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ラースと、その彼女 (2007年)

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 小さな田舎町を舞台に、等身大のリアルドールを本物の彼女と思い込んでしまった心病む青年と、当惑しながらも優しい眼差しを向ける周囲の人々との、ほほえましい交流を切なくも温かに綴るハートフルコメディ―。 (allcinema)


 精神病が増加する現代、ラースのように病を癒していけたら、幸せでしょう。
小さな町のみんなは、戸惑いながら、笑いをこらえつつも、彼の妄想をちゃんと認めてあげるのでした。
リアルドールの“ビアンカ”を、本物の女性のように扱う優しさは、彼のこころを徐々に解かしていきます。
両親に先立たれたラース兄弟の過去に、すこしずつ分け入っていくと、そこにはちゃんと理由があるのでした・・・。

クスッとくるユーモアの数々と、リアルドールがいるシュールな画面が、じつに楽しい。
ラース役のライアン・ゴズリングは、いい役者さんになったなぁと思います。
変わり者の繊細な青年を通じて、人同士の繋がりの素晴らしさや、可能性や、深層心理の不思議に出会えていく、あったか巧いストーリー。
クレイグ・ギレスピー監督に次回作ができたら、きっと見ると思う。




 †       †       †



監督/ クレイグ・ギレスピー

(カラー/106min)
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by haru733 | 2011-06-26 07:08 | アメリカ映画 | Comments(0)

サンシャイン2057 (2007年)

 太陽の死滅が近づき、存亡の危機を迎えた人類。最後の希望を託され宇宙船に乗り込んだ乗組員8名の、壮絶な運命をスリリングかつミステリアスに綴る――。

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さすが、ダニー・ボイル監督のSFは一筋縄ではいかない。
ハリウッドでありがちな、自己犠牲のお涙ちょうだいとは、一線を画すシュールさだ。彼らが乗る宇宙船の名は“イカロス2号”。 ギリシャ神話に登場するイカロスは、父ダイダロスの忠告に背き、太陽に近づきすぎたために、蝋でとめた羽を失って青海原に落ちたという。
神に近づくような、神秘的で精神的世界観をもつ本作も、ボイル監督の手にかかれば、説教くささのかけらもない娯楽スペクタクルに仕上がるのだった。

核装置のペイロードを搭載した船は、8人のエキスパートを乗せて太陽に向かう途上、7年前に同じミッションに向かったまま消息を絶ったイカロス1号の救難信号を受信する。7年前、いったいなにが起こったのか・・・サスペンスフルな展開が幕をあける。
命がけの任務に、さらなる問題と危機が彼らを襲い、ひとりまたひとりと命を落としていくのは定石どおりなのだが、ちっとも湿っぽくならないのが一番の魅力。淡々シビアなドラマと、上等な映像表現と、テンポの早いボイル節はクセになるかもしれない。太陽という超高温と、宇宙空間という超低温、どちらに転んでもおそろしい極限下での死闘は手放しで楽しめる。
太陽に近づくことによって乗組員たちは畏れを抱いていく。太陽と神を近づけて考えることはないとしても、その微かな変化でも地球上で人類は生きていけない、依存度の高さを再認識させられてしまうことまちがいなし。

これから数十年にわたって、太陽の活動はどうやら弱まるらしい。地球の天候に変化が起こり、気温低下によって地球はミニ氷河期に突入するというのだ。太陽の大切さを噛みしめる未来は、すぐそこに迫っているのかもしれない。

†      †     †

(カラー/108min)

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by haru733 | 2011-06-25 20:20 | アメリカ映画 | Comments(0)

127時間 (2010年)

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『スラムドッグ$ミリアネア』のダニー・ボイル監督最新作。パワフルでスリリングに、生きていることの素晴らしさを謳い、絶妙な音楽とユーモアセンスで、映画の醍醐味をいつも実感させてくれる、ボイル作品は大好きだ。

当時27歳だった青年登山家アーロン・ラルストンによる、ノンフィクションの原作を映画化。彼は庭のように慣れ親しんだブルー・ジョン・キャニオンで、この日、アクシデントに遭遇する。大きな落石に右腕を挟まれ、谷底で身動きがとれなくなってしまったのだ。
荒野のど真ん中、誰にも行く先を告げていない絶望的な状況で、いかにして彼は精神と肉体の限界から抜け出し生還したのか・・・臨場感いっぱいに描き出す――。

ジェームズ・フランコ演じるアーロンが魅力的である、その効果も大きいけれど、回想シーン以外ほぼ一人芝居となる90分、飽きることなくハラハラドキドキの連続だ。自然を満喫する人生を謳歌していたアーロンが、窮地に陥ってはじめて後悔するのは、いつも自分を支えてくれていた身近な家族や友人を、なおざりにしてきたことだった。渓谷へ来ることを誰にも告げていない彼を、探してくれる人はひとりもいない。

谷底で思い出すのは、家族や友人たちとの楽しかった日々。水が底をつき、ついに幻覚をみるようになっても、表れるは大切な人たちとの、かけがえなかった日々の場面ばかりだ。

人間は生かされている、そうひしと感じて、胸があつくなってくる。平凡な日常はずっと続いていく気がするけれど、それはたんなる思いあがりで、いついかなる場面で、当たり前でなくなる日がやってくるかわからない。
本来、人生って、そんな危うさのなかで、なんとかバランスを取りながら存在する、ただそれだけのものなのだろう。だからこそ、いまを大切に、人生を謳歌しよう、生きているって素晴らしい! そんなふうにぐいぐい導いていくボイル作品には、素直に心打たれてしまう。
それでいて、説教くささの欠片もないことが、この監督の最大の魅力だ。

いつ谷底に落ちるのか、いったいどうやって腕を・・・・? 当然くるべき決断の場面へと突き進む間じゅう観客はびくびくしてしまう、息つく暇のないエンタテイメント作品となっている。
持つべきものは、強靭なこころと肉体、知恵と知識とユーモア、そして自然を畏怖するこころ。山登りするなら、心得ておこう。そして家族にちゃんと行き先を告げていくことも、忘れないようにしなければ。



†    †    †


監督/ ダニー・ボイル
原作/ アーロン・ラルストン 『奇跡の6日間』
脚本/ ダニー・ボイル  サイモン・ボーフォイ
音楽/ A・R・ラフマーン
出演/ ジェームズ・フランコ  アンバー・タンブリン  ケイト・マーラ

(カラー/94min/アメリカ=イギリス)
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by haru733 | 2011-06-22 16:41 | アメリカ映画 | Comments(0)

キャタピラー (2010年)

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 四肢をなくし、顔は焼けただれ、耳も言葉も不自由となって戻ってきた夫を、献身的に世話するよりほかない妻の苦しみと、軍神とされたばかりに、己の醜さとの狭間で苦悶する夫の姿を描く――。

劇場公開されていたころ、わたしはミニシアターで受付ボランティアをしていて、お客の入りがよかったことと、期待に反して低評価だったことを覚えている。DVDになって自分の目で確かめた感想は、やはり良くない。寺島しのぶという女優がいなければ見られない、きっと彼女以外に演じれない、そんな作品。
軍神となって戻った夫は、食う、寝る、性欲を満たす、それだけ。妻の苦しみは募り、仕返しのように、軍服に身を包んだ夫を引き車に乗せて、外へ連れだす。通りすがりの村人たちは、"軍神様"だと彼を崇む。
神となった現実との狭間で苦しむ夫の自責の念は自業自得だ。彼は戦場で女を犯し殺した。帰還してからも、妻を性のはけ口としか見ない卑劣な男なのだ。食う、寝る、「やりたい」それだけ。自らの醜さと、戦場で犯した罪に激しく嫌悪して死を選ぶことも、行く末当然と思えるほど。

もとはポルノが専門だったらしい若松孝二監督の目の付けどころは、やはりポルノか。虚無感や不条理を描くなら、もっと別の視点がいくらでもあるなかで、人間のエグイもの見たさを利用した感のある本作は、不快な後味を持っている。
それにしても、戦争を経験した監督なのに、画をうそっぽく感じてしまったのは低予算ゆえだろうか。期待以上に揺さぶられるものがなかった。原作は江戸川乱歩の短編『芋虫』、怪奇小説を反戦映画に結びつけると多少筋が違ってしまう気がする。                                    (カラー/84min)                        

  ____________

 
 さいきんになって原作を読んだので追記を。
サディスティックでグロテスクな原作は、作家自身が言ったように反戦を意図したものではなかった。夫は、さいごまで人間性を留めたひとりの哀れな軍人で、そんな不具の夫を苛める快楽に溺れていく妻を耽美に描いたのが「芋虫」なのだった。悪趣味だけれどすばらしくおもしろかった。
食欲と情欲しかもたない映画の卑劣な夫像はここにはいない。健気な妻さえ。。これがエゲツナイ反戦映画になってしまったのだと思うと、やはりいただけない。


(2012,5,12)

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by haru733 | 2011-06-19 18:17 | 日本映画 | Comments(0)

ミックマック (2009年)

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 ジャン=ピエール・ジュネ監督による最新作。ジュネのゴシックな世界観はとても好きだ。キッチュでユーモラスな作品たちは、飽きることがない。

 発砲事件に巻き込まれ、逸れたタマが頭蓋に命中、家も職も失ってしまった男・バジル。彼は、廃品回収をするユニークな仲間たちに出会い、共同生活に温かく迎えられる。ある時、バジルの父を死に追いやった地雷と、自分の頭の銃弾を製造した、2大軍事企業の本社を偶然見つけた彼は、変わった特技を持つ仲間たちとともに、復讐することを決意する――。

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ミックマックとはいたずらのこと。後を絶たない紛争で私腹を肥やす軍事企業を、ぎゃふんといわせるのは、『アメリ』で堪能した、あの遊び心いっぱいのイタズラ。ほのぼのとメルヘンチックでありながら、どこかダークで、セットの細部にまでこだわった造形美が、見た目にたのしい。
ジュネ作品の馴染みの顔である、ドミニク・ピノンやアンドレ・デュソリエ、ヨランド・モローの怪演も見逃せない。

主人公バジルと軟体女カウチュ(ジュリー・フェリエ) の恋模様など、私的には大好きだ。一見、おかしな特技も変人扱いされがちな性格も、見方を変えればステキな個性になっていく。
スラップスティックの賑やかな中に、きっちり紛争の愚かさを描いた、ジュネらしい人生賛歌の物語。

(カラー/105min)
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by haru733 | 2011-06-18 21:42 | フランス映画 | Comments(2)

ミレニアム2 火と戯れる女 (2009年)

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 監督が変わり、よりスリリングにコンパクトになった、『ミレニアム』シリーズの第2話目。
孤高のヒロイン、リスベットの孤独な闘いは激しさを増し、あれよあれよというまの130分。画面が地味とはいえ、そこに味があったりする。
生い立ちを隠してひたすら復讐に命を懸けるリスベットと、彼女の力になりたい雑誌「ミレニアム」の編集長ミカエル。ふたりは、知らず知らずのうちに同じ人物の周辺を探るうち、思いがけない再会を果たすのだが・・・。

背中に大きなドラゴンのタトゥー、鼻ピアス、悪魔のようなメイクに身を包んだ、小柄なリスベットは、悲惨な生い立ちのせいで完全に病んでしまっている。ともすれば、彼女が生身のか弱い女性だということを忘れそうになるけれど、けして不死身ではないのだ。
第2話では、悪い奴らにコテンパンにやられてしまう。殴られ撃たれ、土に埋められ・・・・痛々しくて見てられないほど徹底的に。
そんなとき、唯一駆けつけるミカエルが、けしてハンサムではないのに、守護天使ミカエルなみに頼れる男と見えてくるあたりがおもしろい。最終話が楽しみになった。

ハリウッドでのリメイク版はデヴィッド・フィンチャー監督、ルーニー・マーラ、ダニエル・クレイグが主演だそうだ。来年公開予定。
デヴィッド・フィンチャー監督のサスペンスには定評があるし、美男美女を並べられるとこのオリジナル版は見劣りするに決まっている。。けれども、スウェーデン独特の陰鬱さは、なかなか表現しきれないのではないかな。
ひとつだけ言えるのは、ダニエル・クレイグであれば、ミカエルのすけこましぶりに違和感がない―これはだけはたしかだ。        (スウェーデン=デンマーク=ドイツ合作/130min)
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by haru733 | 2011-06-16 22:21 | 多国合作映画 | Comments(0)

† 2011 よんだ本

  ゴヤ ロス・カプリチョス―寓意に満ちた幻想版画の世界 (雪山 行二)
  エル・スール (アデライダ・ガルシア=モラレス)
  バガヴァッド・ギーター (訳/上村 勝彦)
  イタリア広場 (アントニオ・タブッキ)    
  ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙 (ヨースタイン・ゴルデル)
  子午線を求めて (堀江 敏幸)
  知っておきたい映画監督100 外国映画編 (キネマ旬報/編)
  逃げてゆく愛  (ベルンハルト・シュリンク)
  荒野へ (ジョン・クラカワー)
  ニコライ・ゴーゴリ (ナボコフ)
  火を熾す (ジャック・ロンドン)
  灰と星―オメガ・ポイント三部作 (ジョージ・ゼブロウスキー)
  古寺巡礼 (和辻 哲郎)

  森の生活―ウォールデン (ソロー/神吉 三郎 翻訳)
  男と点と線 (山崎 ナオコーラ)
  庭仕事の愉しみ (ヘッセ)
  私の男 (桜庭 一樹)
  夜想 yaso―特集+耽美
  デミアン (ヘッセ)
  しゃばけ (畠中 恵)
  ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で (ジョン・M. マグレガー)
  黄金時代 (澁澤龍彦)
  雨あがりの朝 (串田 孫一)

  インドの大地で―世俗国家の人間模様 (五島 昭)
  少女 (連城 三紀彦)
  ヴェネツィアの宿 (須賀 敦子)
  恋文 (連城 三紀彦)  
  イラハイ (佐藤 哲也)
  槿 (古井 由吉)
  ぼくが愛したゴウスト (打海 文三)
  激しく、速やかな死 (佐藤亜紀)
  ぬかるんでから (佐藤 哲也)
  3652―伊坂幸太郎エッセイ集 (伊坂 幸太郎)

  沈黙 (遠藤 周作)
  啄木歌集 (石川 啄木)
  彗星問答―私の宇宙文学 (稲垣 足穂)
  知識人99人の死に方 (編集/荒俣 宏)
  蟹工船 (小林 多喜二)
  日本児童文学館/蝗の大旅行 (佐藤 春夫) 
  可愛い女(ひと)・犬を連れた奥さん 他一編  (チェーホフ)
  木立ちの中の日々 (マルグリット・デュラス) 
  夜想〈35〉特集 チェコの魔術的芸術
  いしいしんじのキューバ日記 (いしいしんじ)

  秘見仏記 (いとうせいこう + みうらじゅん)
  ブッダ―大いなる旅路〈1〉輪廻する大地・仏教誕生 ≪再読≫ (高崎 直道)
  人間昆虫記 (手塚 治虫)
  せどり男爵数奇譚 (梶山 季之)
  逆さまゲーム (アントニオ・タブッキ)
  カスハガの世界 (みうら じゅん)
  草かざり (かわしま よう子)
  映画のデザインスケープ (CineLesson編集部+杉原 賢彦/編集)
  道ばたに咲く (かわしま よう子)
  センス・オブ・ワンダー (レイチェル・カーソン)

  転生の秘密 (ジナ・サーミナラ)
  塚本晋也読本 SUPER REMIX VERSION (キネマ旬報社) 
  とんまつりJAPAN (みうら じゅん)
  深淵(上・下)  (大西 巨人)  
  プラネタリウムのふたご (いしいしんじ)
  濹東綺譚 (永井 荷風)
  赤の書 ―The“Red Book” (C・G・ユング)
  シネマ・ストリート (安西 水丸)
  人間失格・桜桃 (太宰 治)
  琥珀枕 (森福 都)

  ベンガルの苦行者 (ラビンドラナート・タゴール)
  タゴール詩集 新編 (訳/山室 静)
  図書館戦争 (有川 浩)
  幻想博物誌 (澁澤 龍彦)
  夢はよみの国から (ジェイムズ・ヒルマン)
  半身棺桶 (山田 風太郎)
   (円地 文子)
  極上掌篇小説 (いしい しんじ、石田 衣良、 伊集院 静、車谷長吉、玄侑宗久、、ほか)
  アブラクサスの祭り (玄侑 宗久)
  魂にメスはいらない (河合 隼雄, 谷川 俊太郎)

  告白録 (竹内 スグル + テレビ東京『比類なき者』プロジェクト)
  南方熊楠 菌類図譜 (編集/ワタリウム美術館 , 解説/萩原 博光)
  晶子曼陀羅 (佐藤 春夫)
  予告された殺人の記録 (G. ガルシア=マルケス)  
  外套・鼻 (ニコライ・ゴーゴリ)
  記号の歴史 (ジョルジュ ジャン)
  江頭2:50のエィガ批評宣言 (江頭2:50)
  テルマエ・ロマエ (1~3巻) (ヤマザキマリ)
  五重塔 (幸田 露伴)
  くちぶえカタログ (松浦 弥太郎)  


   ことし、読んでいる本。

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by haru733 | 2011-06-16 21:58 | | Comments(0)

ファニーゲーム (1997年)

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 不条理に唸って、くやしいほど感情を操られて、暴力の在り方にゾッとさせられてしまう、文句なしのサスペンス。オーストリアの巨匠ミヒャエル・ハネケ氏によるまさに渾身の一作。10年後、監督自身による、細部まで似せたアメリカバージョン『ファニーゲーム U.S.A』が作られています。

とある湖にバカンスにやってきた家族。夫ゲオルグと妻アナ、息子のショルシ、愛犬のロルフィー。やがて別荘に着いた一家のもとに、ペーターと名乗る見知らぬ若者がやって来る。はじめは礼儀正しかったペーターだが、青年パウルが加わり、ふたりは態度を豹変させていく。
ゲオルグの膝をゴルフクラブで打ち砕くと、突然一家の皆殺しを宣言。家族はパウルとペーターによる“ファニーゲーム”の参加者となるのだった―。
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この不愉快さや怖ろしさは、ほんとうに怖い生の感覚。実際の暴力事件もこんなかと思うと、一生関わり合いたくない、切にそう願ってしまう。
理不尽なまで、死に向かって真っ直ぐ突き進んでいくストーリー。犯人のパウルは観客を煽るように、時おり、カメラに向かって話しかけ、ウインクする。
観客は、被害者どころか、望んでもないのに加害者にまでさせられてしまうから悔しい。それはハネケ監督の思うツボ。何から何まで操作させれていることを痛感するだけ。

どうにかして生き延びるために足掻く、家族のひっしの攻防さえ虚しく、救いのない不快と、憤りを越えた虚脱感は、映画史上もっとも最悪な余韻を残したかもしれない。

父親役には、『わが教え子、ヒトラー』『善き人のためのソナタ』のウルリッヒ・ミューエ。2007年に他界してしまったことが惜しまれる方です。

(108min/FUNNY GAMES)
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by haru733 | 2011-06-15 23:31 | オーストリア映画 | Comments(0)

おそいひと (2004年)

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 この映画のコピー「コロスゾ」は、衝撃的だった。
センセーショナルな内容と過激さで、公開を見送られ続けてきた本作は、2007年ついに劇場公開されたけれど、予告だけでド肝をぬかれたのを覚えている。

 電動車椅子で移動し、ボイスマシーンで会話を交わす、重度の身体障害者である住田。ある日、介護者のサポートを受けて一人で暮らしている彼のもとに、卒論のために介護を経験したいという敦子がやってくる。
平穏だった住田の生活は少しずつ変化し、ある敦子の言葉をきっかけについに住田に殺意が芽生える―――。


 住田役を演じている住田雅清氏は、じっさいに重度の障害を抱えながら、阪神障害者解放センター事務局長であり、ライブパフォーマーとしても活躍しているという。
演技と素の境界は、限りなく混沌としていて、役者としてぶつけた常日頃から抱える思いをびんびんとかんじた。

障害者は犯罪を犯さないなんて、そんなことはナンセンスなのだと改めて気づかされる。
わたしたちがどんな目でみようが、怒りの感情も憎しみの感情もなにもかも、健常者と変わるわけがない。
この場合、住田の目線で物事をみるため、何気なく発せられる心のない言葉が、暴力を振るわれたみたいに痛い。
すぐに殴りかかっていけないなら、しわじわ殺意を募らせたってちっとも不自然ではない。
連続殺人のシーンは、おぞましくて怖ろしかった。

怪物園(フリークス)』(1932)という作品があって、わたしは好きだ。
障害をもった人々が役者として出演しているのだけれど、職業としてプライドを持っていることに、観ていてあっぱれだった。
本編も、住田氏が演じたからこそ、その圧力たるやすごかったのだし、画の衝撃もすごく大きくなっている。



 
 監督  柴田剛
 原案  仲悟志
 撮影  高倉雅昭  竹内敦
 出演  住田雅清  とりいまり  堀田直蔵

 (モノクロ/83min)
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by haru733 | 2011-06-15 23:24 | 日本映画 | Comments(0)

映画index ら・わ行

* 作品によっては過去のブログ「行きかふ人も又」へとびます


ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 
LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語
Love  Letter
ライク・サムワン・イン・ラブ

乱暴と待機
ラビット・ホール
ライフ ―いのちをつなぐ物語―
ラガーン
ラースと、その彼女
ラ・ジュテ
ラブリーボーン 
落下の王国 
ラスト、コーション   
ラスト・ショー  
楽日  
ラン・ローラ・ラン
ライムライト
愛人/ラマン  
ラルジャン  
ランド・オブ・ザ・デッド  
ライフ・イズ・ビューティフル  
ライフ・イズ・ミラクル  
ラインの仮橋  
ラングーンを越えて

リトル・ブッダ
陸軍
リリイ・シュシュのすべて
リトル・ランボーズ
リトル・ミス・サンシャイン  
リトルショップ・オブ・ホラーズ 
輪舞  

ル・アーヴルの靴みがき
ルナティック・ラヴ
ルド and クルシ
ルナシー  
ルートヴィヒ  
ルディ 

レ・ミゼラブル
レッドクリフ Part I 
レッドクリフ Part 2 
レッド・イノセンス   
恋愛睡眠のすすめ   
レイクサイド マーダーケース 
レディ・イン・ザ・ウォーター  
レッド・バイオリン
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語  
レター  

ロッキー
LOFT ロフト
ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮
ローマでアモーレ
ロボット
ローズ・イン・タイドランド  
ロイドの牛乳屋 
ロミオとジュリエット   
ローズマリーの赤ちゃん 
ローレライ  
六月の蛇  
ロジャー&ミー  

わたしはロランス
私の男
ワレサ 連帯の男
180°SOUTH/ワンエイティ・サウス
ONCE ダブリンの街角で
私が、生きる肌
悪い種子
ワンダフルライフ
私の叔父さん
わが教え子、ヒトラー
わらの犬
わが青春に悔なし   
若者のすべて   
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明 
若い人  
私が女になった日     
ワルシャワの柔肌  
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ  
惑星ソラリスWATARIDORI 
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by haru733 | 2011-06-15 23:21 | 映画index | Comments(0)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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