/イギリス=フランス/監督 トニー・リチャードソン)
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by haru733 | 2013-04-22 00:00 | イギリス映画 | Comments(0)

ジェーン・エア (2011年) 運命に妬まれた、魂で結ばれた愛 

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 これまで幾度となく映像化されてきた、ヴィクトリア期の女流作家シャーロット・ブロンテによる長編『ジェーン・エア』。小説は未読のまま、関連作に触れるのもこれがはじめてです。
19世紀半ばには、自由恋愛、男女平等意識、反骨精神、女性からの告白、そのすべてが社会常識外だったのだそう。
ミア・ワシコウスカの清廉で凛とした姿が、物語の雰囲気にぴったり。コルセットに締め付けられた洋服や、きっちり編みこんだ長い髪、部屋の調度に至るまで、憧れる古き良きイギリスがここにはあります。密かに感じた彼女への物足りなさは、円熟したマイケル・ファスベンダーの男っぷりが良すぎるせいです。

由緒正しいロチェスター家の家庭教師となった孤児のジェーンは、気難しいロチェスター氏の前でも素直に振る舞う媚びない実直さ。その意思の強さで、やがて孤独なロチェスター氏の心を動かし、いつしか身分を越えて互いに愛しあうのでしたが・・・・結婚式の日、ロチェスターには既に気の狂った妻がいて幽閉されていることが明らかになり、ジェーンはそのまま屋敷を飛び出すのでした。
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曲がったことを嫌い、心に正直に、人を憎まず妬まず、敬虔であるジェーンの生き方は、おなじ女として時代を越えていいなとおもえるのでした。強くて自立した女と、破天荒だった貴族との真剣な愛のかたち。
ただし回想シーンがわかりにくいのは玉に瑕。

時同じくして観た、邦画の『金色夜叉』(清水宏監督)は、欧米に比べ遅れている明治時代の日本が舞台で対照的な作品でした。
結婚を間近にして、突如、富豪のところへ嫁いでいった元婚約者・お宮を憎むあまり、高利貸しになり守銭奴の道を歩む貫一、ふたりの長きにわたる愛憎を描いた、尾崎紅葉原作の映画化。

親のために裏切りの末の愛のない結婚をして、本音を黙し耐え忍ぶお宮に、自立した女性像はどこにもない。典型的なひと昔前の恋愛と、頑なにすぎるふたりの愛の結末が、『ジェーン』を前にしてとてももどかしかった。清水監督の語り口はなめらかだけれど、甘美とまではいかず。
原作を読んでみたいとおもわせるのは、俄然、『ジェーン・エア』のほうでした。

 
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by haru733 | 2013-04-19 00:00 | イギリス映画 | Comments(2)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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