『卍』 谷崎潤一郎 

d0235336_14265179.jpg 『細雪』『春琴抄』につづいて手にとる谷崎潤一郎作品。一貫しているのはエロチシズムと甘美さ。DVDの表紙から抱いてきたイメージの、あからさまな描写はひとつもなくて、それゆえに想像力掻き立てられる作品だった。

小悪魔的な光子の虜となり、同性愛の関係に溺れた園子。さらにその夫と、光子を独占しようとする卑劣な綿貫との四つ巴の関係を、園子による上方ことばのモノローグで綴る――。

起こっていることは至極浅ましいというのに、うわべがあまりに上品なもので、嫌悪を感じるひまもなく官能的マゾヒズムの世界に魅せられてしまった。
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どこまでも堕ちていく4人を称して、タイトルの『卍』とは、言いえて妙。特に園子の夫などは、当初の紳士然とした姿からは想像もできないほど光子にのめりこんで人が違ってしまうのだからおもしろい。男たちに比べたら、女の執念や所業はぶれることなく凄まじいものがある。
倦怠のなか、とうぜん行く末は破滅オンリー。ただただ、言葉だけが美しく品を保ったまま、節操のない4人は堕ちるところまで堕ちてしまう。。
ひとり生き残った園子が、これからも抱え続けるだろう疑惑と煩悶をおもうと、結末の見事さに唸ってしまった。

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ただし、生きているからこそ、どうとでも言える――という話もあって、それはそれで大きく捉え方が裏返ってしまう。果たしてどこまで深読みすればいいのだろう。

幾度か映像化されてきものは、どれもまだ未見。DVDの表紙がすごい樋口可南子バージョン、もしくは、1964年版の若尾文子のほうを、いつか手にとってみよう。
ちなみに文庫にはいろんな装丁があって素敵。新潮文庫のがいいなー。素敵な装丁も、本棚に入れると見えなくなってしまうけど。
わたしは「昭和文学全集1」に収録されたものを、重くて常に寝そべりながら読んでしまった。
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by haru733 | 2012-03-11 12:27 | | Comments(2)
Commented by 荻々亭主人 at 2012-03-11 23:33 x
ああ、谷崎潤一郎いいですね。次はどこに進むのでしょうか?短編の「吉野葛」「蘆刈」、それとも長編で「細雪」、あるいは谷崎の遺書代わりになる傑作と小林秀雄が評した「瘋癲老人日記」でしょうか?

谷崎潤一郎の世界は多様で奥深いので、命綱をつけてから読み進めて下さい、なんて♪

(*^ー゜)vPEACE!!!
Commented by haru733 at 2012-03-13 08:29
谷崎潤一郎、おもしろいですねー
次は手元にある『陰翳礼讃』か『瘋癲老人日記』、『吉野葛』『蘆刈』あたりです。
『細雪』は最初に読みました。市川崑監督の映画化された『細雪』がとても好きだったりします。

命綱、必要ですか(笑) 『痴人の愛』や『鍵』も映画になってるし、谷崎潤一郎原作って思った以上に多いんですねー
気ほつけます。


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