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ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区 (2012年) 4人の巨匠が語る、ポルトガル発祥の地の記憶

 ポルトガル発祥の地といわれる古都ギマランイスをテーマに、ポルトガル縁の4人の巨匠たちが競作したオムニバス。アキ・カウリスマキ、ペドロ・コスタ、ビクトル・エリセ、マノエル・ド・オリヴェイラと聞けば観ないわけにいかない、映画ファンの食指をくすぐる一本。

のはずでしたが。見ごたえあるものは、いつもの飄々たる台詞少ななアキ・カウリスマキ氏の第1話目と、ビクトル・エリセ氏によるドキュメンタリー第3話『割れたガラス』くらいでしょうか。
2012年“欧州文化首都”に指定されたギマランイスを紹介するために企画したというぶん、一本の映画としての満足は極めて低いと言わざるを得ないかも。
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 第1話 『バーテンダー』 アキ・カウリスマキfilm

このスチルだけでも味わいある、バーテンダーのとある一日。しがない独り身のバーテンダー(イルッカ・コイヴラ)。男の店には、今日も安酒を飲む常連客以外、だあれもこない。近所の繁盛店を真似てみたり、花を飾って女を待ったり。しかし、何も起こらない1日は静かに終わりを迎える。
ミニマリズム、ここに極まれり。
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 第2話 『スウィート・エクソシスト』 ペドロ・コスタfilm

本編が一番わかりにくく掴めない。
1974年、独裁政権を打倒するため、植民地カーボヴェルデからやって来た移民労働者のヴェントゥーラが、クーデターの最中に森で意識を失い、そこで見る幻覚を描く。精神病院に収容され、なぜかエレベーターの中にいるヴェントゥーラは、ブロンズのペンキを塗りたくったポルトガル兵士と奇妙な会話劇を繰り広げる…

ポルトガルの歴史を知っていれば、なんらかの感慨はあったのかも。それにしても好きな作風ではなかった。
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 第3話 『割れたガラス』 ビクトル・エリセfilm

2002年に閉鎖された“割れた窓ガラス工場”こと、リオ・ヴィゼラ紡績繊維工場を舞台に、かつてここで働いた名もなき人々の話に耳を傾け、その人生を見つめる。

なにもない、淡々とした独白シーンの積み重ねが味わい深い。それだけで流石とおもっちゃう。自分のことを話す市井の人々の居住まいがいい。


 第4話 『征服者、征服さる』 マノエル・ド・オリヴェイラfilm

ギマランイス歴史地区へやって来た観光客たちは、ポルトガル王を自ら宣言した征服者アフォンソ・エンリケスの銅像を、一斉にシャッターを切って写真に収める。観光客たちに征服者が征服される―という、なんてことないオチ。
機転の利いたポップな作品ながら、おもしろいとは思えず。

どれもまずまずな中で、敬愛するアキ・カウリスマキ作品だけは、常に外れがないのが救い。 (96min)
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by haru733 | 2014-09-30 21:46 | ポルトガル映画

バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所 (2012年) ホラー的ニュアンスの積み重ね

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 原題『Berberian Sound Studio』から『バーバリアン怪奇映画特殊音響効果製作所』とは、なんと素敵な邦題。劇場未公開作は、あらゆるホラー映画のエッセンスだけでできている、血も惨劇もない、地味ながらもちょっと良い変り種ホラー。
『ムカデ人間2』のローレンス・R・ハーヴェイ氏を彷彿する主演トビー・ジョーンズ氏が、小太りで醜い小男の風貌でホラー映画によく似合う。

ホラー映画の巨匠サンティーニ監督に雇われ、イタリアのB級怪奇映画専門特殊音響スタジオ、バーバリアン・サウンド・スタジオに赴任してきた音響技師ギルデロイは、突如異国の地に放り込まれた上、高慢な女優やお役所仕事しかしない事務員たちに囲まれ戸惑うばかり。毎日のように残虐シーンに触れ続ける彼は、やがて自身に潜む凶暴性を目覚めさせていく……。
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舞台がサスペリアなイタリアというだけあって、原色を多用した映像美と、恐怖を増幅する音楽などアーティスティック。製作に名を連ねるキース・グリフィス氏は、過去にヤン・シュヴァンクマイエル作品を手がけてきた人で、キッチュな手作り感など何気に微笑ましくさえあった。
全然怖くないけれど、絶叫する声、野菜を切り刻む音、色彩の妙だけで構成される不気味な小品は、単にニュアンスの積み重ねであっても、捨てて置けないホラー映画へのリスペクトに溢れていた。
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(監督・脚本 ピーター・ストリックランド/92min)
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by haru733 | 2014-09-30 20:42 | イギリス映画 | Comments(0)

天使の分け前 (2012年) 人生の大逆転

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 このごろ、”スコットランド”という名をよく耳にする。独立反対で幕を下ろした国民総選挙、ミュージカル映画『サンシャイン 歌声が響く街』、今週はじまった朝ドラの『マッサン』など。社会派ケン・ローチ監督が、不況のスコットランドを舞台に描いた本編はとってもおもしろかった。
ウイスキーとの出会いをきっかけに成長していく若者たちの姿を描くヒューマン・コメディ。

主人公のロビー(ポール・ブラニガン)は、もうすぐ父親になるというのに、トラブルばかり繰り返しているゴロツキ。逮捕され社会奉仕活動を言い渡された彼は、そこで立派な指導者のハリーと出会い、ウイスキーの奥深さを知ることになる。次第にテイスティングの才能を目覚めさせていったロビーは、ある時、北ハイランドで樽入り最高級ウイスキーが見つかり高値でオークションにかけられることを知る。自らの人生を変えるチャンスをものにするため、作業仲間とともに入念な計画を練って乗り込んでいくのだが……。
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こんなにもユーモアのあるローチ作品ははじめて。小気味良く風刺する、視線の温かさにほっとする、いままでにない良さをかんじる。
主演のポール・ブラニガンは演技未経験。自らもグラスゴーで生まれ育った、憎めない、だけど近づき難い繊細なあぶなさが印象的な、小柄でやんちゃな存在がなんといっても魅力だ。彼は、スコットランドを舞台にしたミュージカル『サンシャイン 歌声が響く街』にも出演していて、本編のエンディング曲も、その『サンシャイン』で使われたプロクレイマーズによる楽曲だった。
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一発逆転、一億円を越すお宝スコッチ樽の中身をちょっとだけ手に入れるべく、キルトに身を包んだ前科ものたちの運命はいかに―
さらなる犯罪に手を染めていく構図は『この自由な世界で』とおなじなのに、あのやりきれない痛切さは皆無。始終笑いがあり、愛がある。
スマート犯罪の戦利品は、親身になって社会復帰を支えてくれたハリーの元へもちゃんと届く。ほろ酔いのように体がポッと赤く篤くなる、こころ温まる再生のドラマだった。

(101min/イギリス= フランス= ベルギー= イタリア合作)
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by haru733 | 2014-09-30 10:15 | 多国合作映画 | Comments(0)

『マンク』 マシュー・グレゴリー ルイス著/『魔の山』 トーマス・マン著

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 18世紀の発禁本は、著者わずか19歳の時に完成したという。映画化された内容とは粗方おなじく、肝心なところはやや異なっていた。

信仰篤き若き僧院長アンブロシオが、見習い僧を装って修道院に入りこんだ美しい女マチルダの誘惑にかかり、姦淫の戒を破ってしまう。破戒僧になり本性をあらわにしていくアンブロシオは、魔性の女の意のままに、あらゆる悪徳に身を沈めていくのだった―

600頁を越える大作の早々に破戒僧となり下がる高僧の煩悩を前にして、信仰とは僧院とはいったいなにかと思わずにいれない。それはむかしの名作、『尼僧物語』や『修道女』をみてさらに増す感情で、宗教が隠しておけない、もうひとつの側面に違いない。
それにしても、病に侵され朦朧となったところをマチルダによって無理やり姦淫の罠に嵌められた、映画版のアンブロシオとはちがい、原作では自らが進んで情欲に溺れていく、人間性の塊であった高僧が生々しかった。
深く慕ってきた見習い僧が”女”であることを知ってから、情欲と親愛との狭間に揺れ動き、克ち得た地位を失う恐怖に怯える前半部がおもしろかっただけに、破戒僧となる前の件を600頁に渡って延々悶々と描くだけの作品でも、きっと私的好みだったにちがいない。
ここいらで、濁りのない静謐な僧院を見つめたドキュメンタリー『大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院』を観れば、きっとほどよく浄化されるだろうか。浄化、されたくなる。

もうずいぶん前からトーマス・マンの『魔の山』を遅々と読んでいるのだけれど、上下巻あわせて1500頁の大作は、セテムブリーニとナフタの高尚な会話場面や、作品を通して作者が論じる思想・哲学・宗教・政治の小難しい議論を、高橋義孝氏による雄弁な翻訳は難しいながらも、どこまでも凛として背筋が伸びるおもい。
それを考えると『マンク』は、井上一夫氏の翻訳によるものなのか、原文によるものなのか、後半は文章が損じているようで、首をかしげながら読んだ本だった。

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by haru733 | 2014-09-28 22:47 | | Comments(0)

空沼岳 *秋

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 秋の空沼岳に登ってきました。月はじめに降った大雨があちらこちらに爪痕を残して、驚いたことに駐車場までの道が寸断されているのでした。
林道に駐車して、おそるおそる岩や流木のなかを歩いていくと、いつもの登山口がやっと見えてきました。橋は濁流に流され、誰かが渡した丸太が2本。荒れ放題だけれど、なんとか行けそう。一緒にのぼった友人が、先入観ない目で空沼岳の惨状をみて、あまり驚かないでくれたのが救いだったかも。尋常時を知らない彼女は、すごいことだーとひとり騒ぐわたしをよそに、怯まず付いてきてくれたのでした。
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万計沼までが一番損壊がはげしく、木道は崩れ、崩落してすっかり道のない場所もありました。剛毛な笹にしがみつきドロンコになりながら道なき道を越えてみる。自然の猛威を見せつけられてはビクつくのでしたが、山登りをはじめて、こんなにサバイバルしたのも、こんなに緊張したのも初めて。
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とちゅうキビタキに出会って、ちょっとだけ和むひととき。ケガをしているのかじっと動く気配なく、こっそり手持ちのヒマワリの種をあげてみたけれど野生ではさすがに寄り付かず。決死の覚悟を決めたキビタキは、暫くしたあと、こちらめがけて猛突進して逃げていきました。ビビットカラーが愛らしかった。
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万計沼も真簾沼も、いつ来てもすばらしいのだけれど、ことしの紅葉は10年に一度のうつくしさだそう。そういわれると、どことなしか山の色づきがいつもよりキレイに思える。

第二の橋も流されて、とちゅう30分も逡巡していたせいで、ここまで来るのに約3時間。強い川の流れを、どうにか上流で越えてはみたけれど、その先には剛毛な笹が行く手を阻み、無理やり漕いで行くと、巣でもあったのか騒ぎ出した蜂に刺される友...。結局戻って、いつもの場所から足を濡らしながら案外楽に渡っていくことができました。
かなりサバイバルな山行となったわりに、引き返そうという意見は出ないのでした。

ぬかるみを越え、片道8キロを4時間かけてやっと目指す頂はすぐそこ。
この日は、4組の人とすれ違っただけの、静かな山でした。山頂もふたりでひとり占め。
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空沼岳、標高1251m。2度登っていて、はじめて山頂の標を見た気がする。いつも混雑していたせいかな、忘れてるだけかな、真っ黒で無骨な標でした。
万計沼でひとつ、山頂でひとつ、おむすびを頬張りながら、厳しかった道のりをがんばって登ってきたことを称えあうひと時。途中で諦めようと思えなかった、似た者同士がこころ強い。辛かったのに、もう次の山のことを考えています。

下りにもたっぷり3時間半かかって、全行程8時間20分の長丁場となりました。帰りはバテバテで足の痛みに耐えながら、いつもより長く感じた空沼岳でした。
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↑ 二本目の橋はこんなふう。ここを渡るのに30分のロス。後ろから来た青年は上流を渡っていったけれど、わたしたちは慎重に、この岩の上を越えました。写真でみるとなんてことないけれど、実際は怖い激流。
ムリだと尻込みした行きとは違い、大丈夫とわかっている帰りは簡単なのでした。
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登山口から駐車場への川は、荒れた手前のその奥に隠れて強い流れが。丸太の橋が架かっているのでここも大丈夫。

小屋のなかの入山届けに記帳して、いままではすぐ帰路につけましたが、暫くは、いやこれからは、車を置いてきた林道まで荒れた川辺を歩くのでしょうか。復活するまで、駐車スペースはとても狭く、せいぜい4台というところ。どのように整備されるのか今後が気になります。
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苦労したぶん、すばらしかった山頂からの眺め。遠くに見えたうつくしい支笏湖は、いま、あの大雨のせいで流れ込んだ土砂と青とが混ざり合って、深緑に見えているのだそう。
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by haru733 | 2014-09-27 22:28 | | Comments(2)

雨竜沼湿原―南暑寒岳 *初秋

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 週末は南暑寒岳に登ってきました。毎年恒例、山友達3人で行く秋の山行は、雨に降られることが多いのだけれど、ことしもどうして降ったり晴れたりの変わりやすい空模様。

4時起床、5時出発。車窓から見える美しい朝靄や雲海や日の出に感嘆しながら、ひた走ること2時間。雨竜町に着きました。みんな揃って7時30分に入山。

雨竜沼湿原まで3.5キロを、1時間20分ほどで登ると、広々開けた湿原のなかのテラスにつきました。ここまでは去年、家人と一度来た道で、その先は初めて足を踏み入れる領域でした。
すっかり黄金色に包まれた雄大な湿原が、なぜかサバンナ風なのがおかしい。
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テラスで一休みして、さらに長い木道を歩くこと50分。急登を上がりきると、湿原を眼下に望む展望台へとつきました。さっきまで居た雨竜沼が小さく見える。
片道9キロの長丁場な山だけれど、まだまだ元気。ここから南暑寒岳への登山が始まるのです。

最近、とあるきっかけで、長らく飼いならしてきた貧血の治療をはじめたのだけれど、数年ぶりで平常値に戻っている身体はウソみたいに楽で、息切れも動悸も穏やかなのでした。動悸にいたっては、あんなに破裂寸前なほど酷使していたことが怖くなるくらい、心臓の存在を忘れて山に登れるようになりました。鉄力、おそるべし。
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ここから、笹原のつづく山道に、熊の糞と掘り返し痕をみること幾数回。確実にいるわけなのです。
熊鈴全開で一気に頂をめざしました。

だんだん雲が近くなってきて、目指す頂のやや手前、味のある石碑が傾いて立つあたりから、360℃の絶景が広がってきます。稜線を歩いて、もう少し。
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ついに山頂にたどり着きました。標高1296m。3時間40分の良いペースです。
ほかに登山者はなく、後にも先にも、この日、南暑寒岳に登ったのはわたしたちだけみたい。湿原まで降りてきて、やっと遠くに人影を見つけたときには、うれしいものです。そのかわり、山頂はずっと3人占めで、見慣れない道北の凛として美しい山々を飽かずに眺めました。雄雄しい山々なのでした。
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なんといっても、ここから縦走路のつづいている暑寒別岳のカッコいいこと。さらに片道4キロ登り、いつかあの頂に立ってみたいなあ、そんな夢をみつつ、お弁当を頬張り、贅沢な頂時間を3人でのんびりゆっくりと過ごしてから、下山の途につきました。夜に自宅に帰りつくまで、とてもたのしい充実の登山でした。
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ごきげんよう、雨竜沼の南暑寒さん。また来ます。
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by haru733 | 2014-09-23 00:29 | | Comments(4)

濃昼山道

ここのところPCの具合がわるく、ネット離れちゅう。アウトプットできないと鬱々とするから、慣れないiPhoneをつかって暫く更新することになりそう。読みぐるしいことお許しください。
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先日出かけた、濃い昼と書く“ごきびる山道”。厚田村から北へ、昔の生活道だった道を整備した片道11キロのコースを、トレッキングしたり走ったり。
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山葡萄を筆頭に秋の植物が目立ちはじめた山は、かすかな紅葉の気配。
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1時間ほど歩いて、送電線のした、下草が茂りだすあたりで来た道をUターンする。
帰りは駆け下って45分。斜面をはしるトレイルランニングの面白さが、ちょっとだけわかる、清々しい疲労感の下りだった。
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海を眺めて、先日の大雨で濁った石狩川ウォッチングをして、帰路につく。
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by haru733 | 2014-09-18 23:09 | | Comments(0)

修道女 (1966年) 煩悩の餌食となった無垢な魂

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 さすがジャック・リヴェットというべきか、すごい作品。
修道院制度に翻弄される無垢な修道女の末路は、悲惨でショッキング。彼女を貶める俗欲の数々がおぞましい。

18世紀フランス。不義の子であるシュザンヌ(アンナ・カリーナ)は、追いやられる形で修道院に入れられてしまう。優しいド・モニ修道院長の支えで立派な尼僧に育った彼女だが、次期院長で冷酷なクリスチーヌらの迫害に合い、修道誓願撤回の訴訟を起こすに至るのだった。
訴訟には敗訴するものの、迫害の事実は公となり修道院を後にするシュザンヌだが、つぎの修道院では、さらなる試練が待ち受けている。院長は同性愛者で、噂の美女シュザンヌを日夜誘惑しはじめるのだったー

一神教と縁のない者には、修道院内部の不道徳な数々の出来事に滑稽さを感じずにいれない。
ただひたすら祈りを捧げても、神は不在で、現実に救われることはない。無神論的嘲笑と、敬虔なものへの憧れ、どちらもおなじくらい持ち合わせながら、シュザンヌが救われることを祈るけれど叶うことなく。

聖女のようにまっすぐ生きてきただけのシュザンヌは、生まれながらに美しく、不本意にも人々を惑わせてしまう。彼女を第二の修道院から救い出した聖職者の男さえ、俗世に出ればすぐ、禁欲を破り我が物にせんと襲いかかってくる。俗欲は彼女のことをそっとしておいてはくれない。
簡素な情景に、ゾッとするほどおぞましい人間心理が描かれてぞわぞわする。
生きるために身を堕とし、気高さから、最後にはとても生きていけずに自ら命を絶ってしまう、主人公の潔い生き様が儚くて憐れで悲しかった。

ふとロベール・ブレッソンの『少女ムシェット』という作品を思い出した。清貧な少女が犠牲者となり無残に死す内容はどこか似ていて、どちらも印象深くて忘れられない佳作。

原作は18世紀のフランス人哲学者、ドニ・ディドロの同名小説。教会制度への嘲笑と同時に、いじめ抜かれる少女の姿には、エロティシズムと趣味の範疇を感じさせる異質さがあるそうだ。

d0235336_1184397.jpgいま映画がおもしろくて原作を手にとり読んでいるマシュー・G・ルイスの『マンク』も、同じく18世紀の暗黒小説で、著者が若干19歳のとき書いたものだけれど、共にセンセーショナルだとはいえ、きっと似て非なるもののような気がする。
映画の出来栄えでは、公開当時上映禁止になったという本編が、断然素晴らしい。いま観てもえぐい。

 (131min)
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by haru733 | 2014-09-11 17:36 | フランス映画 | Comments(0)

中秋

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    ことしの十五夜は 

    いつもより早くやってきた 

    雲に隠れて

    落ち着かない日々を急かす
     

    秋を急かす
    

     
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by haru733 | 2014-09-09 00:38 | 日常 | Comments(0)

上富良野トリックアート美術館

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 秋の気ままなドライブは上富良野町にあるトリックアート美術館へ。立ち寄るのは2度目になります。ふつうのミュージアムとはちがい、作品に触れるのも、写真を撮るのも自由な参加型。

入口の大きな象の絵と、大作以外は記憶にないので、ずいぶん掛け替えられたのでしょうか。しかし、こんなにつまらなかったっけ.....?
ほとんどの作品を、上海出身の画家・陳西瑜(ちんせぇゆ)氏がひとりで手がけています。本物と見紛う写実性にかわらず、見飽きてきてしまうのは、雰囲気がどれも似ているからです。

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ついてきて、しきりに話しかけてくる洋服屋さんのような、ガイド嬢の解説攻撃がつらかった。マイペースに鑑賞しているお客は放っておいて、代わりにパンフを刷って配ってくれたらそれで良いのに。
ラオコーン、最後の晩餐、ピエタと...贋物を観るそこはかとない虚しさをかんじながら館をあとにしました。
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館の裏手には、深山峠の標識が立ち、雄大な十勝岳連峰が広がっていました。あいにくこの日は、雲で半分隠れていたけれど。
案山子コンテストの入賞作品が散策路にずらっと並んでいて、最優勝者のゴローさんが一際輝いていました。ハウルのカカシ君もいいかんじ。

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週末のお土産。帰り道の三笠にて。ざっくりしたアンモナイト。苦味が美味しそうな野草入り岩塩(うど)。
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by haru733 | 2014-09-08 00:03 | | Comments(2)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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やぁやぁ。
OSOに恋をして

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麦ふみクーツェ


掏摸(スリ) (河出文庫)


話を聞かない男、地図が読めない女


図書館の神様


爪と目