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天才スピヴェット (2014年) 泣き方だけがわからない

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 敬愛するジャン=ピエール・ジュネ監督最新作。キッチュで手作り感たっぷりなジュネ・ワールドに陶酔あるのみ。そろそろダークサイドが恋しくなるけれど、文句なしに楽しかった。シアターキノでは2Dにて上映ちゅう。

アメリカ北西部のモンタナ。牧場を営む父(カラム・キース・レニー)、昆虫博士の母(ヘレナ・ボナム=カーター)、アイドルを夢見る姉(ニーアム・ウィルソン)に囲まれ暮らすスピヴェット(カイル・キャトレット)は、10歳にして天才科学者だ。双子の弟が死んで以来、家族それぞれの心にはぽっかり穴があいていた。
ある日、スミソニアン学術協会から、最も優れた発明に贈られる賞を獲得したスピヴェットは、ひとりワシントンDCで開かれる授賞式に向かうため家出を決意する。大陸横断の冒険の中で、スピヴェットは様々な人と出会いながら本当に大切なものに気付いていく―。

喪失感を扱いつつも、劇場に笑いがこぼれるユーモアいっぱいのロード・ムービ。ジュネ作品に、広大な北アメリカ大陸の景観が、こんなにもよく似合うとは。
往年のジュネ・ファミリー、ドミニク・ピノンの登場に頬を緩めつつ、昆虫標本に囲まれたヘレナ・ボナム=カーターの部屋など垂涎もので、色使い、言葉遣い、モンタージュの画面、どこを切り取ってもワクワクするアイテムに満ち満ちた世界。
古いヘレナ・ファンとしては、ふつうの顔色でこんなに愛ある立派なお母さんを演じているとうれしくてたまらない。

両親の愛を確信できず、弟の死を自分のせいと思い込んでいる、スピヴェット少年の流す涙はあまりに純粋。ついつい貰い泣いたり。
新人のカイル・キャトレット少年の品のある愛らしさは、確実に、『ホーム・アローン』で絶頂期のマコーレー・カルキン少年を越えていた。 

 (フランス=カナダ合作/105min)
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by haru733 | 2015-01-18 17:10 | フランス映画 | Comments(0)

楽隊のうさぎ (2013年) 浜松市発、吹奏楽部青春物語 

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 市民で作る映画として、公開当時、行きつけのミニシアターでも丁寧に紹介されていた本編は、数々の映画人を輩出してきた浜松市で、”音楽のまち再認識”を目的に生まれたプロジェクト。監督は静岡県出身の鈴木卓爾氏、子役はみんなオーディションで選ばれた地元の子たち。
中沢けいさんによる原作『楽隊のうさぎ』は未読。きっと、これからも未読。

(あらすじ) 学校にいる時間をなるべく短くしたい、引っ込み思案の中学生・克久は、入学後、幻想のうさぎに導かれるように、ブラスバンド部に入部する。先輩や友人、教師に囲まれ、全国大会を目指す克久だが―。多感な時期に、戸惑いながらも音楽に夢中になるブラスバンド少年の成長していく姿を描く。
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吹奏楽に興味があってもなくても、この間をどう切り抜けたら良いのか...ちょっと苦しい作品。
合宿などしながら和気藹々撮りあげた作品は、実際、がんばる全国の吹奏楽部の子どもたちに、どう映るのだろう。そんなに甘くないさ!という悪態が聞こえてきそうな気もする。
この手の作品は酷評しにくいけれど、正直、良いところをなかなか見つけることができなかった。
子どもたちの聞きとりにくい台詞はともかく、プロの役者さんが揃っていても、真剣さが伝わってこない。宮崎将氏演じる、顧問の頼りなさなど、ここに書かずにいられないくらい、、倒れそうになった。
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札幌市の西区琴似を舞台にした『茜色クリネット』は、おなじく市民参加型の映画で、監督は地元の高校生が務めた作品。中二病ならぬ、大人になりたくない”大人病”が広がった琴似で繰り広げられるファンタジーは、たしかに終始くすぐったかったけれど、映画から漂う真剣さは勝っていたようにおもう。それは、スタッフもすべて学生たちで作り上げた心意気の違いというか、紛れもなく真剣勝負だった気概が滲んでいたためかもしれない。映画のおもしろさは技術だけでは作られないのだ。
ディテールを気にならなくさせる効果がファンタジーにあるためか、どちらも青春ファンタジーというのがおもしろい。
ちなみに”うさぎ”を演じていたのは、『花子とアン』で宇田川満代役を演じた山田真歩さんだった。演劇ちっくな動きで何気に非現実的なのが似合っていた。
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by haru733 | 2014-10-15 12:55 | 日本映画 | Comments(0)

モールス (2010年) 初恋が来たす道

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 凍てつく鉛色の情景に描かれた、スウェーデン映画の『ぼくのエリ 200歳の少女』は、ピュアな初恋が恐ろしくも切なくて忘れられない。
世界的にヒットしたダークファンタジーをハリウッドでリメイクした本編は、CGの多用で興を削ぎ、前作を超えることはなかった。12歳の少年が下す旅立ちの決断に、おなじような切ない余韻はあるものの、静謐さの失われたホラーでは見所を失ってしまう。
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先日、劇場で観た『思い出のマーニー』もそうだった。仕草や表情で読みとる作業の余地がないのが、さみしい。
解釈できるギリギリまでしか描かないスウェーデン版から、想像の余地を与えないほどわかりやすくなったリメイク版は、味気ない作品に生まれ変わってしまったと言わざるをえなくて。
モノローグで語らせない、想像と解釈の自由が、映画を楽しくすると信じています。

ちなみに、中性的であってほしい吸血鬼の少女アビーに、クロエ・グレース・モレッツちゃんは、ちょっと儚さと陰が足りないかも。まったくおなじ理由でリメイク版『キャリー』への食指が動かないのも、またさみしい。
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by haru733 | 2014-09-02 20:02 | アメリカ映画 | Comments(0)

闇のあとの光 (2012年) 魔術的リアリズムに溺れる、鮮烈の映像美

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 メキシコ発、奇妙なアートフィルム。よくわからないけれど、こういうの好き。
メキシコの田舎町に暮らす四人家族の物語は、冒頭から不気味な赤いCGの動物が現れて、不穏な展開を呈していった。

プロローグの長回ですでに惹きつけるなにかがあるのです。刻一刻と表情を変えていく夕暮れのなか、カメラは牧場を駆け回る一家の幼い娘の目線で景色を捉えていきます。とても愛くるしい少女なのに、胸がざわざわしてきて、遠くの空で轟く雷鳴が、静かな興奮状態を作り上げる。この空の色の美しさひとつとっても、アーティスティックで蠱惑的。

いつかの『ユフス三部作』を思い出す、自然の音に、瑞々しい描写の数々。ほぼ全編、ビジュアル・エフェクトの効いた不思議な気分になる映像が美しく、水を意識して生命力に溢れています。
なぜか意味もわからず挿入される、ラグビー・シーンや、乱交部屋や、日常を綻びさす赤い動物の謎。戸惑うけれど、アートフィルムというだけで、ヘンテコを楽しめてしまうのでした。

ちょっぴりウトウトしかけたころ、つと目を開けば、なぜか夫婦は乱交部屋にいる。かなりびっくりして、以降ふたたび眠くなることはなかった。ド肝を抜かれるクライマックスまで、美しくも悪夢的な世界観に身を委ねるのみ。

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余談ですが。映画館へ行く朝、ミニシアター2館のプログラムを見比べながら、一等見たいとおもったのは、この『闇のあとの光』でした。それは、かってに全幅の信頼をおく蠍座館主さんの解説に惹かれたのでもあります。
そして鑑賞後、ヘンテコなもの見たーと心ざわざわ帰路につく道すがら。最新のプログラムに目を通していたら、もう一度この作品について書かれた箇所を見つけたのです。

いまアートシネマは危機的状況にあります。人びとはわかりやすい映画しか見たがらなくなり、劇場も恐れをなして番組に入れようとしなくなっています。そのうち日本国内でアートシネマは輸入すらされなくなるでしょう。大げさでなくそれくらい商売として成りたちがたくなちました。 (一部省略)
『闇のあとの光』はへんな映画ではありますが、決してつまらなくはない。一度見たら忘れられない鮮烈なシーンをいくつも持っています。好きな映画だけをかける、お客の動員を第一に考える、とは少しばかり異なる動機で蠍座は映画を選んでいるとわかっていただければいいのですが。
 (Vol.217 蠍座通信より)

月曜日、14:50分の回に、観客はなかなか多く、アートシネマを好んで見たい、需要がまだあることの証明のようでうれしかった。きっとそう簡単には無くならないぞと。こういう作品を選びかけてくれる館主さんがいて、考えながら見る映画がすきな観客がいるかぎり。
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(115min/メキシコ=フランス=ドイツ=オランダ合作)
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by haru733 | 2014-07-17 01:36 | メキシコ映画 | Comments(0)

ムード・インディゴ うたかたの日々 (2013年) 人生は泡のようにやがて消えてしまうから

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 『ガッジョ・ディーロ』を見て以来、ロマン・デュリス氏の悪戯っぽい笑顔が忘れられない。敬愛するミシェル・ゴンドリー作品に、その最強の武器はよく映えて、とても切ない幸福な一本だった。

先日観た『グランド・ブダペスト・ホテル』のウェス・アンダーソン監督とゴンドリー作品は似ている。手作り感にあふれて、キッチュでダークでユーモラス、やりたい放題楽しく映画を作ってるところがおんなじ。
なのに、ゴンドリー氏のものほどアンダーソン作品を夢中で観れないのは、きっと私が、アメリカよりフランスの感性を好むからなのかもしれない。底抜けに陽気なその先に、いつも切ない暗部がちゃんとある。

資産家コランは、ある日、無垢な魂を持つ美女クロエと出会い、一目で恋に落ちる。2人はやがて愛を育み幸せに結婚するが、ある時突然、クロエが肺に睡蓮の花が咲く奇病に冒されてしまう。コランは彼女を救うべく奔走するが、財産は底をついてしまい....人生で初めて働き始めるのだが―
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前半部の色とりどりな輝かしい幸福に包まれた日々から、やがて雲行き怪しく不幸に苛まれていくふたりの恋物語。カラーからモノトーンへ、富から貧へ。オドレイ・トトゥとロマン・デュリスの笑顔が失われていくのを見ているだけで、ありがちなファンタジック・ラブストーリーじゃ終われないことを思い出す。
『エターナル・サンシャイン』も『恋愛睡眠のすすめ』もそう。ゴンドリー氏の紡ぐラブストーリーはたいてい、ハッピーでいびつで、いつもどこか切なくて、寂しい。

肺に睡蓮の花が咲く奇病―そう聞くと、最近の『シャニダールの花』を思い出すけれど、描写の違いは歴然で、邦画の薄ペラさを見せつけられるかんじがします。
肺を病むことは結核のごとく、田舎での療養はふたりを離れ離れにしてしまう。高額な治療費は確実に資産を減らして、やがて何もかもがくすんで崩れて、豪華な家は色を失い、使用人も友達も離れていってしまう....。
人生で初めて労働するコランに、信じる奇跡は訪れなくて、待ち受けるのは、なにを持ってしても変えらえない運命の人との別離だけ。
幸福だった過去へと逆回転していくラストシーンに、切ない余韻がこみ上げる。
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懐かしくも素敵な選曲で踊る奇妙なダンスは、その名も”ピグルモア”。作り物の脚がヘンテコ。
通いの医者役を演じているのは監督自身で、これがまた味のある演技で見所なのです。131分あるのは、本国フランスでのディレクターズカット版、今回観たのは海外向けに編集されたインターナショナル版、95分の方でした。ここまで遊んでいれば、95分がベストタイムだとおもう。酷評も多いけれど、ファンとしてはディレクターズカット版を観たものであってほしいです。
ハリウッドで撮った前々作『グリーン・ホーネット』がちっとも面白くなかったので、ゴンドリー節が健在でうれしかった。

(原作 ボリス・ヴィアン 『うたかたの日々』『日々の泡』/95min)
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by haru733 | 2014-07-05 13:01 | フランス映画 | Comments(0)

おおかみこどもの雨と雪 (2012年) 強く、生きるということ

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 ほのぼしたファミリー向け動物映画は苦手ジャンルで、じつは今までひとつも見たことがない。敬愛する細田作品なのに、なかなか観る気持ちがおきずにいたのはそのせいだけれど、本編はなんて良い映画だったろう。ファミリー向け動物映画のくくりでは、一切なかった。
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あらすじは割愛して。細田守監督はやはりすごいと確信します。宮崎アニメにあった真髄を、また別の角度から追随していく、ポスト宮崎駿的存在になっていくのではないでしょうか。
生命力溢れた自然描写、生き生きした主人公たち、躍動感ある画面のなかに、”暮らすこと”が描かれる。生きることをわかりやすくすると、日々の暮らしを忠実に描くことになって、それは立派で真摯で、子どもだけじゃなく大人の心にも深く響く。
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なによりも、花の強さがすごい。大学生の花が、“おおかみおとこ”と恋に落ちて、人知れず苦労を重ねながら気丈に懸命に生活を営んでいくその姿。隠れるようにして暮らす恋は、一昔前の駆け落ちに似て、どことなしか古風な懐かしさに包まれている。それは、最愛の夫“おおかみ”を突然亡くしてから、山あいの村へ移り住むことで更に深まっていく。
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女手ひとつで育てた、おおかみこどもの“雪”と“雨”が、成長と共に苦悩していく後半部もすばらしい。人間か、狼か、どちらとして生きるかを選ぶとき、そこには家族との別れが避けようもなく横たわっているという....身を切るような切なさに涙が出た。

この宮崎アニメに共通した感動はどこからくるのだろう。魅力的なアニメーションの動きか、アニミズムの精神か、はたまた自然とともに生きる風景か。宮崎監督はエコロジストと呼ばれるのを好まないけれど、人間と自然が調和した世界観に、できるだけ長くわたしを留めておきたい。そう強く思わせる意識の高さに、いつまでも惹かれる。

 (117min)
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by haru733 | 2014-05-05 00:00 | 日本映画 | Comments(0)

シャニダールの花 (2012年) 胸に咲く花が二人の人生を狂わせる

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  一握りの女性の胸にだけ咲く美しい花“シャニダール”。画期的な新薬開発に繋がるとされる謎の花は、一方で情緒を狂わせる危険を孕んでいた。植物学者の大瀧(綾野剛)は、彼女たちを管理する研究所で働いており、あるとき新任のセラピスト・響子(黒木華)がやってきて、ふたりは惹かれあうようになるのだが、花の魅力に取り憑かれた響子の胸にシャニダールの芽が芽吹いたとき....二人の運命は大きく狂い始めるのだった―。

 白を基調とした潔癖な研究所の閉塞感。そこに謎の花は目を見張るほど美しく、ときにグロテスクで残酷だ。かならず危険な花じゃなく、感受性の強い一部の女性にだけ、強く作用する。取り巻く人々の運命を狂わせる花の真実と、運命に立ち向かう登場人物たちの気丈な姿を描いた視覚的ファンタジー。

前作『生きてるものはいないのか』で感じた、奥行のなさとテーマの混沌はおなじ。さらにそこに哲学が感じられなければ、ただ見ただけで、ただ終わってしまう。ビジュアルはよくてもちょっと物足りない作品だった。無意識に深層に働きかけてくる作品は、たいてい余韻としてちゃんとなにかが残る。
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初初しい登場場面から、”シャニダール”に寄生されたあと摘出せずひとりで生きていこうと決意する凛とした姿まで、響子役の黒木華さんはすごく艶っぽい。カメラは赤く染まる色白の頬を何度も映し出す。
一方、共感を呼ぶ彼女に対して、綾野剛氏がいまいち物足りないのは、沸点低い演技が輪をかけて空々しく映るからだろうか。そもそもふたりが求め合うワケさえ見えないのだから、愛する人を失う苦悩もやはり空々しい。

監督は『狂い咲きサンダーロード』の石井岳龍。何度も改名するひとは根拠のない不信感を抱かせるもので、石井作品は惹かれることなくほぼ未見。たぶん、これからも。
ちなみに、とある信頼おける映画評論家が、石井作品を評してへんてこ、ユニーク、でたらめ、熱気、破綻―といったが、10年経ったいまも、さほど印象は変わっていない。

 (105min)
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by haru733 | 2014-04-07 22:29 | 日本映画 | Comments(0)

札幌市琴似発、夢映画制作プロジェクト 『茜色クラリネット』

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 札幌で6年間続く中学生の映画制作ワークショップによる集大成、『茜色クラリネット』が劇場で公開されています。プロデューサーには、「くすみ書房」の久住邦晴さん、シアターキノの中島洋さんらが名を連ね、配給担当のシアターキノにて上映中。映画を愛する学生たちが集まって本格的な映画製作に携われるとは、なんて幸せな経験でしょう。それを地域や企業がバックアップするという、素晴らしい企画なのです。
今後、道外でも夏公開が予定されています。

(イントロダクション) 札幌市西区琴似。中学3年生の茜はある日、親友・夏輝の家の古本屋で<夢の中に入れる>不思議な本を見つけた。夢に入ったふたりは、誰もいないコトニの街に、助けを呼ぶ声を聞く。それは3年前、事故にあって寝たきりの同級生・藍ちゃんの声だった。コトニで今、夢を吸い取られ子どもの姿のまま大人になってしまう「大人病」が広がりつつあることを知った2人は、新聞部の大西と協力して原因を調べるうち、ゆるキャラ「トニ子」が関わっているらしいことに気づく。ぶじ藍ちゃんを助けることができるのか?トニ子の正体とは―?大人へと成長する茜たちの葛藤と戦いが始まる―。
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大人でも子どもでもない、10代の“いま”だからこそ描ける「信じるチカラ」「夢見るチカラ」を、高校1年生の坂本監督率いる中高生たちが悩み、苦しみ、楽しみながら作り上げた等身大の成長物語。

もう、ほんとに、このとおり。市民公募した脚本を元に、監督もキャストもスタッフも、みんな学生たちで務めあげた、大人には作ることができない、ひたむきで真っ直ぐな作品になっていました。
もちろん、くすぐったい場面はあるのだけれど、少し眠たくなったけれど、アマチュア作品であることをふと忘れさせてしまう落ち着きある画面があるのは、すごいことです。キャストのみんなもプロの俳優陣と肩を並べて堂々とした共演がとても立派。
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琴似に明るい方なら、どの場面もローカルな楽しさで溢れているとおもうし、市民に愛される三角山がさりげなく背景を彩っていることが、山好きにはうれしいのでした。

 (2014年/日本/DCP/カラー/81分)
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by haru733 | 2014-04-01 21:16 | 日本映画 | Comments(0)

クラウド アトラス (2012年) メビウスの帯、クラインの壺

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 これはー興奮至極。だいすきなトム・ティクヴァ監督が、『マトリックス』のウォシャウスキー姉弟とともに撮りあげた一大叙事詩。
大航海時代から、2321年の文明の崩壊した未来まで、6つの時代、6つの国々に生きる人々の、時空を超えて繋がりあった数奇な運命を複雑に交錯させて描く。
1849年、2144年、2321年の物語をウォシャウスキー姉弟が、1936年、1973年、2012年の物語をティクヴァ監督が担当しています。
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彗星型の痣がある、それぞれの時代に生きる主人公たちの配役には、トム・ハンクス、ペ・ドゥナ、ジム・ブロードベント、ハル・ベリー、ベン・ウィショー、ジム・スタージェス。お気に入り監督の作品には、往々にしてお気に入り俳優が起用されてうれしい。
ハル・ベリーもベン・ウィショーもジム・スタージェスも、ほかのみなさんも、いままで観たことのない表情や、怪演・好演の連鎖がすばらしかった。人種や性別を越えて、多い人で6つもの役柄を演じ分けた役者陣の意気込みと変容ぶりが見もの。いつもは濃いぃトム・ハンクスも、6分の1の主演では絶妙な存在感だし、ネオ・ソウルのクローン人間を演じたペ・ドゥナは、もう言葉もいらないくらい良いです。
21世紀になっても映画は良い方に進化を遂げられる―そんな鳥肌の立つ幸せな映画との出会いは、映画ファンにとって年間とおしても数本あるかないかだとおもうけれど、本編はまさしくそんな数少ないなかの一本でした。
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雲のように、この地球全体を覆っているもの。連綿と続く因果と応報、良心と邪心、過ち、革命と反乱、救済となるもの―。かくじつに東洋思想に染められた、めくるめく世界観に見惚れる。
一度では理解できないほど複雑に絡まりあった編集はこなれていて、どのシーンもこだわりに満ちた充実の長編でした。
 (172min)
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by haru733 | 2013-11-04 15:42 | アメリカ映画 | Comments(4)

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 (2012年) やがて驚愕の冒険譚

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 ヤン・マーテルの世界的ベストセラー小説を3Dで実写映画化した衝撃と感動のサバイバル・アドベンチャー・ドラマ。大海原で嵐に巻き込まれ遭難し、小さな救命ボートに獰猛なトラと乗り合わせることになった一人の青年パイが、その後いかにして生き延びることが出来たのか―その想像を絶する漂流生活の行方を、美しくも幻想的な映像で描き出していく。

これほど予告とのギャップがおおきい作品というのは珍しい。サバイバル映画とおもって見ると度肝を抜かれてしまうかもしれません。序盤からの冒険譚が、いつのまにか宗教観や倫理観さえ揺るがすような深遠なテーマに変わっていく驚き。
そのはず、監督は『ブロークバック・マウンテン』『ラスト、コーション』などで内面を抉る作品を撮ってきた、台湾のアン・リー、凡庸なサバイバル・ムービーをつくるはずはなく。
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海の上の見事なCG画像は、まるでクリスチャン・ラッセン、ほんとうにうつくしい。船の沈没からたったひとり生き残ったパイの物語を語るのは、大人になったパイ本人。
回想形式で綴る、過酷を極めたサバイバルと目映いファンタジーのその影で、思いもよらない真実が脈々と語られ、トラの正体がなんだったかに気づくとき......そのメタファーとパイの涙に、素直に感服してしまうばかり。

おもしろいのは、ヒンドゥーの国インドに生まれたパイが、キリスト教もイスラム教も信仰していく少年時代。
見方によっては、退屈で冗長かもしれないこのオープニングが、のちに、生死を彷徨う漂流で、彼の信仰心にどんな変化が訪れたかを目の当たりにしては、抜き差しならなくなってくる。そして、沈没したのは日本の貨物船で、日本人の乗組員が、仏教徒もしくは無神論者のシンボルとして登場しているのがちょっと可笑しい。

ラストの肉食の島はなにを意味していたのだろう.....
原作あっての物語だとしても、映像美と、スリルと、深遠なテーマを2時間に凝縮している本編はすごい。

(127min)
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by haru733 | 2013-10-29 22:35 | アメリカ映画 | Comments(0)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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