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シャトーブリアンからの手紙 (2013年) 真実の物語を記憶しよう

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 むかし、『ブリキの太鼓』という奇妙な傑作があった。そのフォルカー・シュレンドルフ監督の、10年ぶりの新作は、抑えた筆致で描いた戦争ドラマ。

1941年10月20日、ナチ占領下フランスで一人のドイツ将校が暗殺される。ヒトラーは即座に、報復として、収容所のフランス人150名の銃殺を命令する。人質は主に政治犯から選ばれ、シャトーブリアン郡の収容所でも、23人の人質が選ばれた。その中には、占領批判のビラを配って逮捕された、まだ17歳の少年ギィ・モケもいた―。

『ブリキの太鼓』のようなキッチュな奇怪さは無い。チラシにあるとおり、感傷の入る余地のない透徹した演出が潔い。ドイツ人であるシュレンドルフ監督が、フランスを舞台にフランス側の悲劇を綴ったことに意味がある。
彼らが残す遺書となった手紙の実物や、まだ存命の当事者たちが、ラストで登場してくるわけでもない。手の込んだ感傷には寄らず、真実を淡々と描くだけ。
ドイツとフランス、理不尽な命令に板ばさみとなる官と軍の面々と、人道的に動く事など不可能だった時代を通して、二度と命令の奴隷になってはならないと、強く現代に語りかける。

突然、死を宣告された23人の人質たちが、いかに不当な銃殺に立ち向かったか。感情移入すれば恐ろしい。ただ、それにもかかわらず、彼らの側にだけいるのではない。突然、銃殺する立場となった一介のドイツ兵の恐怖や、150人の死に煩悶する暗殺実行犯たち、馬鹿げているとわかりながら何もできない軍人らの苦しみを、ドイツとフランスの双方から達観する。

報復が報復を生むことは、いまでも変わらない。平和な世はなかなか訪れない。和解する難しさは深まるばかり。せめて、日本くらい、死ぬ気で平和主義を守り通してほしいけれど、戦争の記憶が世代ごと薄れていることは、戦争を知らないわたしにだって見ていてわかる。

終戦後、ナチ抵抗の悲劇の象徴となったギィ・モケの名前は、パリ地下鉄の駅の名前になったそうだ。 
(フランス=ドイツ合作/91min)
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by haru733 | 2015-02-11 16:20 | 多国合作映画 | Comments(0)

鉄くず拾いの物語 (2013年) 生きることを闘う

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 むかし10年以上前、『ノー・マンズ・ランド』という、奇妙で不条理なすばらしい反戦映画があった。
監督はダニス・タノヴィッチ。『美しき運命の傷痕』以降、ひさしぶりの新作となった本編は、母国ボスニア・ヘルツェゴビナを舞台に、実際のロマの家族が体験した貧困と差別が生む悲劇を、当事者本人に演じてもらう手法で描いた、まるでドキュメンタリーのようなドラマ。

ナジフとその妻セナダは、二人の娘たちに囲まれ慎ましいながらも幸せな生活を送っていた。ナジフは拾った鉄くずを売って一家の生計を支え、セナダは3人目の子をお腹に身ごもっている。そんなある日、ナジフが帰宅すると、セナダが強い腹痛を訴え横になっていた。翌日、病院で診てもらうと、5か月の胎児は腹の中で死んでいて、すぐにでも手術を受けないと命に関わる状態だというのだ。しかし、貧しい鉄くず拾いで保険証を持たない夫婦には、980ボスニア・マルク(500ユーロ)の大金はとうてい用意できないのだった。手術をしてもらえないセナダを抱え、一家は路頭に迷う事になる―

保険制度がとりあえず平等にある日本人目線では、とんでもないお話。ひとりの人の命を前に、お金を持ってこなければ手当てしませんと、突っぱねられる恐怖。
倹しくお隣さんと助け合いながら暮らしてきた一家を救ったのは、結局、心ある内政機関でもロマの協会でもなく、身内から借り受けた保険証だった。

車の貸し借りから、子守まで、ご近所同士の助け合い精神に、目から鱗がおちる。弟だろうが隣人だろうが、無用な気遣いいっさいなし。古き良き日本で、お隣から醤油を借りるような気安さがいい。それはロマという流浪の民特有のものかもしれないけれど。だって、都会の大病院に温情は皆無だった。

民間兵士として闘ったナジフはいう。紛争後、国から保障されたものはなにもなかったと。景気は悪く、失業率は高く、現実は厳しい。
極寒のただ中、廃車をバラした鉄くずだけではどうにもならない窮地に、愛くるしい娘たちがただ元気に笑っていることは救いだった。だけど、「めでたし、めでたし」で終わらない場合の結末は、想像に難くない。
そしてたぶん、そんなことが実際に起こりうる母国の闇と、世界へ向けた警鐘のため、タノヴィッチ監督はひさしぶりにメガフォンを取ったのかもしれない。飾らない真摯なドラマだった。

 (74min/ボスニア・ヘルツェゴビナ=フランス=スロベニア合作)
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by haru733 | 2015-02-11 13:39 | ボスニア=ヘルツェゴビナ映画 | Comments(0)

HUNGER ハンガー (2008年) 政治犯として生きるための死

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 『それでも夜は明ける』のアカデミー作品賞受賞をきっかけに、日本でも遅れて上映された、スティーヴ・マックイーン監督の長編デビュー作。主演はマックイーン作品には欠かせないマイケル・ファスベンダー氏。
とても初期作品とはおもえない、静謐に削ぎ落とされたドラマ。IRAものとしては珍しく、戦闘シーンがなく、刑務所を舞台にした閉塞感のうちに、実際に起こった事件とIRAの悲惨な歴史を浮かびあがらせていく。

1981年、北アイルランド、メイズ刑務所。政治犯としての権利を奪われたIRAの囚人たちは、看守たちの凄惨な暴力によって制圧されていた。あらゆる抵抗を重ねても変わらない現状に、ボビー・サンズ(マイケル・ファスベンダー)を核とするメンバーたちは、最後の手段にハンガー・ストライキの決行を決意するのだが―

ついわたしは、食餌を絶つことを、神聖な行為として尊んでしまう。ハンガー・ストライキに悪印象はなく、たとえば生前、幾度も絶食したガンジーさんがイギリスを困らせた頑固な姿には、辟易しながらも尊敬やまない。だけど、ガンジーさんの場合、まだ死ねないと、思ってはいなかっただろうか。ボビー・サンズ氏を筆頭に餓死していった7名のメンバーたちは、死ぬことを覚悟していた。

ソツがない、スティーヴ・マックイーン作品はどれも好き。
冒頭は、新入りの囚人目線で、悪意と暴力に満ちた刑務所内部の恐ろしさに、一緒になって震える。並行して描かれる名もなき看守の目線は、その平凡な日常と、勤務中の暴力と、虚無感を映し出す。
やっと中盤になってボビー・サンズが登場してからは、死へと辿る道筋が淡々と描かれていく―。
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すごいのは、看守が雪のなかで煙草を燻らすシーンに漂う哀愁。得意とする凄まじいシーンの数々。
そして、ハンストを決意した主人公が、牧師と、4本の煙草を吸い終わるまで対話をつづける、驚異的な長回しだ。
食餌を絶った人の体はどんなふうに破壊され死に至るのか―。冷静な傍観者たるがゆえに見えてくる、事実の重さにおののいた。
『SHAME』の前にこんな凄い作品があったとは。

(イギリス=アイルランド合作/96min)

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by haru733 | 2015-02-03 12:31 | イギリス映画 | Comments(0)

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い (2011年)

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 『リトル・ダンサー』『愛を読むひと』のスティーヴン・ダルドリー監督。過去の巧みなストーリー・テラーぶりを思い出せば、本編のソツなさが頷けた。父を失った喪失感から立ち直っていく少年の姿を、手作り感いっぱいに描くビルドゥングスロマン。

9・11以降のアメリカと、3・11以降の日本。テロと自然災害という大きな差異はあれど、作られた映画はちょっとちがう。タブーが多く、ドキュメンタリーが続々作られるところは日本らしい。一方で、悲劇を織り込んだ見事なエンタテイメントを育み受け入れる前向きな態度はアメリカらしい。そして今回はそれが少し羨ましいなとおもえた。

9・11のテロで仲良しだった父を亡くしたオスカー少年は、ある秘密を抱え、一年以上たったいまも、その死を受け入れられずに苦しんでいた。あるとき、偶然父の部屋のクローゼットで、封筒の中に1本の“鍵”を見つける。これは父が残したメッセージかも知れない―。オスカーはその鍵の謎を探しに、ニューヨークの街へと飛び出していくのだが―

アスペルガー症候群を疑われるほど自閉症傾向のあるオスカーが、父の最期のメッセージを必死に求め街へ出る。生前よくやった謎解きゲームの要領で、科学的根拠に基づいて、資料を整理して、合理的手段で手当たり次第に”ブラック”姓の人物を訪ね回る。
オスカーの悲しい秘密が浮き彫りになるころ、真実は感動に包まれて、彼を喪失から救い出すのだが、その定石どおりを、細部まで作り込んだ見事な画遊びの数々が、まるで翼が生えたみたいに想像の力で補っていった。ただただ、オスカーの秘密には、ほんとうに悲しい涙が流れた...。

美形のオスカー少年はじめ、脇を固めるのはトム・ハンクス、サンドラ・ブロックという演技派な両親の面々。祖母の家に間借りする謎の老人が手助けしてくれるなど、絵に描いたようなシチュエーションなのに、ビジュアルの遊び心がすべてを反故にしてしまうところがすごい。手書きのファイリングブックや、オスカーの趣味で溢れた部屋など、理屈抜きで愛してやまない小道具でいっぱいの世界だった。  (130min)
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by haru733 | 2015-01-17 16:47 | アメリカ映画 | Comments(0)

それでも夜は明ける (2013年) 人間の残虐性をとことん炙り出す

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 遅れてやってきた蠍座での上映を観てからずいぶん経ちますが、とても良かったのでなにか一言でも残しておきたい、衝撃の実話を元にしたドラマ。
19世紀半ば。アメリカでは、黒人奴隷の輸入が禁止され奴隷不足がおこり、北部の「自由黒人」たちを誘拐してくる事件が多発していた。主人公のソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、ニューヨークで家族とともに暮らす自由黒人で音楽家だった。しかし、旅先で突如誘拐され、奴隷としてアメリカ南部のニューオーリンズへ売り飛ばされてしまう―
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過酷すぎる12年もの年月、身分を証明して再び自由になる日をひたすら求め続けた男の、壮絶な奴隷体験記。
買われていく先々で起こるあまりに非人道的で残酷な仕打ちは、見るに耐えない。良心ある人物の登場ははわずかで、おおくの白人たちは男女問わず、微塵の疑問も抱かないまま黒人を家畜扱いにする。
虐殺、暴力、凌辱。よくぞここまで人の残虐性はエスカレートするものかとゾッとはしても、ホロコーストにしても集団に入れば自分だってどう転ぶかわからない、人間心理の危うさに肌を粟立たせて観た。

スティーブ・マックイーン監督の『SHAME シェイム』からずっとタッグを組み続けているマイケル・ファスベンダーが、ドSの農場主を演じている。あえて言葉にするまでもなく、サイテー男が板につく、この方はほんとうに大好き、巧い!神経の細い農場主にはベネディクト・カンバーバッチ、その卑劣漢な使用人にはポール・ダノ。
そして、奴隷制度反対のカナダ人労働者役にはブラッド・ピッド。存在感あるバイプレイヤーとして脇をたしかに固めているブラピ氏が、後々主人公を救うことになる。
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絶望を前にして、足搔くことも生きることも諦めてしまった仲間たちがいるなかで、ソロモンは12年間希望を捨てなかった。家族との再会を夢見て、廃人になることを拒み続けた。
植物の茎でペンを作り、こっそり紙を手に入れて”字”を書こうとする冒頭のシーンが忘れられない。それは終盤につながる大事なエピソードで、人間的に生きる根源的な欲求を感じさせる名場面だった。

 (134min)
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by haru733 | 2014-11-11 10:32 | 多国合作映画 | Comments(0)

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち) (2007年) 革命戦士たちがいた頃

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 1960年から約10年間に及ぶ学生運動とはいったいなんだったのだろう―。当時を知らない世代にはわかりにくい事件の本質を、雲が晴れるように教えてくれる。
いまを、無気力に暮らす若者たちがいて、かたやイスラム国で戦い死にたいと計画する学生がいて....
肉体に宿る情熱の熱量は、きっといつの時代も変わらないけれど、どこへ向かってなにを放出させるかは、その人次第。学生運動の盛んだった当時の外向きのエネルギーは、だからあまりにも激しくて驚いてしまう。世界全体が変動するうねりのなかで起こったこだと、わかってはじめて腑に落ちるような。
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ベトナム戦争にはじまり、パリの5月革命、中国の文化大革命、そして日米安保反対闘争へと繋がって、日本の学生たちは社会変革を目指し勢いづいた。
そのなかで、1971年に結成された”連合赤軍”は、新左翼党派の内部対立によって組織された”赤軍派”と、文化大革命に同調する組織から分離した”革命左派”が統合してできた集団だった。

理想とする社会にむかって、当然のように運動は激化していく。警戒を強める政府や警察からの弾圧は免れず、武装し逃亡を繰りかえし、追い詰められる立場の厳しさはやがて内部へと向かっていくのだった。
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エリート集団であるがゆえ、ストイックな厳しさが他人に向くとどうなるか、、極寒の山岳地方で、総括を求められる怖さは、いつ見ても震え上がりそう。
個々が立派な一革命戦士になるため、士気を乱す者、自己批判を貫徹できない者は容赦なく処刑されていく、リンチへと至る心理状況やエスカレートしていく暴力がほんとうに恐ろしい。

無名の役者さんを多く起用して、緊迫した状況下の、長回しに耐える演技を積み重ねた本編はすごい。当時の写真や映像を挿入しながら、原田芳雄さんによるナレーションに合わせて、学生たちのギリギリの焦燥ぶりを忠実に描き出す本編は、近年の『突入せよ!「あさま山荘」事件』や『光の雨』とは比較にならない良さを感じた。
ちなみに、リンチの犠牲となる女戦士を演じた、坂井真紀さんの熱演は圧巻。すさまじい女優根性を見た気がする。俳優としての活躍がすきな井浦新(ARATA)氏も、山荘でドン詰まるまでの姿がいい。
映画には、人間の裸体が必要な場面というのが絶対にあって、そこで男優・女優を脱がせることができる監督の貴重さを実感した作品でもあった。ピンク映画出身の若松孝二監督作は、どちらかといえば苦手だったけれど、骨のある本編に出会ってみると、いまさらながら過去の作品を手にとってみたくなった。

(190min)
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by haru733 | 2014-10-13 12:25 | 日本映画 | Comments(0)

ワレサ 連帯の男 (2013年) 反体制のシンボルとなった男

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 1926生まれ、御年88歳になるポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ作品が好きです。ここにきて、やや微笑ましい場面ある作品に出逢えて、うれしかった。母国の歴史を描き続けてきたワイダ監督が緩むとき、次回作がたのしみ。

本編は、東欧諸国の民主化運動で大きな役割を果たした、ポーランドの労組“連帯”の初代委員長にして、伝説的政治指導者レフ・ワレサ(ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ)の、激動の半生を映画化した伝記ドラマ。 (allcinema)
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物語はイタリア人女性ジャーナリストがワレサの自宅を訪れるところからはじまる。インタビューを介した回想形式で、時間軸を行き来して物語は展開する。
度重なる拘留と、多忙極まる活動を支えたのは、最愛の妻ダヌタ(アグニェシュカ・グロホウスカ)だった。幾度も仕事をクビにされては貧しい暮らしに、子沢山だった夫婦の、深い絆のエピソードがゆいいつ明るい。ほとんど女手ひとつで家庭を守り続けたダヌタの気丈な強さをみていると、女としてなんだか勇気づけられた気がする。
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労働者の立場から、インテリたちを巻き込んで社会を変えていったカリスマ的指導者。ワレサはのちに、ポーランド共和国、第三共和制初の大統領となり、ノーベル平和賞を受賞したという―。

日本には、アンジェイ・ワイダ氏のような映画監督はすくない。老境にはいり戦争作品を手がける巨匠はいるけれど、生涯とおして自国の歴史を見つめているワイダ監督みたいなひとは、尊敬せずにいれない。それは、大好きな映画をとおして知る、遠い国の歴史なのだけれど。
実際の記録映像を交えた本編は、ポーランド映画の、新たな社会派作品の佳作ではないでしょうか。

(124min)
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by haru733 | 2014-05-24 00:00 | ポーランド映画 | Comments(0)

ファルージャ イラク戦争 日本人人質事件…そして (2013年) 自己責任の猛火を浴びて

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 イラク日本人人質事件は、2004年、自衛隊のイラク派遣から一年経たずに起こった。マスコミ報道をきっかけに”自己責任”を問われて、3人へ対する批判がエスカレートしていった過程は、もう誰もが知るところとなっている。もし自分なら同じように非難を受けて、こころ病まずにいれただろうか...

あれから時を経て、それぞれの場所で支援活動を続けている高遠さん、今井さんの堂々とした言動には、揺るぎがない。きっと凡人とは違う彼らのような人だから、なかなか理解されることなく誤解され、非難を受けてしまうのでしょう。
たしかに、解放された直後、謝罪しなかったことなど過ちはあったとしても、あれほどの恐怖と誹謗のなかを耐えて生き延び、いまなお人を助ける活動を続けている信念の深さなどは、評価されて然りとおもいます。
この度、人質事件とその後にカメラを向けたのは、当時、今井さんとおなじく18歳だった、制作会社ADの伊藤めぐみ監督。
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せんじつ、イラク戦争の自衛隊派遣に関する映像資料が、テレビで初公開されているのをみました。
いかに危険伴う任務だったか、いまさらに驚きながら、帰国後の隊員の自殺者数にはもっと驚きました。
イラクに関わって強い恐怖とストレスを体験した自衛隊とは、まったく違う立場でイラク入りした3人だけれど、おなじように精神を追い詰められて死の淵を長く彷徨ったことは、切り離して考えることができません。

2003年。自衛隊のイラク派遣が世間を騒がせていた頃、関係者の知人が誇らしげにしていたことを憶えています。当時からわたしは反対派で、いまも憲法改正などはしてはいけないとおもっています。どんな形であっても日本は武力を行使しないでほしい、守り通さなければならないものが何か、答えは簡単。
そのうえで、高遠さんが調査し続けている、劣化ウラン弾によって奇形児で生まれてきた子どもたちへの支援は、日本政府にだってできるのではないでしょうか。
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3人を拘束した武装勢力の出した声明文が、言い分としても正当であったことが印象的。自衛隊は撤退させないという日本側の返答を聞いて、「国民の命を軽んじる国家に我が国を救えるとはおもえない―」 そう返事したイラク側の言葉が、より人道的に聞こえてくるのはなぜだろう。

 (95min)
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by haru733 | 2014-04-19 17:29 | 日本映画 | Comments(0)

偽りなき者 (2012年) いわれなき疑惑と憎悪に立ち向かう男

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 人が人に対し持った猜疑心は、容易に消えてはくれない。いわれなき罪に対して信頼を取り戻すことは難しい。それが性に関することであればなお、無力な子どもの言い分であればあるほど。
ひとりの少女の何気ない嘘によって、理不尽な迫害の果てにこれまでの人生を台無しにしてしまった主人公の絶望と、それに立ち向かう執念を描いた物語は、派手さはないけれど見ごたえある良作だった。
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デンマークの小さな町。離婚の悲しみを乗り越え、幼稚園の先生として再就職したルーカスは、狩猟仲間たちと倹しくも穏やかに暮らしてきた。そんなある日、彼にプレゼントを受け取ってもらえなかった、親友の娘で園児のクララが、軽い仕返しのつもりで発した嘘が彼の人生を狂わせていく.....。
“ルーカスにいたずらされた”
か弱い女の子の言う言葉を鵜呑みにする町の人々は、まさかとは思いながらも、子どもを信じてルーカスを村八分にしてしまうのだった。不鮮明な子どもの記憶も、「怖いことされた恐怖のため」だと解釈されて、証拠はなく、何を言っても不利になる、親友さえ信じてくれくなくなったとき、彼はいったいどこに縋ればいいのだろう。ルーカスの苦しみは筆舌に尽くしがたい。
そんな彼を救ったのは、離婚で離れて暮らしている息子が、曇り一点なく自分を信じてくれたことだった―
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男気あふれる狩猟の町を舞台にしたことで、より怖い作品になっていることがおもしろい。手の平返して迫害する大男たちは、無実を訴える息子にまで手を上げる。エスカレートしていく暴力が恐ろしい。
信念持って力強く耐える彼は、唯一、愛する息子と、ひと握りの仲間たちだけによって支えられている。そんな彼を、誰か助けてと、ヒリヒリおもう。
嫌悪心理の根深さを穿った北欧らしいラストシーンは、見事の一語に尽きる。

クララちゃんを演じた子役の演技がナチュラルでよかった。大人たちと話すとき、ふとした時に顔を歪めて洟をすするという癖があるのだけれど、その愛らしいクセが、ルーカスに感情移入していると、巧みに憎らしい仕草に変化するのがおもしろい。なんど悪態つきそうになったことか、、
これが演技なのか素なのか、最後までわからなかった。

ちなみにセクシーな俳優といえば、マイケル・ファスベンダー氏とライアン・ゴズリング氏を選びたいですが、このマッツ・ミケルセン氏もかなりセクシーです。難しい役どころを巧みにこなすスマートな演技派の人。

 (115min/監督 トマス・ヴィンターベア)
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by haru733 | 2014-04-09 06:06 | デンマーク映画 | Comments(0)

原子力発電所事故の不都合な真実 『チャイナ・シンドローム』

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 東日本大震災からもうすぐ3年経つなんて、ちょっと信じられない。3年あれば、ある程度の復興は完了するだろうなんていう考えは浅はかでした。
復興を遅らせている一因、福島第一原発の事故が起こる前に、もしこの映画を観て知っていたら、直後の印象は随分変わっていたに違いない。
米国の原子炉がメルトスルーを起こしたら、高温の核燃料は地中にのめりこみ、地球の裏側にある中国にまで達する―タイトルとなった「チャイナ・シンドローム」の意味がたとえアメリカン・ジョークだとしても、メルトダウンの恐ろしさや原発推進派の隠蔽体質くらい、せめてあの時に知っていたかった。

公開ほどなくして、スリーマイル島で原子力発電所事故が発生してより現実味を帯びた本編は、当時大きな反響を呼んだのだそうだ。立派な社会派作品でありながら、エンタテイメント性を忘れない第一級のサスペンスは、原発を取り巻く後暗さや恐ろしさを見事に描いていてすばらしかった。製作年1979年と、意外に古いことにびっくり。
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TVリポーター、キンバリー(ジェーン・フォンダ)とカメラマン(マイケル・ダグラス)ら撮影クルーはカリフォルニアの原発を取材中、原子炉の事故に遭遇する。事故を究明しようとするカメラマンとともに、次第に深刻さを理解していくキンバリーだったが、テレビ局の思惑によって放送はNGとなってしまう....。やがて運転を再開した発電所では、技師で室長のジャック(ジャック・レモン)が原子炉に甚大な欠陥を発見していたのだが―

原発事故に遭ってから、ただの人気者リポーターだったキンバリーは、真相を公にする使命感に誠実に向き合っていく。カメラマンとともに局の方針に背いて事件の真実を突き止めた彼女の目を通して、いまとなっては生々しすぎる電力会社やマスコミの動きを知ることは、やけにリアルでとてもこわい。

手抜き工事した建設会社が送り込む刺客も、電力会社社長のキレっぷりも、エンタテイメント性に則ってハラハラ感が堪らない。とくに欠陥を発見した室長ジャックが、命懸けで操業停止を訴える終盤の緊迫感などものすごいのだ。制御室を占拠したジャックは、キンバリーたちの協力を得て生放送での告発を試みるのだが...良心が巨大な組織に敵うはずはなく....
いまにも暴発しそうな原子炉の映像が映し出されるたび、それがたとえしょぼいセットだとしても、恐怖の実感はかくじつにある。見逃していた映画ファンとしては、ニーズに答えてDVD発売されたことがすごくうれしい。

ところで福島の核燃料はメルトダウンしてメルトスルーして今はどこにいったのだろう。ブラジル・シンドロームなんて言葉はありえなくても、甚大な汚染被害の行く末は、身の毛もよだつ形で数年後に表れてくるのだろうか。原発が相変わらず世界中で動き続けていることに、軽い絶望を覚えないわけにいかない。

 (122min/1979年製作/監督 ジェームズ・ブリッジス)
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by haru733 | 2014-02-28 23:22 | アメリカ映画 | Comments(0)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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