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許されざる者 (1992年)

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ことし81歳となるクリント・イーストウッド。
わたしが子どもだった頃から、50代のすでに枯れはじめたおじ様だったイーストウッドが、こんな長生きして根っからの映画監督になるなんて、思ってもいなかった。
『ダーティー・ハリー』シリーズがダンディーで大好きだったのも、いまは昔。最新作はあまり観ていない。

ソツがなく、巧すぎるほどうまく、観客が望むとおりの物を見せてくれる。世間では名匠と呼ばれているけれど(評判もすこぶるいい)、わたしの食指がなかなか動かないのはイーストウッド節に少し食傷気味なのかもしれない。

それでも、本作は、ほんとうにおもしろかった。悲願のアカデミー賞を受賞している。
十八番の西部劇、アウトローな人々の見事な人間ドラマ。ヒューマニズムに留まらない、適度なユーモアがこころを捉えた。
じつは、半分ほど観た監督作のなかで、『スペース カウボーイ』がけっこう好きなのだった。老体ギャグに表れたユーモアがすごく好きだったのだ。
真面目な作品ばかり撮っているけれど、もっと娯楽作品を手掛けてほしかったと思うのは、わたしだけだろうか。
本編でのモーガン・フリーマンとの掛けあいは、絶品。


とりあえず、内容にも触れなければ。

 舞台は1880年、ワイオミング。列車強盗や殺人で悪名を轟かせていたウィリアム・マニーも、いまでは銃を捨て、3年前に妻に先立たれてから、子供二人と農場を営みながら、貧しくも静かに暮らしていた。そんなマニーのもとにキッドという若いガンマンが訪ねてくる。彼は娼婦フィッツジェラルドに重傷を負わせた2人のカウボーイを倒して、一千ドルの賞金を得ようとして考えていた。一緒に組もうと誘われたマニーは11年ぶりに銃を手にするが…。


かつて悪人だったマニー(イーストウッド)と若造のキッド、そこに元相棒のローガン(モーガン・フリーマン)が加わり、3人は賞金を求めて町へ向かう。
アメリカン・ニューシネマを思い出させる虚無感、挫かれる鬱屈したものが静謐に描かれる。ニューシネマを想ったのは、大好きな『スケアクロウ』のジーン・ハックマンが、曲者の保安官役を熱演していたからかもしれないが、そこはかとない哀愁が心地よい。

女たちの描かれ方は、ウエスタンそのものという感じだ。男気映画のなかで映える、女たちの悲哀が物語に花を添える。
しかし、やはり主人公は男たち。イギリスから来た伝説的殺し屋イングリッシュ・ボブ(リチャード・ハリス)など、魅力的すぎる人物が目を逸らせない。

亡き妻と出会って、過去の暴力を封印していたマニーが、なぜまた銃を持って人を殺し、これからどうして子どもたちとのふつうの暮らしに戻っていけるのか・・・・多少疑問に思わなくもないが、これが西部劇のダンディズムというものだろう。


 
by haru733 | 2011-06-05 16:44 | アメリカ映画 | Comments(0)


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by haru733

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