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ヨコハマメリー (2005年) ドゥドゥビ ドゥビ ドゥビ ドゥビドゥバー

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 かつて横浜の街角に佇む、ひとりの老婆がいた。その名は”ハマのメリーさん”。白塗りの顔でゴージャスなドレスに身を包み、若い頃は米兵相手のパンパンだった。
1995年の冬、突如姿を消したメリーさんとは何者であったか。過去と、その後の消息を知るわずかな人々が証言した、凄まじい半生とその晩年に出会う、心揺さぶる旅路。思いもよらない切なさに襲われて涙腺が緩んでしかたなかった、珠玉のドキュメンタリー。

人が人目を憚らずに生きていくことはむずかしい。
路上で暮らしていても身繕いを欠かさず、生の施しは受け取らなかったメリーさんは、気味悪がられても排斥されても、気高くあり続けた稀有の人。
いつしか街の景観の一部となっていた彼女の真実の物語を知るのは、今は亡きシャンソン歌手の永登元次郎さんをはじめ、彼女を写した写真家や、かつて賑わったヨコハマに暮らす人たち。

メリーさんの人生を追いながら、戦後の猥雑とした日本の一時代に、男も女も奮闘してきた痕のようなものをみる。ひとりの娼婦の物語であり、日本の戦後史でもあった。中村高寛監督の構成の妙は、無二のものだった。

物語の終わりごろ。映し出される”その後”のメリーさんに、感慨深さがあふれ出る。横浜を離れ、田舎の老人ホームで暮らすメリーさんは、変わらない華奢な体つきで薄化粧。
慰問に訪れた、余命いくばくもない元次郎さんの歌声を、懐かしそうに聴き入る穏やかな表情を見つめていたらとめどなく泣けてきた。
年老いたメリーさんを田舎へ帰すべく尽力した元次郎さんは、撮影中ずっと末期がんを患っていて、彼の魂から湧き出るような名曲「マイ・ウェイ」は、メリーさんの奇妙な人生と合わせて、とてもとても忘れられない。
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(92min)
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by haru733 | 2014-12-31 13:35 | 日本映画 | Comments(0)

聖者たちの食卓 (2011年) みんなで作ってみんなで食べる、古くて新しい食卓の形

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 インド北西部、パンジャーブ州の都市アムリトサル。黄金寺院と呼ばれる”ハリマンディル・サーヒブ”はシク教の総本山であり、毎日10万食のカレーが巡礼者や旅行者のために無料で提供される。
宗教も人種も職業も関係ない、みんなが公平にお腹を満たす、「聖なる場所」の一日を見つめるドキュメンタリー。

ものすごい混沌かつユニティー。大食堂での食事とキッチン裏を一度に疑似体験できてしまう、1時間の小トリップ。
いくつもの大鍋で大量に作られる食事は、猛烈なスケールで完成していく。薪が運ばれ、食材が届き、刻む者、捏ねる者、焼く者、炒める者、配る者、洗う者、無数の分業と信心深さのなせる技。無償の尊い労働力が日に10万食というおそるべきキッチン・システムを成り立たせていく。
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中庭に満ちる人工池の聖なる水はすべてを浄化するように、豊富にふんだんに汲まれ撒かれる。水はまさに生命力。インドの熱気のなかに息づく、人々のパワーが黄金寺院のたった一日の姿にもよくわかる。

来るもの拒まずとはいえ、旅行者らしきひとは意図的にか映ってはおらず、聖地には頭にカラフルなターバンを巻いたシク教徒が多い。本棚の『地球の歩き方』を覗いてみると、信者でなくても天まで昇るような神聖な気持ちになれる場所なので是非訪れたい、とあった。
そういえば、インドの旅のあいだに訪れたヒンドゥー教の寺院は、どこも靴を脱ぎ、灼熱に耐えながら見学したものだった。シク教はさらに厳しく、バッグに靴をしまうことさえ許されない。必ずターバンを巻き、おかわりはいいけど残してはいけない、というのがルール。
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おもしろいのは、食事を待つ人々もお手伝いをすること。家族そろって涙を流しながら玉ねぎを切り、にんにくを剥き、素早い手つきで野菜を刻む。ビニールシートに集められた大量の野菜は、運び人の手によって大鍋に運ばれていき美味しいカレーになる。

しばらくは、仏教的にでも、食べる事に感謝を抱きながら過ごせそう。インドという混沌たる国のパワフルな魅力は、いつかまた旅したいと切実に願わせた。   (65min)
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by haru733 | 2014-11-30 21:44 | ベルギー映画 | Comments(2)

夢と狂気の王国 (2013年) ロマン出る国より

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 いつか、そう遠くない未来、ジブリという会社はなくなってしまうのかもしれない。
実感を伴いはじめた寂しさのなかで、ジブリの裏側をほんのちょっぴり覗き見させてくれる、貴重なドキュメンタリー。
ふたりの奇才、高畑勲と宮崎駿、敏腕プロデューサー鈴木敏夫の50年にも及ぶ、愛憎と確執と信頼の歴史。身を切るような厳しい世界の、緊張感に溢れた制作現場から見える景色は、狂気でもなければ続けてこられないと語る。

時は、昨夏。ちょうど『かぐや姫の物語』と『風立ちぬ』の完成へ向けて、ジブリが大わらわなころ。自然光と緑溢れるスタジオで、ひとつの作品が出来上がっていく過程を見つめる。『風立ちぬ』の声優が庵野秀明氏に決定する瞬間などはそのライブ感が、すごい。

驚くべきは、高畑勲監督の超然とした変人ぶりと、この人こそジブリの頂点だったのではないかと気づかされる驚異の存在感かもしれない。『かぐや姫の物語』が素晴らしかったことを、『風立ちぬ』以上に再認識させられるほど。
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宮崎駿監督の佇まいをみればみるほど、いつも、わたしは同じ時代に生きれたことを幸せにおもいます。多感な時期に出会えて、作品を観続けられたこと。刷り込まれた審美眼や観念に、これからも従属していくじぶんが見えるから。

少し前まで、スタジオ・ジブリに立派な後継者が出てきてほしい、そう祈るような気持ちでいたけれど、これを観たいまではもうちがう。奇才といわれる逸材はそうはいなくて、いまのジブリにはいない。『山賊の娘ローニャ』が倒れんばかりにおもしろくないのも事実。
そんななかで、庵野秀明氏は逸材で、宮崎監督らから全幅の信頼と親愛を受けていたことが印象深かった。これからのジャパニメーションをリードしていくのはジブリじゃない。その一握りの”奇才”と呼ばれる人たちなのでしょう。寂しいけれど。

(監督・脚本 砂田麻美/118min)
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by haru733 | 2014-11-04 14:45 | 日本映画 | Comments(0)

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち) (2007年) 革命戦士たちがいた頃

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 1960年から約10年間に及ぶ学生運動とはいったいなんだったのだろう―。当時を知らない世代にはわかりにくい事件の本質を、雲が晴れるように教えてくれる。
いまを、無気力に暮らす若者たちがいて、かたやイスラム国で戦い死にたいと計画する学生がいて....
肉体に宿る情熱の熱量は、きっといつの時代も変わらないけれど、どこへ向かってなにを放出させるかは、その人次第。学生運動の盛んだった当時の外向きのエネルギーは、だからあまりにも激しくて驚いてしまう。世界全体が変動するうねりのなかで起こったこだと、わかってはじめて腑に落ちるような。
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ベトナム戦争にはじまり、パリの5月革命、中国の文化大革命、そして日米安保反対闘争へと繋がって、日本の学生たちは社会変革を目指し勢いづいた。
そのなかで、1971年に結成された”連合赤軍”は、新左翼党派の内部対立によって組織された”赤軍派”と、文化大革命に同調する組織から分離した”革命左派”が統合してできた集団だった。

理想とする社会にむかって、当然のように運動は激化していく。警戒を強める政府や警察からの弾圧は免れず、武装し逃亡を繰りかえし、追い詰められる立場の厳しさはやがて内部へと向かっていくのだった。
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エリート集団であるがゆえ、ストイックな厳しさが他人に向くとどうなるか、、極寒の山岳地方で、総括を求められる怖さは、いつ見ても震え上がりそう。
個々が立派な一革命戦士になるため、士気を乱す者、自己批判を貫徹できない者は容赦なく処刑されていく、リンチへと至る心理状況やエスカレートしていく暴力がほんとうに恐ろしい。

無名の役者さんを多く起用して、緊迫した状況下の、長回しに耐える演技を積み重ねた本編はすごい。当時の写真や映像を挿入しながら、原田芳雄さんによるナレーションに合わせて、学生たちのギリギリの焦燥ぶりを忠実に描き出す本編は、近年の『突入せよ!「あさま山荘」事件』や『光の雨』とは比較にならない良さを感じた。
ちなみに、リンチの犠牲となる女戦士を演じた、坂井真紀さんの熱演は圧巻。すさまじい女優根性を見た気がする。俳優としての活躍がすきな井浦新(ARATA)氏も、山荘でドン詰まるまでの姿がいい。
映画には、人間の裸体が必要な場面というのが絶対にあって、そこで男優・女優を脱がせることができる監督の貴重さを実感した作品でもあった。ピンク映画出身の若松孝二監督作は、どちらかといえば苦手だったけれど、骨のある本編に出会ってみると、いまさらながら過去の作品を手にとってみたくなった。

(190min)
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by haru733 | 2014-10-13 12:25 | 日本映画 | Comments(0)

大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院 (2005年) 

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 照明も音楽も使わない静謐な世界。俗世から切り離され清貧のうちに生きる修道士たちの生活を、監督自ら6ヶ月間そこに暮らして撮影したドキュメンタリー。
これまで一度も人の目に触れることのなかったグランド・シャルトルーズは、カトリック教会の中でも最も戒律の厳しい歴史ある修道院で、30人ほどの修道士たちが、いまも礼拝や瞑想の日々を送っているという。
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9時間祈って、7時間を学び働き、8時間の休息。アルプスの大自然に囲まれた、彼らのような持たない暮らしはステキだ。瞑想でじぶんと向き合いつづけていると、どんな心持になってくるのだろう。
日曜の昼食後にだけ許される会話に、ユーモアと遊び心があって、散歩や繕いものや食事の風景にはちょっとだけホッとさせられた。
ちなみに、淡々として、あまりに静かで、なんども意識を失いながらの劇場鑑賞でした。
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映画にはでてこないけれど、彼らの暮らしが成り立っているのは、支えてくれる助修道士たちがいるから。
あの大きな修道院を維持するため、肉体労働や物理的な暮らしにかかる手間を負ってくれる人の存在は、欠かせない。ひとは一人だけではそうそう生きていけない―そんな思いを意外にも強くする作品だった。
そう考えると、自然に囲まれた田舎で、自給自足に近い静かな暮らしをしている名もなき一市民の人生だって、なんて立派だろう。
たくさんは持たず、瞑想的に、充分を知り、丁寧な毎日を心がけたくなります。

(169min/フランス=スイス=ドイツ合作)
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by haru733 | 2014-10-07 22:16 | 多国合作映画 | Comments(2)

ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区 (2012年) 4人の巨匠が語る、ポルトガル発祥の地の記憶

 ポルトガル発祥の地といわれる古都ギマランイスをテーマに、ポルトガル縁の4人の巨匠たちが競作したオムニバス。アキ・カウリスマキ、ペドロ・コスタ、ビクトル・エリセ、マノエル・ド・オリヴェイラと聞けば観ないわけにいかない、映画ファンの食指をくすぐる一本。

のはずでしたが。見ごたえあるものは、いつもの飄々たる台詞少ななアキ・カウリスマキ氏の第1話目と、ビクトル・エリセ氏によるドキュメンタリー第3話『割れたガラス』くらいでしょうか。
2012年“欧州文化首都”に指定されたギマランイスを紹介するために企画したというぶん、一本の映画としての満足は極めて低いと言わざるを得ないかも。
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 第1話 『バーテンダー』 アキ・カウリスマキfilm

このスチルだけでも味わいある、バーテンダーのとある一日。しがない独り身のバーテンダー(イルッカ・コイヴラ)。男の店には、今日も安酒を飲む常連客以外、だあれもこない。近所の繁盛店を真似てみたり、花を飾って女を待ったり。しかし、何も起こらない1日は静かに終わりを迎える。
ミニマリズム、ここに極まれり。
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 第2話 『スウィート・エクソシスト』 ペドロ・コスタfilm

本編が一番わかりにくく掴めない。
1974年、独裁政権を打倒するため、植民地カーボヴェルデからやって来た移民労働者のヴェントゥーラが、クーデターの最中に森で意識を失い、そこで見る幻覚を描く。精神病院に収容され、なぜかエレベーターの中にいるヴェントゥーラは、ブロンズのペンキを塗りたくったポルトガル兵士と奇妙な会話劇を繰り広げる…

ポルトガルの歴史を知っていれば、なんらかの感慨はあったのかも。それにしても好きな作風ではなかった。
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 第3話 『割れたガラス』 ビクトル・エリセfilm

2002年に閉鎖された“割れた窓ガラス工場”こと、リオ・ヴィゼラ紡績繊維工場を舞台に、かつてここで働いた名もなき人々の話に耳を傾け、その人生を見つめる。

なにもない、淡々とした独白シーンの積み重ねが味わい深い。それだけで流石とおもっちゃう。自分のことを話す市井の人々の居住まいがいい。


 第4話 『征服者、征服さる』 マノエル・ド・オリヴェイラfilm

ギマランイス歴史地区へやって来た観光客たちは、ポルトガル王を自ら宣言した征服者アフォンソ・エンリケスの銅像を、一斉にシャッターを切って写真に収める。観光客たちに征服者が征服される―という、なんてことないオチ。
機転の利いたポップな作品ながら、おもしろいとは思えず。

どれもまずまずな中で、敬愛するアキ・カウリスマキ作品だけは、常に外れがないのが救い。 (96min)
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by haru733 | 2014-09-30 21:46 | ポルトガル映画

ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂 (2013年) 歴史が刻まれる瞬間

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 映画の3D化を享受できるのは、ゆいいつ宇宙モノだけ。そうおもっていたこの頃に、山岳映画という新ジャンルを再発見してしまった。あの臨場感でエベレストを疑似体験できるなら、こんなにおもしろいことはない。
そう大いに期待して劇場へ足を運んだのでしたが、本編の上映はノーマルタイプではありませんか....IMAXシアターでは『トランスフォーマー ロストエイジ』が上映中。
おなじ3Dでもこんなに違うとは、IMAXシアターの臨場感がいかに特別なのか、つくづく知ることになります。
IMAX用の高価な特別フィルムは数すくなく、ドキュメンタリーの小品でIMAX仕様なんて、冷静に考えてありえないことなのでした。
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1953年5月29日、世界最高峰エベレストの登頂に人類で初めて成功した登山隊の偉業を、当時の記録映像と再現ドラマで振り返った山岳ドキュメンタリー・ドラマ。
頂を勝ち取ったのは、ニュージーランドの登山家エドモンド・ヒラリー氏と、ネパール人のシェルパ、テンジン・ノルゲイ氏。
危険と隣り合わせの過酷を極めた最終アタックはドキドキハラハラとするけれど、多方は眠くって、なんどメガネを外したことでしょう。像がダブっていても問題ないくらい、人と山が立体化するだけの3Dは、3Dである必要性を感じない。山そのものは美しくても、映画用に意図して美を捉えなければ、目を見張るような場面にはならないとおもうのです。本編は、その息を呑むようなシーンがとても少なかった。

とはいえ、60年前のエベレスト制覇への道のりや、まだ簡素な山の装備などがおもしろかった。
重たい酸素ボンベを担いで登っていた時代から、無酸素登山へ。山の歩みに思いを馳せながら、偉人たちの勇気と強靭な肉体にため息が出るおもい。

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登山ブームに勢いを得てか、この秋は山岳映画がつづきます。『アンナプルナ南壁 7,400mの男たち』『K2~初登頂の真実~』、どれもおもしろそう。

それにしても、いつの日か、ものすごいスリリングで臨場感ある山岳ものがIMAXシアターでかからないだろうか。(その前にだれか作って) それは宇宙を体感するのに負けないくらい魅力的に違いない。

 (監督・脚本 リアン・プーリー/91min)
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by haru733 | 2014-08-19 21:18 | ニュージーランド映画 | Comments(0)

マン・オン・ワイヤー (2008年) 美しき自由の伝説

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 アメリカ同時多発テロ事件911で崩壊した、ワールド・トレード・センタービルに、かつて鋼鉄のワイヤーをはって綱渡りした男がいた。名前はフィリップ・プティ、フランスの若き大道芸人。
その、無謀かつ美しく詩的なパフォーマンスへのチャレンジには、多くの仲間たちの支えと周到な計画とがあった。途方もない夢を抱いたプティが、それを実現させるまでの長き道のりを、関係者の証言を挟みつつ、当時の映像と再現ドラマを織り交ぜ明らかにしていく衝撃と感動のドキュメンタリー。

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もうとても現実とはおもえないほどすばらしい、遥か上空の揺るぎないプティの歩み。神々しい彼の表情と仕草のひとつひとつに目を逸らすことができない。
着実に夢の成功へとむかった若者たちの挑戦、友情と反目、栄光とその先にあるもの―。

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己の能力を100%信じる自信に満ちたプティは無敵で、命懸けの挑戦さえ美しい見世物に変わる。
1974年のニューヨークから、時を経て、今なお目撃するすべてのひとの心を掴んで離さない、この夢のようなひと時は、ドキュメンタリー映画の枠を超えて、深い感慨で包みこんでくれる。

あんなに愛しあっていた恋人との別れ。彼を支えた仲間たちとの決別。
綱の上では時空さえ超越したかにおもえるプティでも、夢を叶えた先にあったのは、けして栄光だけではなかった。当然、時は移ろい、人々や時代は変わりゆく。
なによりも、いまや老い、あの頃の自信と技術と夢は過ぎ去り、相応に肉体の変化したプティ氏の歩みを見つめていると、おおきな切なさに見舞われるのはどうしたことだろう。余韻はそこはかとなく。

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(監督 ジェームズ・マーシュ/95min)
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by haru733 | 2014-06-17 01:21 | イギリス映画 | Comments(0)

ファルージャ イラク戦争 日本人人質事件…そして (2013年) 自己責任の猛火を浴びて

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 イラク日本人人質事件は、2004年、自衛隊のイラク派遣から一年経たずに起こった。マスコミ報道をきっかけに”自己責任”を問われて、3人へ対する批判がエスカレートしていった過程は、もう誰もが知るところとなっている。もし自分なら同じように非難を受けて、こころ病まずにいれただろうか...

あれから時を経て、それぞれの場所で支援活動を続けている高遠さん、今井さんの堂々とした言動には、揺るぎがない。きっと凡人とは違う彼らのような人だから、なかなか理解されることなく誤解され、非難を受けてしまうのでしょう。
たしかに、解放された直後、謝罪しなかったことなど過ちはあったとしても、あれほどの恐怖と誹謗のなかを耐えて生き延び、いまなお人を助ける活動を続けている信念の深さなどは、評価されて然りとおもいます。
この度、人質事件とその後にカメラを向けたのは、当時、今井さんとおなじく18歳だった、制作会社ADの伊藤めぐみ監督。
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せんじつ、イラク戦争の自衛隊派遣に関する映像資料が、テレビで初公開されているのをみました。
いかに危険伴う任務だったか、いまさらに驚きながら、帰国後の隊員の自殺者数にはもっと驚きました。
イラクに関わって強い恐怖とストレスを体験した自衛隊とは、まったく違う立場でイラク入りした3人だけれど、おなじように精神を追い詰められて死の淵を長く彷徨ったことは、切り離して考えることができません。

2003年。自衛隊のイラク派遣が世間を騒がせていた頃、関係者の知人が誇らしげにしていたことを憶えています。当時からわたしは反対派で、いまも憲法改正などはしてはいけないとおもっています。どんな形であっても日本は武力を行使しないでほしい、守り通さなければならないものが何か、答えは簡単。
そのうえで、高遠さんが調査し続けている、劣化ウラン弾によって奇形児で生まれてきた子どもたちへの支援は、日本政府にだってできるのではないでしょうか。
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3人を拘束した武装勢力の出した声明文が、言い分としても正当であったことが印象的。自衛隊は撤退させないという日本側の返答を聞いて、「国民の命を軽んじる国家に我が国を救えるとはおもえない―」 そう返事したイラク側の言葉が、より人道的に聞こえてくるのはなぜだろう。

 (95min)
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by haru733 | 2014-04-19 17:29 | 日本映画 | Comments(0)

精神 (2008年) 魂にメスはいらない

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 ニューヨーク在住の新鋭、想田和弘監督によるドキュメンタリー。自ら“観察映画シリーズ”と名付け、『選挙』『精神』『演劇』などに密着してきた監督は、世界各国で数々の賞を受賞しています。この夏、『選挙2』が公開ちゅう。
岡山県にある、山本昌知医師が代表を務める精神科診療所 “こらーる岡山”。ここへ様々な理由でやって来る患者たちの悲喜こもごもの人間模様を、ありのままかつ真摯に見つめる。
心の病を患う当事者、医者、スタッフ、作業所、ホームヘルパー、ボランティアなど、多岐にわたる視点から、一般にタブー視されがちな精神病の実情と、それに携わる人々の地道な活動の努力を浮かび上がらせる。
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いっとき、河合隼雄さんの本ばかり読んでいたほどには興味ある“精神”について。河合さんをすごい方だとずいぶんおもっていたけれど、この山本医師もまたすごい方でした。支えるスタッフたちの動きもまた。
様々な症状の患者たちがカメラを前にして語る言葉に、じっと耳を傾けたい。カウンセリングのようにただ聞いていくと、そのうち、目には見えない叫喚に粟立ちをかんじるかもしれません。

凍傷に罹ったひとが手足の先を捨ててじぶんの命を守るように、精神はなにを捨てて命を守っているのか。
日本のウツや統合失調症の罹患者数をおもうと、人ごとではありません。
通いはじめて40年なんて強者患者さんの登場に、魂にメスはいらない―といった河合隼雄さんの偉大な言葉を思い出しました。どれだけのひとが山本医師のおかげで命を食い止められきたか、食い止めているか。

 (135min/日本=アメリカ)
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by haru733 | 2013-07-18 00:00 | 日本映画 | Comments(2)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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