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コトバのない冬 (2008年)

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  じつは、というのもヘンだけれど、わたしはずっと渡部篤郎氏のファンだった。
偶然つけた昼ドラで熱演する、渡部氏の演技に魅せられたのがはじめ。それからしばしの空白のあと、1996年『スワロウテイル』を劇場で観ていたとき、「この飄々とした個性派はどこかでみた!」と、しばらく自分の記憶と闘って、ようやく昼ドラの俳優と思い出したのだった。

古くは『橋のない川』から、2003年の『最後の恋,初めての恋』あたりまでは、コンスタントに出演作品を見続けてきたのだったが、ぱっとした作品の出演が激減してからは、ぽつりぽつりと出演作品を観るに留まっていた。
主演作はTV映画『巷説百物語』あたりまでしか知らない。

本作は、そんな渡部篤郎氏が、初監督した長編作品。製作年2008年とあるが、実際撮影されたのはその4年前、2004年なのだとか。


 北海道の小さな町、由仁(ゆに)町。馬の世話をしながら、父親と単調な毎日を送る黒川冬沙子。ある日、彼女はコトバの話せない男と出会い、いつしか2人は惹かれ合う。しかし、牧場で落馬事故に遭った冬沙子は、軽い後遺症で最近の記憶を失ってしまうのだった・・・。
男は、パタリと姿を見せなくなった冬沙子に、ただだまって心痛める。彼女のほうも、東京にいる恋人が久しぶりに戻り、男との記憶を失ったまま、恋人のプロポーズを受けてしまう・・・。


 説明を極力排した、ワンシーンワンカットの意欲作。手持ちカメラで撮られた映像は、手ぶれが多いけれど、北海道のグレーの冬にある素朴な美しさが、しっかり捉えられていた。
『橋のない川』以来何度も共演してきた高岡早紀との相性がよく、存在感ある冬沙子役は魅力だった。

コトバはなくても、どこかで通じあったふたり。こころのどこかに、わだかまりとひっかかりの予感を感じて、冬空に佇みつづける冬沙子のシーンが好きだった。
大切な出会いをしたのに、事故でそのことを忘れてしまった彼女は、男と出会った場所でなぜだか胸がざわめく。
もし、事故がなければ、男との別の未来が待っていただろうか。。それはわからない。
コトバがなくても通じ合えたなにかを、そしてその大事ななにかを失ったことさえ気づけない切なさを、想像力フルにして想うとき、小粒な小品とばかにできないような、深い悲しみ出会えるのかもしれない。


 とにもかくにも、出演陣が魅力的だ! 広田レオナ、北見敏之、未希、鈴木一真、渡辺えり――渡部篤郎の出演作を観てきた方なら、きっとピンとくる面々が揃っている。
高岡早紀の父親役・北見敏之さんなんかとくにいいのだ。故郷を離れる娘のまえで泣き笑いするのだけれど、こういうのを名演と呼ぶのだろう。作品の大小なんて関係ない。
それから、広田レオナさんも大好きな女優さん。『heat after dark ヒート・アフター・ダーク』が懐かしい鈴木一真は、冬沙子の東京の恋人を演じている。

もともと4時間の大作となるところを、編集で94分になったのだとか。
小さな小さな作品なのに、いくら渡部篤郎に思い入れがあるとはいえ、簡単に語っておしまいにならないところが不思議な魅力だ。4時間バージョンがあって、時間もあったら、一度くらい身を委ねてみたいな、、と思わなくもない作品だった。
もうすこし主張があれば、もっとよかったのに。

男(渡部)が働いている冬の遊園地の情景が印象に残る。
あれはどこの遊園地だろう。ほぼ夕張で撮影が行われたらしいから、<石炭の歴史村>あたりか。
夜、雪に閉ざされたメリーゴーランドに灯りが燈されているシーンなど、よくありがちと言えそうだがとても幻想なシーンだ。
by haru733 | 2011-06-15 22:53 | 日本映画 | Comments(0)


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