カテゴリ:ロシア・ソ連映画( 2 )

夏の終止符 (2010年)

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  ベルリン国際映画祭で2つの賞を獲得した、劇場未公開作品。
見終えてずいぶん経ったけれど、まだ掴みどころのない良さをうまく言葉にできないでいる。背景が謎に包まれているだけに、受け取る側がうんとドラマを膨らませることができる魅力的でミステリアスな作品だった。

ロシア北極圏辺境の島にある気象観測所。ベテランのセルゲイと新米のパーシャは、放射能の数値を測定し、本庁にデータを送る仕事を黙々とこなしていた。ある日、パーシャに仕事を任せて釣りに出かけたセルゲイは、帰宅後、彼のミスを知り激しく怒鳴りつける。その直後に、家族の危篤を知らせるセルゲイ宛の無線をうけとったパーシャは、八つ当たりが怖くてとても伝えることができなくなってしまうのだった―。

閉塞した孤島に、登場人物はわずか2人だけ。放射線を放つ謎の物体を監視している彼らは、汚染された厳しい自然のなかに孤立した存在だ。外部との接点は無線のみ。家族と離れた孤独な彼らが、かろうじて保っている良識は、些細なことをキッカケに脆くも音を立てて崩れていく。

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どちらにも非はありすぎるほどあるけれど、こんな恐ろしいシチュエーションでは、破綻は必然の結果にみえてくる。
なにをしでかすがわからないセルゲイの粗暴さに身の危険を感じたパーシャは、観測所を飛び出していく。そんな彼を、猟銃を携えたセルゲイが追う・・・・。仲裁する者さえいない島で、事態は悪化の一途を辿るばかりなのだ。
過度の恐怖心と、飢えと寒さで、みるみるガオっていくパーシャの命懸けのサバイブを見ているのは過酷。けれど、なによりおぞましいのは、放射能で汚染した魚をセルゲイの食料庫に仕込む、追い詰められたパーシャの行動だったとわたしはおもう。
放射能というキーワードは、原発事故以来、とてもリアルに恐怖を与えてくるようになった。
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やがて配給船がやってきて、魔の島から解放される日はちゃんとくる。しかし帰還を許されるのはひとりだけ。それがパーシャなのか、セルゲイなのかは、ぜひご覧になってたしかめてみてください。
ふたりの交わす、長い和解と別れと諦めの抱擁が、思いがけないほど深淵な余韻をのこしていく―ロシア発のフシギな骨太サスペンス。


(監督・脚本 アレクセイ・ポポグレブスキー/124min)
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by haru733 | 2012-10-09 00:00 | ロシア・ソ連映画 | Comments(0)

ククーシュカ ラップランドの妖精 (2002年)

d0235336_1535249.jpg 第二次大戦末期の1944年、北欧フィンランドの最北部に位置するラップランド。フィンランド軍はかつて奪われた土地を奪還するため、ドイツ軍と同盟を組みロシア軍と戦っていた。ある時、互いに戦争状態にあったフィンランド兵とロシア兵が、先住民族のサーミ人女性に助けられ、言葉の通じない3人の奇妙な共同生活がはじまる――。

登場人物ほぼ三人。それがまったく互いの言葉を解さない、一方的な会話をするものだからおかしくて仕方がない。
フィンランド軍の狙撃兵ヴェイッコは、反戦的態度が問題でドイツの軍服を着せられ置き去りに。一方、反体制という濡れ衣で秘密警察に逮捕されたロシア軍大尉イワンは、護送中に味方の誤爆に遭い、負傷したところを先住民の女性・アンニに助けられる。
ドイツの軍服が生む誤解、味方による誤爆、奇妙な勘違いの連鎖は広がり、思いもよらないほどシニカルで滑稽なドラマが生まれる。

しかも、夫が戦場へ出たまま4年も戻らないアンニは、突然現われた2人の男にすっかり欲情してしまい、色目を使いまくるという・・・・(笑)。当然、若い狙撃兵ヴェイッコが選ばれて、残されたイワンはヤキモチ。更なるヤキモチが生む悲劇、その後の奇蹟など、辛辣でありながらユーモラスな寓話のような反戦映画だった。
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終盤に、撃たれて倒れたヴェイッコを、アンニが不思議な魔術で黄泉の国から呼び戻す場面など、かなり幻想チック。寓話だから伝えられる反戦メッセージというのもあるのだ。このての語り口は、何度観てもいい。


監督・脚本  アレクサンドル・ロゴシュキン
出演  アンニ=クリスティーナ・ユーソ  ヴィッレ・ハーパサロ  ヴィクトル・ブィチコフ、他

(104min)
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by haru733 | 2012-04-05 16:27 | ロシア・ソ連映画 | Comments(0)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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