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私の叔父さん (2012年)

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 涙がとめどなくでて、これはもうほんとうによかった。ちょうど一年前、原作を読んで泣いた連城三紀彦さんの原作を、舞台を現代に置き換えてそのまま映画化した小粒の良作とおもう。

カメラマンの田原構治(高橋克典)は、大学受験のために上京し自分のマンションに寝泊まりさせていた夕美子(松本望)の発言に言葉を失った。「おじさん、私の母さんのこと愛していたんでしょ?」18年前に夕美子を生んで間もなく死んだ夕季子(寺島咲)は、構治の姉の一人娘で、姪に当たる存在だった。構治は18年前の記憶に遡っていく。
18年前、東京でカメラマン修行をしていた彼のもとに、見違えるように綺麗になった夕季子が上京した。7年ぶりの再会を果たし、さらにひと月後、再度上京した夕季子は、一ヶ月間、構治と一緒に暮らす。お互いの気持ちを察しながらも、禁忌ゆえに結ばれなかったふたり・・・・。福岡に帰った夕季子は間もなく、実直な若者との結婚を決めたのだった。

物語は、大学受験のために上京した夕季子の娘・夕美子が、福島に帰ってから、構治の子どもを妊娠していると告げて急展開していく。ハラハラとどきどきと、過去と現在を行き来しながら、叔父と姪が封印した愛の真実に迫っていく。

これまで出演作を一度も見たことのない、そればかりか苦手でさえあった主演の高橋克典が素敵だった。26歳と45歳を演じて違和感のない爽やかな佇まいに惚れ直してしまった。18年前、夕季子が諦めた恋だけじゃなく、あれからずっと忘れられずにきた構治のラストの涙にぐっとくるものがある。
夕季子を演じた寺島咲さんなどキャスティングが文句なしだったので、新人だという夕美子役だけが惜しまれる。寺島咲が二役ではいけなかったのだろうか、、。夕美子に夕季子の面影を見たことが、この結末を肯定できる要素であるとおもうから。


全国に遅れて、道内初公開された本作が、行きつけのミニシアターで上映されると気づいてほんとによかった。館主さんのコラムにあるとおり、番宣されることもなくひっそりと公開された日本映画の拾い物は、クチコミできっとたくさんの人の目に触れるのではないでしょうか。
先日、やむなく値上げをした“蠍座”さんは、今後のラインナップも見逃せないかんじ。アカデミー作品賞の『アーティスト』に、『ムカデ人間』。ミニシアターを応援するためにも足繁く通わなければ。
by haru733 | 2012-08-29 17:45 | 日本映画 | Comments(2)

出発 (1967年)/フローズン・リバー (2008年)

d0235336_23175356.jpg 『出発(たびだち)』

 イエジー・スコリモフスキ監督初期のモノクロ作品。監督復帰してからの2本と比べてみると、作風の違いがよくわかる。まだ若い感性はゴダールを彷彿とさせるヌーヴェル・ヴァーグの匂いがした。

(あらすじ) ブリュッセルで美容師見習いをしているマルクはカーレースに熱中する19歳の青年。オートレース出場に備えて、店主のポルシェを無断で借り、夜の町を走り回っている。ある夜、ミシェールという娘に恋をした彼は、彼女と共にレース用の車を手に入れるべく様々な手をつくして夜の街を彷徨うのだが・・・・。

カーレースにしか生きがいを見いだせない青年を、ジャン=ピエール・レオが素のようにして演じている。若さを持て余した気だるいモノクロの青春は、澱が沈んだような息苦しさで、わたしにはちょっと苦手。どちらかというと『アンナと過ごした4日間』の、不器用で倒錯した恋のほうが好きだ。
ヌーヴェル・ヴァーグ一連の作品を愛するオシャレさんにとっては、たまらない傑作なのかもしれない。

 (製作国 ベルキー/90min)


d0235336_2318337.jpg 『フローズン・リバー』 

 サンダンス映画祭でグランプリを受賞したヒューマン・ドラマ。
 カナダ国境近く、先住民モホーク族の保留地を抱えるニューヨーク州最北部の町。ふとしたことから出会った2人のシングルマザーが、それぞれに抱えた苦境を乗り越えるため、密入国を手助けする違法な仕事に手を染めていくさまを、リアルに描き出していく――。

ケン・ローチ監督の『この自由な世界で』をふと思い出す。イギリスとアメリカの違いはあれど、シングルマザーの逼迫した厳しい状況や、やがて犯罪に手を染めていくまでは似ているといっていい。ローチ作品の母親には嫌悪を覚えたのだったが、本作の主人公たちには体温を感じて感情入しながら見ていた。
護身用の拳銃を持ち歩くような国で、密入国者を運ぶ緊迫感と、凍った川に車を走らせる恐怖・・・それでもお金がなければ、夜逃げした夫の代わりに育ち盛りの子どもたちを食べさせていくことはできない。母親は、似た境遇にあるモホーク族の女に言われるがまま、犯罪の手助けをしてしまうのだが、前金を支払った新居を失うのを恐れ、いつしか危ない橋を渡りつづけるようになる。
常に緊迫感漂うなか、決定的な転落をみせるラストは容易に想像できる。それでも人を想う温かさがあるから、その先にはほんのり光が差している。悪ガキと付き合いながらも心の根の優しい長男と、まだ幼い無邪気な次男は、母を頼り慕っている。母親は子供たちをこころから愛している。罪人を人の道へとかえすのは、やっぱり愛であり、誰かに必要とされることなのだろう。
最悪な出会いから、いつしか人種を超えて友情を抱くようになるシングルマザーふたりの関係にも救われた、小粒な良作品だった。

 (製作国 アメリカ/97min)
by haru733 | 2012-08-28 00:00 | ベルギー映画 | Comments(3)

吸血鬼ゴケミドロ (1968年)

d0235336_16231941.jpg すてきなネーミングに惹かれて、松竹の怪奇SFを鑑賞。

(あらすじ) 旅客機が空飛ぶ光体と遭遇、計器が狂い岩山に不時着した。乗客たちはからくも一命を取り留めたかに思われたのだが、乗客の一人は、吸血宇宙生物ゴケミドロに身体を乗っ取られていたのだった・・・・。

特撮つながりか仮面ライダーのような茶色の岩場で繰り広げられる、宇宙生命体による地球侵略。アメーバ状のゴケミドロは、旅客機の乗客のひとり、殺し屋(高英男)に入り込み、生き残った彼らを襲う、、!
一時代を偲びながら、そっと笑って見るのが一番。いまとなってはすごい描写がいっぱいで、それに輪をかけるように、DVD特典には、カウチ・コメンタリーと称して樋口真嗣監督×みうらじゅんによる愛ある毒舌トークが収録されているので、再見する際はカウチバーションで再生するのもたのしい。
『マタンゴ』を彷彿とさせるエゴのオンパレード。エロスはホラーと切ってもきれない関係というけれど、無意味にエロティックな場面が多かった。ゴケミドロに寄生されたおでこの傷なんか、みうらじゅんさん曰く見ようによってはかなりエロかったりする。

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気がつけば高英男氏の画像ばっかり(笑) 体を乗っ取られただけで、この人が宇宙人なわけではないのだが、本業の“シャンソン歌手”という経歴さえ忘れさせる怪演がすごい。吸血場面の目力はタダモノでない独壇場。
d0235336_16235612.jpg画像を探していて見つけたゴケミドロ・フィギュアも、いまだに愛されキャラであることを偲ばせる。

右は、人形が代役を務めた、額の割れ目から寄生するシーン。アナログ時代の貴重なあじわいだ。
人類滅亡を匂わせるラストといい、この時代のSFはなんともおもしろい。

(監督 佐藤肇/84min)
by haru733 | 2012-08-27 22:50 | 日本映画 | Comments(0)

ニセコアンヌプリ *晩夏

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 金曜日、ニセコアンヌプリに登ってきました。
いつもは現地集合なのだけれど、我が家の車が故障していて、札幌から2時間かかる道のりを山友達の車にお世話になり出かけたのでした。
晴れ女返上、小雨のパラつく曇り空。猛烈な湿度にずいぶん消耗しながら、ゆっくりと登りました。
それでも途中からは深い霧も晴れてきた。

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向かいに聳えるイワオヌプリは硫黄の山。山頂を真横に眺めてしばらく登ると、いつのまにか眼下に見えていました。この山にもいつか登りたい。

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とにかく曇ってはいたけれど、流れてく霧がとても幻想的。羊蹄山は雲に隠れていても、ニセコ連峰の連なりは雄大。

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偽ピークからは尾根づたいになだらかで、気がつけばそこは山頂。2時間かかりました。標高1308.5m。

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時折現れる“あと―m”の標識や、ケルンなども、あまり個性派ではないけれどキレイに整備されています。
汗で湿ったシャツに体温を奪われて、急に寒くなってきた。アウターを着込んで、お昼のおむすびと活力づけの行動食をいただきました。コーヒーは忘れてきた、、。

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ふつうの標識類のなかで、ひときわ目を引いたものがふたつ。観測所跡の石碑と、あらぬ方角を指す大きな矢印。いいかんじに錆びているのです。

羊蹄山が望めないかとしばし待ちましたが霧は晴れず、下山の途につきました。なだらかな所もアップダウンもなくてひたすら登ったぶん、帰りはひたすら下るだけ。1時間ちょっとと早いペースで下りてはきたけれど、膝ががくがくでした。つま先も辛かった、、。

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過酷な登り道でシマリスに出会いました。
いつもはすぐ逃げてしまうけれど、ゆっくり近づいたらこのこは逃げなかった。
一生懸命、草の実を摘んでは食べていました。

登山道にはすでにキノコがいっぱい。確実に季節は秋へとむかっています。


帰りも送ってもらっていろいろ迷惑をかけちゃったけれど、曇りだったわりには景色を堪能したし楽しい山行でした。
山友達にカンシャしつつ・・・・(ハート)。
あたらしい車が来たころにはすっかり秋ですね。
by haru733 | 2012-08-25 22:50 | | Comments(2)

小樽貴賓館/旧青山別邸

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 遠方から遊びに来ていた母を連れて小樽観光へ。貴賓館に併設してある旧青山別邸に足をのばしました。
旧青山別邸は、明治・大正時代、にしん漁で財を成した網元が、6年半の歳月をかけて娘のために用意した別荘。18室ある各部屋には、当代一流の画家による襖絵や書が並び、枯山水の庭園、吹き抜け天井、大正ロマンを彷彿とさせるモダンな室内装飾などが見られます。近年、有形文化財に登録された、至極高価なものだらけ。
有田焼の便器やら、檜材一本物の長押しやら、御影石と大理石で作られた洗面台やら、おもてなし以外の空間さえこだわりの、すばらしきお嬢様生活。一度くらいは経験してみたい。

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(館内は写真撮影一切禁止。こちらだけHPから拝借させていただきました)

にしん漁で湧いた時代を偲ばせる貴重な美術豪邸として、これからも残ってくれればよいけれど、、日本家屋は脆い。90年の時を経てずいぶん老朽化はすすんでいるようすで、ややお高めの入館料はきっと維持費に費やされていくのでしょう。


貴賓館のほかには、運河や“かま栄”や海、それから市場へ。ずいぶん昔、ホッキカレーを食べて美味しかったという南樽市場を探し歩く。新南樽市場ならわかりやすい場所にあるのだけれど。

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そうして、諦めて帰ろうとした道すがら、やっとみつけた“なんたるいちば”
なんだか昔ながらで懐かしい。カレーを食べた記憶があるというお店は残念ながらなくなっていたけれど、満足して家路につきました。
by haru733 | 2012-08-25 00:01 | | Comments(0)

東山魁夷展

d0235336_2348849.jpg 『月篁』 1967年











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『秋翳』 1958年                                      『たにま』 1953年


 来客を迎えたりでパタついていたこのごろ。記憶に留めておきたいことがいっぱいありました。
一等きろくしておきたい、先日、仕事帰りに足を運んだ東山魁夷(1908-1999)さんの展覧会。

静謐な日本画は、否応なく足を止めて魅入ってしまう世界。みれば見るほど、ぼんやりとした霞が晴れて情景の細部が浮かびあがってくるフシギ。色合いの妙に溜息。
どれも丸みを帯びていて、こう言っては叱られるかもしれないけれどかわいらしかった。落葉樹のなかにポツネンと描かれた針葉樹など、気づけばたのしい洒脱なあじわい。

ことしの始め、魁夷画伯の『北欧紀行 古き町にて』(もちろん復刻版)を読んだとき、紀行文に添えられた温かい石版画のなかに、フィヨルドを流れ落ちる滝のモチーフがありました。それが日本画のなかの静謐な白滝と違和感なく重なっていくのが、とてもおもしろいとおもいます。
北国で暮らしていると北欧の空気感に似たものを見出すことがあるのだけれど、魁夷さんも北欧のそういうところに愛着を感じてらしたのでしょうか。
by haru733 | 2012-08-24 00:00 | 鑑賞 | Comments(0)

植物園

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 北大植物園にて。
園内にある道内最古の博物館は、明治の息吹を留めた素敵な佇まい。
2階は開放されていずこじんまり。
白が基調のガラスケースのなかに、リアルな剥製たちやさまざまな標本が並んでいる。

紙留めの小鳥に、ぺったんこの鼠、整然と並んだもぐらの仲間たちなど、心くすぐるシュールな展示品がいっぱい。古くさくていい匂いがする。
時間の流れが一瞬スローになった。

ひっそりと琥珀の標本箱。



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熱帯の植物が見られる温室もお気に入り。温室コーナーなんて、南国にはないのかもしれない。
きょうみたいに暑いと長居はできないけれど、ムッとした空気も嫌いじゃなくて。

歩き疲れて日陰に避難。お祭りの神輿を眺めたり、なんだか疲れた日曜日。夏休みさいごの日。
by haru733 | 2012-08-19 23:05 | | Comments(0)

『海炭市叙景』 佐藤泰志

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 先日、映画化されたものを観た佐藤泰志(1949-1990)の遺作の短編連作。
海に囲まれた架空の地方都市“海炭市”に生きる“普通のひとびと”たちが織りなす十八の人生―。
バブル期に湧きたつ街と、その陰でひっそり衰退していく18様の人生のエピソード。

作家・佐藤泰志を知るのにもっともスムーズだったのは、“村上春樹と並び評された”という一文だとおもう。佐藤氏は早くから文壇に出て、村上氏のデビューは遅かった。芥川賞に5度、三島由紀夫賞に1度ノミネートされるもののいずれも受賞することなく41歳で自死。かたや村上春樹氏は世界的なベストセラー作家になった。
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潔癖で悲壮感漂う独特な空気が流れていて、主人公たちがお互いの物語にさりげなく絡む手法が、手本はあったにせよちょっと珍しかった。人々の記憶から消えることなく、この度再評価されていることが、一番著作の魅力を物語っているのかもしれない。
写真は右の一枚しか見当たらなかった。歳のわりに老け込んでいると覚える写真。オシャレや音楽や映画が好きなニュアンスを作品の端々から感じたけれど、実際はどうだったのだろう。

原作を読んで、熊切監督の映像化はとても良かったとあらためておもった。ここから4話抽出した審美眼や、原作とおなじ陰鬱さを纏っていた画面など。
ちなみに、映画のオープニングタイトルは、じつは作者の直筆のペン字を使用していたのだとか。クセのある個性的な丸字がいい。わかって見ると、なんとも感慨深い気持ちになる。
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海炭市の冬と春を描いたところで物語は終わっている。もしも作者が自ら命を絶つことなく夏と秋の物語も紡いでいたら、覆っているグレーの情景はいくらか違っていただろうか。
by haru733 | 2012-08-14 00:00 | | Comments(0)

『21世紀 仏教への旅 インド編』  五木 寛之

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 けして回し者ではありませんがNHKのドキュメンタリーは好きです。
こちらは、NHKが放映するシリーズに連動した企画本で、仏教に造詣のふかい五木寛之さんが、涅槃に至るまでのブッダの旅の足跡を辿って綴ったエッセイ。

ブッダは自らの死に何を思い、何を伝えたのか

五木さんのおっしゃるとおり、出生を辿ってもそれほど意味はないのかもしれない。釈迦族の王子として生まれたブッダが、その人生をどう歩み、どう死んでいったのかを知ることに意味があるという。ブッダの最後の旅を、老境に差し掛かった五木さんが心情豊かに真摯に見つめる。
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凄まじいほど過酷なブッダの旅路。そして、その足跡を辿る旅の壮絶さが、荒れた陸路や酷暑をすくなからず知っているだけにリアルに伝わってくる。
それでも羨ましいとおもうのは、インドの地への焦がれがいまだに薄れていないから。おなじ道、辿れるものなら辿ってみたい。

遠藤周作氏の『イエスの生涯』を読んだあと、ひとりの人間としてイエスを感じられたように、当然血も涙も肉も心もあったヒューマンなブッダの最期をリアルにおもう。当時としては驚異的な長生きをして、病に倒れてもなお北へと向かい、クシーナガルでこの世を去ったブッダの人間味ある言葉にこころが動きます。
d0235336_13232991.jpgほんとは故郷ルンビニを目指していたのだとすればなおさら。

 岩波文庫版、中村元 訳の『ブッダ最後の旅 大パリニッバーナ教』は、五木さんがこの旅のお供にしていた一冊。手にとって半分ほど読み進んでいます。上記の本にたくさん引用解説してくれていたおかげで、なんととても読みやすい。
手元に置いておきたくなるような本。
by haru733 | 2012-08-13 00:00 | | Comments(0)

砂の器 (1974年)

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  いつかは観ておきたかった野村芳太郎監督の松本清張シリーズ。
暗い過去を背負うがために殺人を犯してしまう天才音楽家・和賀(加藤剛)の宿命を描いた社会派サスペンスで、事件を捜査する刑事役には、丹波哲郎、森田健作が熱演している。

デジタルリマスター版で観たとはいえ、火曜サスペンス劇場を彷彿としてしまうのは、年代特有の古さと殺人事件を追う刑事ものだからか。それでも、物語が進行するにつれて、映画らしさはグンと濃くなっていく。
殺害された男・三木謙一を演じた緒形拳が登場するころには、生き別れた父子の辿った宿命に、深い悲しみでいっぱいになっていた。
三木が殺されなければならなかったのは、天才音楽家・和賀に隠された生い立ちの秘密を知っていたから。当時、島根県の出雲で巡査をしていた三木は、ハンセン病の父と放浪する幼い彼を保護していたのだった。
情が厚い為に、20年を経て東京で殺される皮肉・・・・・実直な生き様を挫いたのは、ひどい差別を生むハンセン病なのだ。
病気による差別を知れば、栄光をフイにすることを恐れて強行に及んだ和賀のことを、手放しでは責められなくなるかもしれない。三木の元を自ら去り、幼い胸を痛めて泣いていた彼がやっと掴んだ成功は、けして幸福と呼べるものではなかったし、コンサートを終えた彼はきっと安堵して連行されていくだろうラストの余韻がとてもいい。
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病に倒れてなお、息子(幼い頃の和賀)を守り放浪の旅を続けた父親役の、加藤嘉の悲痛な表情が印象深い。刑事を演じている丹波哲郎は、霊界との接点さえ感じさせないダンディぶりでカッコいい。若かりし森田健作はそうとう爽やかだ。
私的に嬉しかったのは、“ひかり座”の支配人役で渥美清氏が見られたこと。飄々とした姿がこころをくすぐり、久しぶりに『男はつらいよ』シリーズが見たくなってしまった。渥美さんは野村芳太郎監督作品で幾度か主役を演じていて、『八つ墓村』ではなんと金田一耕助を演じていたことを思い出します。

(143min)
by haru733 | 2012-08-12 18:17 | 日本映画 | Comments(0)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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