月世界旅行 (1902年) / メリエスの素晴らしき映像魔術 (2011年)

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 『月世界旅行』

 ずっと観たかった、映画創成期、史上初のSF作品。魔術師メリエスによるわずか16分のフィルムで、彩色バージョンがスペインで発見されてから長い期間を経て修復され、現代に蘇った名作。

大砲で打ち上げられたロケットが月に到達(突き刺さる)。探検隊は月面人と出会い戦闘を繰り広げるが囚われてしまう。しかし、まんまと脱走に成功した面々は、地球の大海原に見事帰還して群衆の大歓迎を受けるのだった―。

H・G・ウェルズの原作を元に、宇宙旅行など夢のまた夢だった時代、空想力のチカラだけで作り上げたこのシュールな映像世界は、たまらなく魅惑的。
どんなに映像技術が発展しても、二度と作り出すことのできない永久の名作。
単色カラー作品に、『ナポレオン』(1927)というのがあったけれど、フィルムのひとコマひとコマに色を塗った作品を観るのはこれが初めて。昨年同時上映された『メリエスの素晴らしき映像魔術』では、彩色工場の光景も見ることができるので感慨深い。できれば、モノクロのオリジナル版も観ておきたい。

大好きなカレル・ゼマン(1910~1989)作品を思い出したのだけれど、映画創成期に生まれた彼が、いかにSF世界を愛し刺激を受けてきたか垣間見た気がして、うれしくなった。


『メリエスの素晴らしき映像魔術』  セルジュ・ブロンベルグ、エリック・ランジュfilm
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 キネマトグラフのはじまりを丁寧に紹介する、ファンにはうれしいドキュメンタリー。
2001年に偶然発見されたSF映画の原点『月世界旅行』カラーバージョンの修復作業の模様とともに、メリエスの映画魔術に魅せられた映画人へのインタビューを通して、今なお色褪せないその魅力に迫る―。

『月世界旅行』を誕生させたジョルジュ・メリエスの躍進的な活躍と、やがて写実作品に押されて衰退していくその末路。
偶然発見されたカラー版『月世界旅行』の修復作業をベースに、当時の撮影技術やスタジオの再現などをとおして、映画生まれたて時代に想いを馳せる好編。

インタビューを受ける映画人には、コスタ=ガヴラス、ジャン=ピエール・ジュネ、ミシェル・ゴンドリーなど、敬愛するフランス人監督が登場してわくわくした。せんじつの『アーティスト』が記憶に新しいミシェル・アザナヴィシウスもいる。なぜかトム・ハンクスも。
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1885年、フランスのリュミエール兄妹が発明したシネマトグラフに目をつけたメリエスは、当時有名な手品師だった。
500本に及ぶ作品を撮り、第一線で活躍してきた彼は、けれど映画が一大産業となる頃から、衰退の一途を辿る....。
引退後、玩具屋を営む落ちぶれたメリエスの姿を描いたのが、去年、同時期に劇場公開となったマーティン・スコセッシ監督による『ヒューゴの不思議な発明』だ。
『ヒューゴ―』は、映像が美しく、登場する小道具が魅力的で、機械仕掛けのロボットなどかなりステキだったのだけれど、内容はイマイチで、“映画”を描いているのにほとんどワクワクすることがなかった。
映像挿入される、懐かしのロイドやキートンやチャップリンの勇姿には心胸躍っても、大作特有の不感症はいかんともしがたいこのごろ....。

ちなみに、『月世界旅行』『メリエスの素晴らしき映像魔術』はDVDに同時収録ちゅう。
映画愛と叫ばれる『アーティスト』より、何倍も多くワクワクした。             (63min)
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by haru733 | 2013-02-06 00:00 | フランス映画 | Comments(0)


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