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わたしはロランス (2012年) 愛がすべてを変えてくれたらいいのに 

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 はじめてのグザヴィエ・ドラン監督作は、ものすごくおもしろいものだった。
たとえば、ジョン・キャメロン・ミッチェル氏やペドロ・アルモドバル氏の作品をはじめて観たときと似てる。
カラフルで、ちょっと奇妙で可笑しくて、感性豊かで、ゲイであることを告白した監督にしか描けない世界。
倒錯した性のあり方は歪だけれど、他にはない、人生を生きる深い切なさで満ちている。

カナダ・モントリオール。国語教師をしながら小説を書いているロランス(メルヴィル・プポー)は、30歳の誕生日を迎え、交際相手のフレッド(スザンヌ・クレマン)にある告白をする。それは、かねてから女性になりたいと思っていたということだった。
ショックを受けたフレッドは、一度は非難しながらも、かけがえのない存在であるロランスを失うのを恐れて、良き理解者となることを決意する。やがて、偏見から職場を解雇されたロランスに、追い討ちをかけるように、フレッドの浮気が告げられるのだが―。

フレッドの不満や不安や孤独をおもえば、他の男と全うな道を探る気持ちはよくわかる。もう若いとはいえない歳頃の感覚が、当時23歳のドラン監督には手に取るようにわかって、描けてしまうらしい。
同時に、カミングアウトしたあと、偏見ひどい田舎町を離れ、外国で作家として成功していくロランスは、ゲイとなった人特有の生きる強さを纏っていく。
ゲイの方たちがとことん傷つき悩んだ末、身につけるらしい堂々たる生き様を、わたしはすごいとおもっていて、人生を達観できる能力は、ただの男よりもただの女よりも、ずっと優れていると感じずにいれない。うらやましいほど。
もともとイケメンであったメルヴィル・プポー氏が、皺の目立ちはじめた顔に化粧して、女装姿で凛としているだけで不思議と胸を震わせる。そして、フレッド役のスザンヌ・クレマンの存在感がまたすごいのだ。

鮮やかな色使いで、どのカットもとても美しい。何度もアップで映し出される、感情丸出しのふたりがあまりに魅力的だ。目に焼きつく絵になる場面を切り取って、繋げて、時間軸を遊んだテンポのよい作品は、さいごまで引き込まれたままだった。

恋人で、家族で、親友だった、ロランスとフレッド。ふたりは、ロランスの告白を境に、偏見と好奇の目に晒され、求めるものが違っては離れ離れになる。それでも、別れたあとも想い続けて、再会を果たすとき。
もう互いの元へ戻ることはないと知れる、微かな心のズレが切なさを醸し出した。
そうしてドラン監督は、ふたりが出会った瞬間へ、一気に引き戻す....憎らしいラストカットだった。

 (168min/カナダ=フランス合作)
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by haru733 | 2015-03-06 12:41 | カナダ映画 | Comments(0)

百円の恋 (2014年) 一子、32歳、独身、ひきこもり。いざ人生のリターンマッチへ

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 これおもしろい。期待した以上。安藤サクラちゃんがすごい!

 自宅にひきこもり、自堕落な生活を送ってきた一子(安藤サクラ)は、離婚した妹が出戻って以来、イライラ募る毎日だ。ある日、取っ組み合いの喧嘩の果てに家を出る決心をした一子は、百円ショップの深夜アルバイトをはじめる。
クセだらけのバイトメンバーにうんざりな一子の、唯一の楽しみは、帰りに通りかかるボクシングジムで、ストイックに練習に励むボクサー・狩野(新井浩文)の姿を覗き見ることだった。
ある日、そのボクサーがお店にやってきて、ふたりは急速に距離を縮めていくのだが―。

実家の弁当屋に寄生する、救いようのなかった三十路の一子が、2時間でモーレツに変わっていくそのパワーにノックアウト。
恋というよりセイアイ的であった狩野との関係が終わって、スイッチがはいったようにボクシングにのめりこんでいく一子がカッコ良かった。これまでしょうがない人生だったぶんだけ、本気出した凛々しい一子は、意思も心も体も強い。こんなステキな安藤サクラちゃんをみるのは初めて。そして、こんな力の抜けてカッコイイ新井浩文氏を見たのもはじめて。映画とはおもえないお似合いなふたりが、言葉少なに無様な生き様を晒し、互いの人生に向き合っていく姿が、なぜか泣ける。

バイト先に集う面々の個性は豊かで、そのほとんどがダメ人ばかり。同僚も、店長も、客も、廃棄弁当をたかる元店員も、底辺で蠢くような彼らは、きっとそのまま変わらない。
スタートは一緒でも、みるみる変貌していった一子は変われた。なにもかも自分次第、意思ひとつなんだと力の湧く物語だ。

無謀な初試合に挑んだ一子の、リング上での壮絶な殴りあいがあまりにもリアルだった。プロと思しき相手を前に、何度倒れても立ち上がるサクラちゃんは本気の形相。痛々しくて観てられないけど、会場に駆けつけた家族や狩野のように、必死に彼女の事を応援して、見届けてあげたくなる。気がつけばヒロイン”一子”の全力のリターンマッチに、涙が出てでてしかたがなかった。

いろんな痛みを経て成長した一子を、そっと出迎える狩野のさりげない優しさ。ふたりが、その後どうなるのかなんてどうだっていい。胸をジーンとさせながらこころからエールを送ったラストだった。

巨匠C・イーストウッドによるアカデミー賞受賞作、『ミリオンダラー・ベイビー』を否応なく思い出す。
当時のヒラリー・スワンクはもう本当に凄まじくすばらしく、作品としても超一級品だったけれど、邦画の小品に滲んだ安藤サクラちゃんの気迫も、それに負けてなかったと、確信持っていえる。

 (113min)
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by haru733 | 2015-02-05 00:00 | 日本映画 | Comments(0)

東ベルリンから来た女 (2012年) 東と西、自由と使命と愛の狭間

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 緊張感に溢れたムダのない小品。これ、すごくおもしろかった。
 ベルリンの壁崩壊の9年前。東ドイツの小さな町の病院に、ベルリンから女医バルバラ(ニーナ・ホス)が赴任してくる。秘密警察に目をつけられ、左遷されたバルバラは、常に監視され孤立しながらも気丈に振舞う。同僚の医師アンドレ(ロナルト・ツェアフェルト)は、バルバラの確かな腕と、美しくも陰のあるところにすぐに惹かれていき、そんな彼女もまた、心優しきアンドレの人柄にほだされていくのだが。西に恋人のいる彼女には、国外脱出する運命の日が刻々と迫っているのだった―。

なにが起こるかわからない、ギリギリのバルバラを見守る事しかできない。医師として立派な彼女の生き様に打たれながら、アンドレがするように、西への逃亡計画が辿る道を、ただ黙って静観するだけ。すべてを決めるのは彼女だ。
そんな鉄の女を揺るがせたのは、患者として出会った少女ステラと、実直なアンドレと、医師としての使命だった。矯正収容施設から逃亡してきたステラは、バルバラに命を救われてから母のように彼女を慕い、救いを求める。医療ミスを犯し自らも左遷されてきたアンドレは、気取らない温厚さで、緊張で張り詰めた彼女の心を解かしていく。

情熱的な愛と、献身的な愛。西の恋人と、東の同僚。どちらを選べば幸福な未来があるだろう。
ただただわたしは、あまりにも誠実な同僚アンドレの人柄に、できれば寄り添ってほしいと、切に願ってしまった。
出奔の日、虚をつく出来事のあと。彼女の選んだ道は、胸をふるわす結末へと続いていた。

(監督・脚本 クリスティアン・ペッツォルト/105min)
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by haru733 | 2015-02-01 13:57 | ドイツ映画 | Comments(0)

メビウス (2013年) 断ち切れないもの

評価の大きく分かれるキム・ギドク監督最新作。
おぞましさもある意味極限まできた、全編台詞なしで描かれる、とある家族の狂気と欲望の物語。

夫の浮気を知り嫉妬に狂った妻が、夫の性器を切断しようとして失敗し、代わりに思春期の息子の性器を切りとって、そのまま家を飛び出してしまう。深い罪悪感を抱いた父は、外科手術で自らも性器を切断し、自尊心を失った息子のため、性行為の代わりにオーガズムを得る方法を必死にネットで探すうち、とある自傷行為へと辿りつくのだった。父と息子の間は再び絆で結ばれるのだが。そんな折に妻が戻り、家族はさらなる破滅へと向かっていく―。

煩悩、業、連綿と続く人間の性。それらを壮絶なビジュアルで自虐的に描ききるのがギドク氏の流儀。
父の浮気相手に近づいていく息子は、関係を迫っても性器は持たない。肉体の痛みでオーガズムを得る奇妙な性行為に嵌っていく。
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男たちが色と暴力ばかりで救いがたいのと同じくらい、女たちもまた醜く、浮気相手の下品で猥りがわしいところ、妻の蛮行など、どちらも目を覆いたくなるほどの赤裸々ぶりだ。
驚くことに、女優イ・ウヌが、妻と不倫相手の二役を大胆見事に演じきっている。

多々タブーを描いていながら、拒絶反応がおこらないのは、極限のおぞましさに監督が真摯に向き合っているのがわかるため。結末を理解できる気持ちになる。
父親の性器を移植した息子と、父と母の三角関係を、業といわずしてなんといおう。

悲劇の夜、街を彷徨った妻の前に現れる謎の男は、ショーウィンドーの仏像に跪き、イスラームの仕草で祈りを捧げる。あらゆる要素を網羅した、俗っぽくも根源的な物語だった。
男の正体を知ったとき、かすかな希望が湧くのを覚えた。

 (83min)
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by haru733 | 2015-01-29 16:43 | 韓国映画 | Comments(0)

愛の予感 (2007年) あなたなしでは生きられない 

d0235336_2214034.jpg 事件や事故が起こったあと、人はどうやって罪と罰を赦し、乗り越えていくのだろう―
主演も務める小林政広監督は、日常場面のシーケンスを徹底して反復させたその先に、驚くほどリアルに心の機微を浮かび上がらせた。
ダルデンヌ作品を彷彿するけど、あのくどさはなく、根源的な物語は、複雑な人間心理を穿って目を逸らすことができなくなる。

 (あらすじ) 中学生の娘を同級生に殺害された父親(小林政広)と、その加害者の母親(渡辺真起子)が、希望をなくして移り住んだ北海道の小さな町で偶然再会して、やがて再生の予感が生まれるのだが―

冒頭とエンディングのみ台詞があり、あとは一切なんの説明も音楽もない。ただひたすら日常描写の繰り返し。
男が寝泊りする旅館の食堂に、女は働いている。鉄工所から帰り、風呂に入り、食堂にやってくる男は、来る日も来る日も、女の作った料理に手をつけることはない。
それでも男は、贖罪の日々を暮らす孤独な女を見捨てておけず、自らもつながりを求めて、不器用に彼女の日常に介入していくのだった。

死んだように孤独な男と女が、償う、赦す、赦さないの次元から離れ、互いの苦しみを分かちながら、かろうじて生きていられるだけの一握りの希望を与え合う姿に胸がふるえる。男が言った「一緒に生きていく資格」なんか、なくていいとおもえるほどに。
説明を一切排除した潔い小品は、深い傷を知っている、大人の胸にこそ、より重く響くだろうか。

 (102min)
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by haru733 | 2014-12-23 00:00 | 日本映画 | Comments(0)

山田真歩サン出演作 『SR サイタマノラッパー2』『自分の事ばかりで情けなくなるよ』

『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー 傷だらけのライム』 (2010年)
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 さいきん気になる女優、山田真歩さんの出演作をふたつ。『SRサイタマノラッパー2』は前作から比べてかなり面白くなっていた!

高校時代に結成したラップグループ5人の面々は、今では散り散り。実家のコンニャク屋を手伝いながら退屈な毎日を過ごしているアユム(山田真歩)は、かつての仲間、ミッツ(安藤サクラ)らと共に、再度一夜限りのライヴを行おうと思い立つ。“伝説のDJ”タケダ先輩の聖地をライブの場所に選んだ5人は、そこで、同じく聖地を探して来た埼玉のラッパー、イック(駒木根隆介)とトム(水澤伸吾)に出会うのだが―。
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さまざまな現実が立ち塞がる、20代後半の女の子たちが、もう一度夢を懸けて挑む復活ライブへの道。そうそう甘くはないリアルに挫けながらも、すべてを受け入れ開放するのに、ラップのリズムは最高に無様で最高にかっこいい!そして口ずさみたくなる楽曲。

特徴ある声音の山田真歩さんが、鬱屈した主人公の葛藤と情熱とラップ魂を、見事な存在感で演じて、とにかくお似合い。
叩きつける音楽と言葉の応酬に予期せぬカタルシスが待っている。
これから始まる選挙戦もラップ調で過ぎていけばいいのに....そんな妄想を頭によぎらせつつ。

 (95min)


『自分の事ばかりで情けなくなるよ』 (2013年)
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 人気バンド“クリープハイプ”のメンバー尾崎世界観の原案を元に作り上げたミュージックビデオ3本に新作「傷つける」を加えて再編集した劇場版。
なるほど、音楽が前面に出た、きっとファンならばたまらない作品。音楽以外の間口から入った者は、置いてけぼりにされながらも、こういう世界はけしてキライではないけれど。

主要人物は、元カレが忘れられないピンサロ嬢。大好きな“クリープハイプ”のライブ当日に残業するOL。一途な想いを爆発させるオタク青年。そして、トレーラーハウスで生活する謎の青年と家出少女の恋……。
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ミュージックビデオならありでも、映画にするには物足りない。こういうの、マスターベーション映画と呼ばれかねない。とくに池松壮亮氏主演の最終話は、ありがちでこそばゆいばかり。
OL役の山田真歩さん、さいきん気になる池松氏など、キャスティングと音楽が良いだけにざんねん。

 (106min)
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by haru733 | 2014-11-28 22:24 | 日本映画 | Comments(0)

悲夢 (2008年) ふたりでひとつ

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 印鑑彫刻師のジン(オダギリジョー)は、ある日、交通事故を起こすリアルな夢を見る。翌日、現場を訪れたジンは、代わりに逮捕されていくラン(イ・ナヨン)に出会う。不思議なことに、夢遊病を患うランは、ジンが夢でみたままを代わって行動していたのだ。
奇妙な運命に導かれた男と女が、不可思議な夢の呪縛によって引き裂かれていく、切ない恋の物語。

偏愛するヘビーでグロテスクな純愛もの。ジンとラン、ふたりと別れたばかりの不実な恋人たちは二股をかけあい愛し合っていた。3つのカップルが壊れながら夢現の狭間で血に染まり、崩壊していく。
未練残るジンの見る夢は、いつも別れた恋人のこと。おかげでランは、もう二度と会いたくない男の元に、夜な夜な夢遊病で会いにいってしまう。
無意識下の行動にやがて心を引き裂かれていくランと、それに同情するジンは、いつしか眠らない努力をしはじめるのだが―。

過去の恋から、いま出会った相手に徐々に惹かれていくふたりでも、恋の道行きはあまりに激しい。
眠れば傷つくランのため、寝まいと闘うジンだけれど、猛烈な睡魔にはとうてい勝てない。ふたりは交互に眠ることを覚え、毎夜、それぞれの睡眠を監視して過ごす壮絶かつプラトニックな夜が訪れる。
眠気を殺すために、針で刺したり、ノミで突いたり。目で覆いたくなるヘビーな描写は、敬愛する塚本晋也作品を彷彿とする。キム・ギドク氏もわれらが塚本晋也氏も、壮絶な男気映画はたいていグロくてエロくてすき。
共に眠ってしまった夜、慢性不眠が決定的な犯罪を引き起こしてしまった悲劇後、幻想的な物語は観るものに解釈を委ねて終わっていった。きっとすごく幸せだけれど、悲しい結末。
二度と眠らないことを誓ったジンの壊れゆく血まみれの狂気と、精神病院のランの狂気が相まって、フシギな余韻をのこしてくれる。
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日本人俳優を起用した本編は、韓国語のなかに、オダギリジョーだけが日本語を話すという異色作。何事もなかったように会話が成立しているので、ありとおもえる。
ほかにも多言語を同時進行させていた忘れがたい作品に『永遠(とわ)の語らい』というのがある。過去の日記を調べてみると5言語、ギリシャ、イタリア、フランス、ポルトガル、英語で会話が交わされる驚くべき結末の作品だった。

(93min)
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by haru733 | 2014-11-08 11:37 | 韓国映画 | Comments(0)

河 (1951年) 恋ははしかのようなもの

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 ガンジス川流域のベンガル地方に暮らす、製麻工場の支配人をつとめるイギリス人大家族。その14歳になるナイーブな長女ハリエット(パトリシア・ウォルターズ)と、奔放な18歳の工場主の娘ヴァレリー(エイドリアン・コリー)、アメリカ人の父を持つ混血娘メラニー(ラーダ)は大の仲良しだった。あるとき、メラニーの家に、第二次大戦で片足を失った米人青年ジョン(トーマス・ブリーン)がやってきて、3人はそれぞれ恋に落ちるのだが―。

悠久の河の流れを背景に、慈愛に満ちた家族に見守られながら始まり、やがて終わっていく初恋がまぶしい。戦争で深手を負い自棄になっているジョンの暗鬱も、そんなジョンへの熱病のような恋も、誠実な一家の紡ぐ人の世の永続性を前にしてはささやかなことになる。
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原作者ルーマー・ゴッデンの半自叙伝的な同名小説をもとに、少女らの成長と、同時にアジアの死生観を漂わせた、全篇ベンガルロケの情景がいい。インドの民をとくに魅力に描こうとしていなくても、ひときわ自然の美をたたえていた混血娘メラニーのアイデンティティーに迷う聡明な眼差しが忘れがたい。人種に優劣はないけれど、インド人の顔立ちはほんとうに美しいとおもいます。

監督は印象派の画家オーギュスト・ルノワールの子息、ジャン・ルノワール。大画家の審美眼が、愛すべき”映画”の世界で受け継がれていくことに、深いロマンを感じる。
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アジア映画 /死ぬまでに観たい映画1001本 /『河』―記憶していたキーワード。ほんとうはツァイ・ミンリャンの『河』を観るつもりだったというのは、また別のお話。

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by haru733 | 2014-10-28 00:22 | アメリカ映画 | Comments(0)

タイピスト! (2012年) タイプライターひとつで世界に挑む、田舎娘のサクセスストーリー

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 これ、すごくおもしろかった。ラブコメに括られてしまうのがもったいない、素敵なラブストーリーかつ、夢を掴むサクセスストーリー + スポコン。
舞台は1950年代のフランス。保険会社の経営者・ルイ(ロマン・デュリス)は、新しい秘書に、田舎娘ローズ(デボラ・フランソワ)を雇うが、ドジで不器用すぎてたった1週間でクビを言い渡すのだった。しかし、ローズにタイピングの才能を見出していたルイは、雇い続ける代わりに、ある提案をする。それは、当時、ステイタスだったタイプライター早打ち大会に出場すること、さらには大会で優勝することだった―。

独身貴族のルイが、趣味のようにしてはじめた早打ち競技大会優勝プログラム。ひとりで住んでいた屋敷の一室にローズを住まわせ、日夜スパルタ教育を繰り広げる。
憎めない笑顔のロマン・デュリスが、さらにになるともっと好き。特訓は厳しく、仕事との両立にお疲れ気味のローズだけれど、優しかったりそっけなかったりするルイのことを、彼女はだんだん好きになっていく。一つ屋根の下、ルイだって惹かれてはいるものの、けして言葉にすることはなく、ふたりはひたすら特訓の日々を重ねるのだが―。
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どうしてベタなはずのラブストーリーがこんなに面白いのだろう。きっとそれは人物に背景があるから。
ルイの人生はこれまで楽じゃなかった。一族から浮いた存在で、別れた幼馴染との過去を親友となったいまも忘れられず、戦争で深いキズを負った。だからこそ、笑顔の奥に、戸惑いや臆病や情熱があって魅力的。
ローズだって、女性の社会進出にあこがれて田舎から都会へ出てきた以上、男手ひとつで育ててくれた父親に安心してほしいし認めてほしい。
それらがユーモラスに小気味よく展開していくから、時を忘れるほどたのしい。

恋愛は、くっつくまでがおもしろい。キュンキュン鳴ってばかりいるほどドストライクな恋模様。先日の『ムード・インディゴ』ではないけれど、オドレイ・トトゥならきっと脱がない。でも、デボラ・フランソワちゃんは、いつだってステキな脱ぎっぷりでわたしは大好き。チャーミングでセクシーで、優勝に優勝を重ねて、スターダムにのし上がっていくローズはとぴっきりキュートだった。

監督は、こちらも長編デビューとなるレジス・ロワンサル氏。新人とはおもえないクォリティー。 (111min)
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by haru733 | 2014-10-22 22:13 | フランス映画 | Comments(0)

めぐり逢わせのお弁当 (2013年) お弁当の誤配が生んだ600万にひとつの奇跡

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 インド・ムンバイでは、お昼どき、ダッバーワーラー(弁当配達人)がオフィス街で慌ただしくお弁当を配って歩く。その中のひとつ、主婦イラが夫の愛情を取り戻すために腕を振るったお弁当が、なぜか、早期退職を控えた男やもめのサージャンの元に届けられた。偶然の誤配送でめぐり逢った手料理の味に、サージャンは驚き、イラは空っぽのお弁当箱に歓ぶのだった。しかし、お弁当をきれいに食べたのが夫ではないと気づいたイラは、迷った末に、残さず食べてくれたまだ見ぬその人に手紙を忍ばせるのだった―。

厭世的なやもめの中年男サージャンと、夫婦仲に悩むイラは、人生の岐路を迎えている。虚しい毎日に、ひとつのお弁当を通じて知り合った男女は、顔さえかわらないままで、たがいの言葉に励まされ、惹かれ合い、やがてそれは真実の愛へと変わっていく―。

人生はただでさえ儚くて虚しいから、みんなそれを誰かと分かち合いたい。だれでもいいわけじゃなく、本当に孤独や空虚から救ってくれる出会いこそが尊い。
ふたりが交わす手紙の内容、一通一通返事を待ちわびる喜び、心の込もった美味しい食事があるしあわせ。偶然が物語を生まず、ふたりがもし出会わなかったとしても、人生はつづくけれど、らしく生きる素晴らしさを知ったふたりの出会いは、やっぱり尊い。
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歳を重ねるたび臆病になっても、サージャンはイラとの未来を必要だと、迷いながらも願った。強い想いが素朴でうつくしい。道ならぬ恋とはとてもおもえない、高純度な恋物語は、観る側に結末を委ねて、秀逸に幕を閉じた。

インドの喧騒のなかにさえ、デジタル時代特有の希薄化した人間関係ははびこる。そんな背景だからこそ、イラと、上階に住むおばさんのやり取りや、お弁当が運ぶ手紙ならではの気配に胸がほだされる。
ガンで死にゆくイラの父も、天井のファンに夫の命を重ね合わせるおばさんも、亡き妻の面影に揺れるサージャンも、念願の挙式が叶った孤児の同僚も、だれも彼もが人生の切なさを生きていた。


踊らないインド映画の記録的大ヒット作である本編は、主演のイルファン・カーンがことに素敵だ。壮年となっても変わらない体型で、どこか知的なカーン氏がすき。良き父を演じた『その名にちなんで』もすばらしかった。
飾らない家庭の食卓で生まれるとびきりスパイシーなインド料理の数々はどれもとっても美味しそう。だからこそ、後半からめっきり登場しなくなることが、すこしだけもったいなくおもえてしまった。

(インド=フランス=ドイツ合作/105min)
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by haru733 | 2014-09-06 01:09 | インド映画 | Comments(0)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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