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ケンタとジュンとカヨちゃんの国 (2009年) もう戻る場所なんてないよ 

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 過去に闇を抱えた人々をおおく描く大森立嗣監督の長編第二作目。居場所のない閉塞感を抱えた3人の若者が、救いの見えない逃避行を繰り広げる青春ロード・ムービー。

街でナンパに励むケンタ(松田翔太)とジュン(高良健吾)が出会ったのは、ブスな女の子カヨちゃん。寂しい夜を2人と過ごして、すっかりジュンを好きになったカヨちゃんは、どんなに邪険にされても等閑にされてもめげることなく、男二人の逃避行にまで勝手に付いていくのでした。(途中で捨てられちゃうけど)

施設で育ったからといって、皆がみんなケンタやジュンのように鬱屈していくわけではないのです、きっと。同じ境遇にあっても、幸せになれる人はいる。だから彼らの逃避行を手放しでは共感できないけれど、ふたりの心根には優しさがあって、保護者のように見守らずにいれないのでした。

「ブス、ブス」って連呼されるほどには全然ブスじゃないカヨちゃんを演じたのは安藤サクラちゃん。それどころか、彼女からにじみ出る情の深さや包容力は瞠目。母性に飢えて大きくなったケンタとジュンは、いつしか彼女の懐の深さに安息を覚える日さえくるのですが.....滅茶苦茶やって逃げてきたふたりの破滅はもう誰にも止められない....。
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少し長くなるけれど、ずいぶん以前に読んで面白いなとおもった『現代・日本・映画』(田中英司・著)という本のコラムを引用してみます。

海にたどりつく映画

映画を見ていて、終わりのほうになるにしたがって、それが気に入った映画であればあるほど、頼むから海はやめてくれえぇぇと叫びたい気持ちになる。で、これがまた意外と、その願いが通じなかったりするのである。
(中略) 昔の自主映画などの多くがそうだったし、最近の学生映画のストーリーなどを聞いたりしても、ラストはだいたい海とか、山とか、広々としたところへ行って、なんとなく解脱したような感じで終わりとなるのである。(中略)昔から幾度となくみんながやってるんだからヤメにしなよ、といいたいのである。そしてまた、タチが悪いのは、海でクライマックス及びラストシーンを迎えた映画はどういうわけか面白かったりするのである。
(中略) これはいったいどういうことなのだろうかと考えるに、海とはエネルギーが放出しまくって、どうにもおさまりのつかなくなった映画を無理矢理「強制終了」するための便利な道具なのではないか、と私は思うようになってきたのである。
いうまでもなく、走っている人間は海にたどり着いたところで走るのを止めさせられてしまうわけであり、海が出てくれば、まあ物語も終わりだわな、と観客も納得することになるだろう。ゆえに、エネルギーに満ちた映画であればあるほど、海による強制終了が行われるのはこれからも続いてゆくのかも知れないが、それにしたって他にもっとあるはずだろうがよ、という私の思いはくすぶりつづけてしまうのである。


成る程、このコラムを読んでからというもの、海で結末を迎える映画に出会うたび、また来たかとがっかりしたような、くすぐったいような気持ちになります。そう、本編の行き着く先もまた、北海道網走の海。
彼らの旅の目的は、施設でいっしょに育ったケンタの兄ちゃん、優しかったカズ(宮崎将)に会うことでした。カズは、境遇にも職場のイジメに耐え切れず、いつしかブチンと切れて、いまでは網走の塀の中。
あれほど慕ってきたカズに会えれば変わると信じた希望や救いは、結局何処にも見当たらなくて、光の見えない闇を疾走した彼らが辿り着く情景はステレオタイプであるけれど、その場に居て似つかわしい北の海での寂しい幕切れ。

「三人なら、生きられる。」チラシのコピーは、きっと、ケンタとジュンとカヨちゃんのことであり、子どもだった、かつてのカズとケンタとジュンのことでもあった。孤独な少年たちの人生は線香花火のように激しく脆く儚く散った。

(131min)
by haru733 | 2013-12-26 19:40 | 日本映画 | Comments(0)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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