サンタ・サングレ/聖なる血 (1989年) 聖と俗の極みの混沌で人間を見つめる

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 年に数回あるかないかほど、嬉しくて小躍りしたくなるような作品に出会う。どこまでも、ある種の陽気な音楽が付きまとい、聖であり、俗っぽい。目を覆いたくなるような場面さえ、そこに真理がある気がして目を逸らせなかった。
(あらすじ) 繊細で感受性豊かな少年フェニックスは、サーカスの団長オルゴと、ブランコ乗りコンチャの間に生まれ、“刺青女”の養女アルマにほのかな思慕を抱いている。ある日、狂信的な宗教家である母コンチャは、夫の浮気現場を発見し硫酸を浴びせるが、これに激怒した夫は彼女の両腕を切断し自らも喉をかっ切って死ぬ。その一部始終を目撃したフェニックスは、ショックの余り精神を病んで、施設に収容されてしまうのだった。数年後、成長し青年となった彼は、病んだ精神を母の狂気に操られて、女すべてへの復讐を殺人として繰り返すようになるのだが―。
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少年期と青年期のフェニックスを演じるのは、ホドロフスキーの実の息子たち。文句の付けどころのない演技は、血なのか素晴らしい!とくに青年期を演じるアクセル・ホドロフスキーの魅力は抜群だった。手元にあるコラムニストさんの解説が、言い得て妙なのでひとつ。

狂気とエレガンスを見事に体現している。

これほどグロテスクな作品なのに、驚くほどエレガンスな主人公なのだ。両手を失った狂信的な母親に操られ、生贄のようになりながらも、そこから逃れるべくもがく精神の闘いを描く。
たしかに血みどろで、エロティックで、おぞましいけれど、そこにこそ真の人間の姿があるとわたしには思える。いつまでも廃れてほしくない。
欧米人が母性を描くとえてしてこうなるのか、純粋なフェニックスを操る母親の姿がものすごい。≪両腕のない聖なる血を流す少女像≫を狂信する母。自らがその少女と同じ姿になってしまうあたり、預言めいていて恐ろしい。
ホドロフスキー監督は、『ホーリー・マウンテン』で父性イエスを、『サンタ・サングレ』で母性マリアを描いたと見るのはどうだろう。はじめて観客の為に撮ったという本編は、『ホーリー・マウンテン』よりずっとわかりやすく、文句の付けどころのない愛おしい作品だった。
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最後に、先ほどのコラムニストさんの一文を再度拝借すると。

血みどろ血まみれの中から、ちゃんと、心のダイヤモンドを探し当てている―

こんなにおぞましい映画なのに、ラストではあったかく切ない気持ちになって、人間賛歌であったことを思い知らされる。なんといっても、少年の頃から互いに慕いあったフェニックスとアルマとの関係が珠玉。
両親が引き起こした惨事で精神を病み、母親の両手として洗脳され動くうちに、己を見失ったフェニックスは、変わらない純真なアルマに再会し、自分自身を取り戻していく――その終盤が素晴らしい。あまりにステキな二人の関係が、血や狂気と並んであることが尊い。聖も俗はいつも限りなく近くにあるのだ。


監督/ アレハンドロ・ホドロフスキー
脚本/ アレハンドロ・ホドロフスキー  ロベルト・レオーニ  クラウディオ・アルジェント
撮影/ ダニエル・ナンヌッツィ
音楽/ サイモン・ボスウェル
出演/ アクセル・ホドロフスキー  ブランカ・グエッラ  ガイ・ストックウェル 
 サブリナ・デニソン  セルマ・ティゾー

(カラー/122分)

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by haru733 | 2009-11-14 00:00 | イタリア映画 | Comments(0)


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