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四つのいのち (2010年)

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 台詞の排された、徹底したドキュメンタリータッチのユーモラスで静謐なドラマ。
自然豊かな南イタリアのカラブリア地方。人間、動物、植物、炭――四つのいのちがそれぞれに繋がっていく――。

美しく長閑な光景は、けれど単調さを否めず、ユーモアさえひっそりとしていた。
長回しが眠気を誘う。
このような静かな作品はきらいじゃなくて、ぎゃくに愛してやまないのだけれど、あまりにも静か。

パールフィ・ジョルジ監督のハンガリー映画、『ハックル』にすこしだけ似ているかもしれない。
おなじように森羅万象に与えられたいのちの息づかいがあって、台詞はなく、だけどなにかが起こっている。
淡々としたなかに、ユーモアと毒。因果なものは、ごく自然に隠されている。
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写真のおじいさんは俳優なのかしら。野っぱらでしゃがんで用を足すその顔に、蟻が歩いていく。触覚の鈍ったおじいさんは、しばらく経ってようやく手で払いのけるのだった。このシュールな間といったら。
しかも、ずっとイヤな咳をしていて、毎日教会で一包のお薬をいただいて帰るのが日課。ある日、薬をもらい忘れた晩、静かに天に召されてしまうのだけど、それがなんと、床を掃いた塵を包んだものだというから・・・ダーク。信心深さもなにもかもが、詩的空間のなかに漂っている。
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プロローグとエピローグに配されている、木炭作りの工程がとても興味深い。

(監督・脚本 ミケランジェロ・フランマルティーノ/88min/イタリア=ドイツ=スイス合作)
by haru733 | 2012-03-31 14:50 | 多国合作映画 | Comments(0)

アレクサンドリア (2009年)

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 4世紀末のエジプト、アレクサンドリアに実在した女性天文学者ヒュパティアの、学問に身を捧げた生涯と、急速に台頭してきたキリスト教徒による異教徒迫害の歴史を描いた一大スペクタクル。

キリスト教への改宗を武力で迫る黒い暴徒たちに、科学の街アレクサンドリアは乗っ取られ、反撥する科学者たちも、互いに多くの血を流した。
キリスト教が力を持ち、ユダヤ人が迫害され、女性は表舞台から姿を消した、そういうことの背景がよくみえてくる。後の魔女狩りをした精神なども、ずっと古くから種は撒かれていたのね。
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科学と哲学を重んじて生きたヒュパティアと、かつて彼女の屋敷の奴隷で、想いを寄せ続けた奴隷のダオスは、激動の時代に翻弄されていく。
ヒュパティアが太陽系の謎を解かんとして、当時はまだ異端とされていた地動説を信じ、太陽を廻る惑星の軌道が楕円だと発見するまでが、なかなかドラマチックに描かれていた。さらにドラマチックなのは、彼女を密かに想い続けるダオスの宿命。ダオスは、キリスト教がアレクサンドリアの街を席巻する勢いを目の当たりにして、自由と力を求め、身分違いの恋を諦めて、キリスト教に改宗し修道兵士になる。そんな彼に、終いに与えられるのが、異端者ヒュパティアを殺せという命令なのだ・・・。演じるレイチェル・ワイズとマックス・ミンゲラが役柄によく似合ってステキ。それにしてもレイチェル・ワイズは幾つになっても美しい。

見事に再現された古代の街並や生活の様式が目にたのしかった。キリスト教に限らず、宗教はダークな面を孕んでいて、ここぞと表に出してしまった本作は、欧米でいかばかりの評価を得たのだろう。アンチキリスト作品が増えることは、私的にはいいと思うけれど、アメナーバル監督の意図はもっと大きく、現代にも脈々と続く他宗教へ対する不寛容、これが核となっているそうだ。


 (監督 アレハンドロ・アメナーバル/127min)
by haru733 | 2012-03-31 13:50 | スペイン映画 | Comments(0)

灼熱の魂 (2010年)

 
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 至高のミステリーとして話題を呼び各方面で絶賛された、過酷なエンタテイメント。
『お母さん、あなたが生き続けた理由を教えてください』――母に秘められた過去が、胸を揺さぶる。

 (あらすじ) 初老の中東系カナダ人女性ナワル・マルワンは、ずっと世間に背を向けるようにして生き、双子の子どもたち、ジャンヌとシモンにも心を開くことがなかった。そんな普通とは違った母は、謎めいた遺言と二通の手紙を残してこの世を去る。手紙は、二人が存在すら知らされていなかった兄と父親に宛てられたもので、遺言に導かれ初めて母の祖国の地を踏んだ姉弟は、その数奇な人生と、自らの出生の秘密、家族の宿命にはじめて向き合っていく――。

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宗教や宗派間による対立が火種となった内戦で、母親は何度も命を落としそうになりながら生き延びた。許されない恋というのはどこにでもあるけれど、その恋が、死やそれ以上の悲劇を引き寄せるなんて、わたしには到底理解できない世界。殺し合う宗教って、いったいなんなのだろう。
母親が背を向けたのは、世間だけじゃなく、子どもたちに対してもだった。姉のジャンヌは、いち早く中東の祖国へ兄を探す旅に出るけれど、弟シモンはカナダに留まる。まともではなかった母に反抗していたらしいシモンの態度が、たくさんを物語っている。
母の過去を知らずに育った双子の姉弟たちにしても、長男、父親にしても、驚愕の結末を突き付けられて、それでも生きていかなくてはいけない彼らが気の毒でしかたがない。このわだかまりはそういうところから来ている。果たして母に愛はあったのか・・・それさえわからなくなってしまった。
遺言どおり手紙は届けられ、母親の真意が明かされるラスト。結末に納得して劇場を出たはずなのに、時が経つにつれて、更なるわだかまりを憶えるのも事実。

レバノン出身の劇作家原作らしく、内戦の悲劇を扱った、先のよめないエンタテイメントは、あくまでも娯楽である良質のミステリーだった。回想と現実を行き来しながら、抉られるような痛みと恐怖を味わえる。

(監督・脚本 ドゥニ・ヴィルヌーヴ/131min/カナダ=フランス)
by haru733 | 2012-03-30 23:20 | カナダ映画 | Comments(0)

4月の涙 (2009年)

d0235336_15435343.jpg  1918年4月、内戦末期のフィンランド。敗走を続ける赤衛軍の女性部隊は、捕らえられたあと、ほとんどが犯されて殺された。ただ一人生き延びた隊のリーダーのミーナは、公平な裁判を受けさせようとする理想主義の准士官アーロによって、裁判所へと護送される途中、逃げ出そうと舟から飛び降り、アーロもろとも無人島に漂着してしまう。やがて互いに特別な感情が芽生えた頃、助け出された二人は、人文主義者で有名なエーミル判事のもとに辿り着くのだったが――。

『ククーシュカ』に引き続き、フィンランドを舞台とする戦争もの。時代背景と語り口はまったく違うけれど、こちらもとても好きだ。
使われている音楽の魅力。大好きな『ヘヴン』を思い出す、過酷な状況下での純愛。
信念を貫く女兵士ミーナの生き様が潔いのだが、それ以上に、愛してしまった敵兵ミーナを、情欲を乗り越えて、ひたすらに献身的に救おうと奔走するひとりの若き准士官アーロの居住いに心打たれてしまう。
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戦場ではまともな精神を保つことさえ難しく、見識ある者として知られたエーミル判事さえ、例外ではなかった。有罪判決を下しては処刑を繰り返す毎日に、人間性は崩壊寸前だ。
ところが、アーロとミーナが現れてからというもの、判事はアーロに対して密かに男色家としての思いを募らせ、彼のためにミーナを生かしたまま拘束しておこうとする。
戦場にあっては、肉体を穢されるのは常に女であったけれど(実際前半はそういう展開だった)、本作では、愛する人の命を救うため、アーロが自ら判事に身を任せるという逆転した発想によって、新しい視点が生まれているように思う。異色な究極の愛の形――。それがたとえ、残酷な運命で幕を閉じるとしても・・・・。

フィンランド内戦を伝える良作。見ごたえあるラブストーリーとしても、とてもおすすめです。


 監督  アク・ロウヒミエス
 出演  サムリ・ヴァウラモ、ピヒラ・ヴィータラ、他
 (114min/フィンランド=ドイツ=ギリシャ合作)
by haru733 | 2012-03-25 23:06 | フィンランド映画 | Comments(0)

ベンゴ (2000年)

d0235336_1450457.jpg  (あらすじ) スペイン、アンダルシア地方。年頃の一人娘を亡くした悲しみから、未だに立ち直ることができずにいるカコは、自分を慕う甥ディエゴの面倒をみながら暮らしている。ディエゴの父は、反目するカラバカ家の長男を殺して逃亡、復讐に燃えるカラバカ家はカコの命を狙うのだった――。

フラメンコ発祥の地、アンダルシアを舞台に描かれるエスニックな一作。二つの家族の抗争は、ドラマの体裁を整えているだけで、見どころは兎にも角にもフラメンコの歌と踊りに尽きる。
カコ役のアントニオ・カナーレスは有名なダンサーで、本作では踊っていないけれど、顔をはじめ超絶に濃い存在感を放っていた。

トニー・ガトリフ監督は『ガッジョ・ディーロ』がとても好きだった。いまでもロマン・デュリスのへらっとした笑顔をたまーに思い出してニタッとしてみたり。
ロマの音楽も、フラメンコのリズムも、共通するのはイスラーム音楽ということでいいのだろうか。だからわたしはボリウッド映画が好きなのだろうか。あの音楽、わけもなく惹かれてしまう。本編は魂から響き渡る女性たちの歌声が特に素晴らしかった。
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いくら熱い民族だからといって、家同士の抗争など現実離れしてはいないのか、判断に苦しむものではある。ただ、巻き込まれていく長髪男たちの濃いぃ男気は、珍しさが先に出ておもしろくてしかたがなかった。

味わい深いのは、カコと障害者である甥っ子ディエゴとの関係。ふたりは堅い信頼関係で結ばれていて、障害があるとはいっても人生を謳歌しているディエゴの保護者として、カコは適任なのだ。そして、娘を失った喪失からカコ引きずり上げるのもまた、純粋なディエゴの存在なのだった。まっとうに生きようと望むカコの人間性が、本作ではとてもいい味わいを醸すのだった。

d0235336_14502348.jpgこれだけ濃い作品を世に送り出すトニー・ガトリフ監督、きっとご自身も然りだろうと検索してみた。ビンゴ、やはりさすがロマの血を引いているだけあって、いい顔をしています。
『モンド』『僕のスウィング』『トランシルヴァニア』、この監督、観たい作品がいっぱい。


監督・脚本  トニーガトリフ
出演  アントニオ・カナーレス,オレステス・ビリャサン・ロドリゲス,他
(89min/スペイン=フランス合作)
by haru733 | 2012-03-25 18:18 | スペイン映画 | Comments(0)

冬山 藻岩 *

 春間近の藻岩山へふたたび出かけてきました。ざくざく解けはじめた雪を踏みしめて、頂上の展望スペースまで、息切らしながら。

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今回はパノラマを駆使して、見晴らしのよい眺望をおとどけ。こちらは市内方面。左の円いお山は円山で、中央より右へ真っ直ぐはしるラインは豊平川。

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背面には、これから登りたくなるであろう恵庭岳や札幌岳や樽前山が立派に聳えています。
銀嶺と、幾層にも連なる山の起伏がきれい。

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リニューアルされた真新しい展望ラウンジへはじめて足を踏み入れると、暖かで、小ざっぱりとしていて、登山客には場違いなレストランが完備されているのでした。

同階には、3Dシアター「スターホール」があり、今回は、楽しみにしていた大平貴之氏設計によるプラネタリウムを観て帰りました。
チケット買って、期待しながらなかへ入ると、思いがけない小さな部屋。寝心地のいいカウチが数え切れる程度に配置されていて、こじんまりした星空を眺めながら、わずか20分の間にうとうと・・・。

ロープウェイとケーブルカーを乗り継いだ観光客がにわかに増え始めたお昼頃、わたしたちは下山の途につきました。
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動物の足跡はふんだんにあるのに、姿は見えません。朝夕の時間帯ならひょっこり顔出してくれるのだろうか。

甲高い声で啼く鳥にカメラを向けていると、通りすがりのおじさんが「ヒヨドリ」と教えてくれました。
狩猟鳥に指定されているありふれた鳥、だとしても出会うとうれしい。

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探せばいたるところに見られるヤドリギが、愛嬌あってかわいらしかった。枝ばかりのなかで、葉を落とさずに冬を越す灌木は存在感抜群。


今回はお友だちと一緒。ひとりもいいけれど、仲間と登るのは笑いながらでよりたのしいのでした。雪解けが終わる5月までに、持久力よカムバック。エレベーターとエスカレーターを階段に替えて、身を軽くして春を待ちます。
by haru733 | 2012-03-24 07:43 | | Comments(2)

港の見える丘

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 葬儀のまえに落ち着かなくて、居所をなくしては、表の空気を吸いに出た。
いまはない、母の生家の跡を訪ねると、港の望める丘の上だった。むかしの灯台が、わずかにその面影を残しているばかり。
日曜の午後の、穏やかな海。太平洋はどの季節に来ても寒々しているね。週末だから、どこも軒並み店じまいしていて、シンと静かな母の郷里。
by haru733 | 2012-03-19 22:26 | おでかけ | Comments(0)

うかず沈まず

 休日の早朝の電話。しぶしぶ起きて取ると、母からの親類の訃報を報せる内容だった。通夜は明日だという。思いがけず、一年ぶりの帰省が決まって、きょうは一日、そわそわと準備をして過ぎてしまう。
そんなことで疲れて、あいまにソファに寝転びながら、堀江敏幸の『おぱらばん』の続きを読んでいたらおもしろくて、終いのほうまで頁をめくる手が止まらなかった。この方、いつかの『子午線を求めて』も、とてもおもしろかった。イタリア文学の息吹を味わえる須賀敦子さんの随筆、フランス文学には堀江敏幸さんという随筆家があるのだなぁ。素敵だ。

まだ陽の高いうち、急に入り様となったものを求めて外出したついでに、近所の古本屋さんをのぞいてみた。マンガのコーナーに懐かしいものを発見。ついつい贖って帰ってしまう。
十代のころ愛読していた富塚真弓さんのマンガ。すごく大好きだったので次の頁のシーンや台詞まで、憶えていたりする。
d0235336_19543367.jpg富塚さんは北海道に住まう漫画家さんだった。物語にはよく、ポプラや植物園や有名な公園の名前なんかが登場して、あのころはまだ札幌に住んでいなかったわたしも、この街に仄かな憧れをいだいていたっけ。そんなむかしの気持まで思い出して、懐かしい。
こういう純粋な恋愛マンガを、現代の若者はどう感じるのかと、娘に読ませてみたら、今のもののほうがよい――というつれない一言。さすがに時代を経ると古くさくなってしまうのか、すこし淋しい。

さて、そろそろ帰省の旅に出なければ。道東への高速道路が開通して、あっという間に着くというドライブに。通夜の行われる、広尾という海辺の小さな町にも、思い出がある。
明日、時間があったら、寒々した浜を歩くことができるといいのだけれど。
by haru733 | 2012-03-17 19:37 | 日常 | Comments(0)

フェイ・ダナウェイ

d0235336_212524.jpg ぐうぜん観たフェイ・ダナウェイ繋がりで、おもうこと。30年代LAを舞台にしたハードボイルド映画の傑作、『チャイナタウン』 (1974年)から。

 私立探偵ギテス(ジャック・ニコルソン)の元を訪れた女がミセス・モーレイの名をかたって罠を仕掛けた。その後、本物の夫人(ダナウェイ)が現れた矢先、ダム建設技師の彼女の夫が溺死体で発見される。ギテスは、事件の背景に町を牛耳る彼女の父親(ジョン・ヒューストン)がいるのを嗅ぎつけるのだが――。

ポランスキー作品は、本編も合わせて、むかしのほうがおもしろかった。(最新作『おとなのけんか』はかなり食指が動くけれど)
探偵ものとしては王道をいきながら、アメリンカン・ニューシネマな雰囲気と哀愁の宝庫。ポランスキーらしいシャレたカットに、仄かなユーモア、きちんと留めを刺してくれる毒の要素が大好きだ。
探偵が、いつしか一線を越えて愛してしまう人妻にフェイ・ダナウェイ。彼女の、鋭利でナーバスなヒロイン像が、ニコルソン以上に映画全体の不健全さを盛りたてていく。物語の暗部には父娘相姦が横たわり、私利私欲に纏わる陰謀と、後味の悪さ、そして見事なデッドエンドが素晴らしい。
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極細眉は、ディートリッヒを彷彿とさせて、非情なヒロインを連想させてしまうかもしれない。しかし実際は哀しい過去を秘めたひとりの女であり、母なのだった。
隙のない脚本は長さを感じさせず、ロスの乾いた大地に、ささやかな愛を渇望する人々の人情味溢れた傑作は、とてもおもしろかった。

(131min)


つづいてもう一作品は、シドニー・ルメット監督の十八番、緊迫感ある社会派ドラマ『ネットワーク』 (1976年)

d0235336_21252433.png (あらすじ) 低視聴率を苦にノイローゼになったニュース・キャスター、ビール(ピーター・フィンチ)が生放送の番組のなかで自殺を予告し、視聴率を盛り返す。彼に目をつけた女性プロデューサー、ダイアナ(ダナウェイ)と社の上層部は、さらに注目を高めるため人間性を踏みにじる狂気の世界へと突き進んでいく――。

 「映画っていいものですねー」とはよく思うけれど、「テレビって節操ないですねー」も同じくらい思っている。それなので、あまり観ないようにはしているのだけれど、こういう作品を観ると改めて、テレビの裏事情に怖気立ってしまう。
ダイアナと老いらくの恋をする、元テレビ局のプロデューサーで、ビールの盟友マックス(ウィリアム・ホールデン)が彼女に放ったラストの台詞がすごい。
「君はテレビの化身だ。他人の苦しみを感じることができないし、喜びを感じることもできない。君がふれるとすべては死んでしまうんだ!」

もう一つ。ビールがテレビ本番中、視聴者に向かって訴えた台詞。

「あなたがたは、テレビによって操られていることを知りながら、それでもなお毎日テレビの前に座り続けている。今からでも遅くない。今、私が画面に映っているこの瞬間に、テレビのスイッチを切りなさい ! 」

嗚呼、コワイ。病んでいるのはけしてビールだけではない・・・ダイアナのけたたましい饒舌もかなりの狂気を孕んでいる。
家庭を捨ててまで、なぜに人徳者のマックスがダイアナを選んだのか、疑問の残るところではあるけれど、別れ際に吐き捨てた前出の台詞には、かなり胸がスッとしてしまう。二人の関係に真実味がないのは、なるほどテレビ界の物語らしくて絶妙。
本編でもフェイ・ダナウェイは異彩を放っていて、ほとんど男しかいない画面に強烈に花を添えている。マックスと初めて過ごす夜、ベッドの上でもずっと業界の話題を大音量で叫びつづけるダイアナは、本作のシニカルな見どころのひとつだと思う。 (121min)


 ちなみに、最近、菊地凛子がフェイ・ダナウェイに似てるなーと思ったことがあった。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『バベル』を観たときだ。意識してのことか、ただ似ているのかはわからないけれど、エキセントリクさも似ている気がする。
アカデミー賞にノミネートされて話題となった『バベル』は、じつはわたしはあまり好きになれなかった。ライフルを巡る三つの物語が<要因⇔結果>のようにして繋がっていくお話で、日本のシーンになると拭いようのない違和感に包まれてしまうのだ。アメリカとメキシコはともかくとして、、。
しかも、父(役所広司)と娘(菊地凛子)の関係は近親相姦だったのか、、釈然としないままで、とても現実離れしたものとなっていた。ケイト・ブランシェットとブラピの場面、メキシコの国境で起こったドラマは良かっただけに残念。
by haru733 | 2012-03-15 23:25 | アメリカ映画 | Comments(0)

『卍』 谷崎潤一郎 

d0235336_14265179.jpg 『細雪』『春琴抄』につづいて手にとる谷崎潤一郎作品。一貫しているのはエロチシズムと甘美さ。DVDの表紙から抱いてきたイメージの、あからさまな描写はひとつもなくて、それゆえに想像力掻き立てられる作品だった。

小悪魔的な光子の虜となり、同性愛の関係に溺れた園子。さらにその夫と、光子を独占しようとする卑劣な綿貫との四つ巴の関係を、園子による上方ことばのモノローグで綴る――。

起こっていることは至極浅ましいというのに、うわべがあまりに上品なもので、嫌悪を感じるひまもなく官能的マゾヒズムの世界に魅せられてしまった。
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どこまでも堕ちていく4人を称して、タイトルの『卍』とは、言いえて妙。特に園子の夫などは、当初の紳士然とした姿からは想像もできないほど光子にのめりこんで人が違ってしまうのだからおもしろい。男たちに比べたら、女の執念や所業はぶれることなく凄まじいものがある。
倦怠のなか、とうぜん行く末は破滅オンリー。ただただ、言葉だけが美しく品を保ったまま、節操のない4人は堕ちるところまで堕ちてしまう。。
ひとり生き残った園子が、これからも抱え続けるだろう疑惑と煩悶をおもうと、結末の見事さに唸ってしまった。

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ただし、生きているからこそ、どうとでも言える――という話もあって、それはそれで大きく捉え方が裏返ってしまう。果たしてどこまで深読みすればいいのだろう。

幾度か映像化されてきものは、どれもまだ未見。DVDの表紙がすごい樋口可南子バージョン、もしくは、1964年版の若尾文子のほうを、いつか手にとってみよう。
ちなみに文庫にはいろんな装丁があって素敵。新潮文庫のがいいなー。素敵な装丁も、本棚に入れると見えなくなってしまうけど。
わたしは「昭和文学全集1」に収録されたものを、重くて常に寝そべりながら読んでしまった。
by haru733 | 2012-03-11 12:27 | | Comments(2)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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