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秋刀魚の味 (1962年)

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  小津映画の味わいは時を経るごとに深く、貴重になっていくのかもしれない。秋刀魚といっても、お魚などでてこない日本映画の金字塔は、60年代の情景がノスタルジックな、いつの時代も変わらない普遍のドラマがあってたのしい。日本人の営みの真髄がおおいに詰まっている。

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敗戦後の高度経済成長期。
笠智衆演じる平山周平の周囲には、一緒に暮らす長女(岩下志麻)と次男、それからマンションに所帯を持っている長男夫婦(佐田啓二)、仲の良い旧友たち。
そこここに生活につきもののドラマがあって、悩みがあって。長女の縁談話を軸に、老いも若きも軌道をはみ出すことなく暮らしている姿がコミカルに描かれていく。

とにかく笠智衆の穏やかな父親像が本編の要ではないだろうか。こんなお父さん(もしくは夫でも)が欲しい。亡くなった母の代わりに、OLをしながら家事を切り盛りする長女役の岩下志麻は、まだ極妻の片鱗もない清純な美しさだ。
私的にお気に入りなのは、イケメン佐田啓二とべっぴん岡田茉莉子の夫婦喧嘩なのだけれど、どの家庭にも起こりそうな諍いは、身近すぎて苦笑してしまうかもしれない。 


そんな和やかムードも、娘が嫁いでしまうと物悲しさに染められる。笠智衆はすっかり『生きる』の志村喬のようになり、『ゴンドラの歌』でも歌いだしそうな侘しさをみせるのだ。それは同じく社会的地位を得ている黄昏時の旧友たちにも、他人事ではないニュアンスのものだった。
先日まで読んでいた本の、地位と名誉を得て経済的に潤っても、それゆえ満足と平穏のこない虚しさを味わっていた中年紳士たちをふと思い出した。

「彼等には無限の願望があり、消耗し切ることなく、あとからあとからと湧く精力があって、それが穢い脂のように顔に浮いていた」       ―伊藤整 『氾濫』

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働き盛りの壮年男性には、女にはわからない大変さがあるのかもしれない・・・・。
『秋刀魚の味』は小津安二郎監督の遺作、そして『死ぬまでに観たい映画1001本』に選ばれています。
by haru733 | 2012-10-30 00:00 | 日本映画 | Comments(3)

テープディスペンサー

 お休みさいごの今日は、読み終えてしまいたい本を携えて宮田屋珈琲へ。遅々としてすすまないのは伊藤整の『氾濫』、詰まらないわけではないのだけれど、だらだらと読んでいます。

『氾濫』は、男と女の性質を執拗にうがった穏やかな気持ちではいられない一冊。男女の思惑にまみれたやり取りが延々と繰り返されてゆきます。女心の本質を確実に捉えたかんじは、さすがチャタレー事件の作家というべきなのでしょうか。

キリマンジャロを飲み干して読書にめどがついたころ、その足で江別にある古道具屋さんへ寄りました。もう何ヶ月もまえから欲しいテープディスペンサーを見に行ったのでした。
店内を二度さがしても見つからず、、とうとう売れたかと諦めたころ、古家具の扉を開けるとなかに、一目ボレのディスペンサーがありました。
ずっしりと重たいわびさびフォルム。落胆したあとの衝動ですんなり購ってかえることにきめました。

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ずっと使いつづけたいもの。
by haru733 | 2012-10-29 23:37 | 雑貨 | Comments(0)

STEAM CREAM

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 あちらこちらで人気のスチームクリームですが、これはほんとにスキです。
使い心地よし、香りよし。
我が家にあるのは"BIG BEN"と2代目
"PHOOL"。
しかし、いまさらなぜこの話題かというと
"PHOOL(フール)"の意味を調べてみたからでした。
"PHOOL"はヒンドゥー語の「花」。
だから花柄で、ちょっとアジアンチックで、数ある中からこの缶に惹かれたのだなあー

柄選びの楽しさが雑貨好きのこころをくすぐる、愛用のひと品。乾燥の季節がきてこれからますます手放せなくなります。
by haru733 | 2012-10-28 22:24 | 雑貨 | Comments(0)

月形樺戸博物館

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 十数年ぶりに樺戸博物館を訪れました。前回がデートで出かけたせいかステキに陰気な場所という記憶でしたが、今年の春にリニューアルされて、ずいぶん立派に生まれ変わっていました。
旧樺戸集治監本庁舎、樺戸博物館本館、農業研修館の三つの建物が通路で結ばれていて、一気に見学OK。
キッチュな資料も少しはありましたが、なにぶん写真撮影禁止なので真面目な画像しかないのが残念。


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(画像/HPより)

左/典獄室(復元)
右/明治19年建設
   当時より、永い
   歴史と共にすり
   減った石段




左/歴代の典獄コーナー
右/樺戸集治監の模型と
   関連人物コーナー





左/鉄丸と編み笠
右/細部まで
   作り込まれた
   囚人護送の模型
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廃監までの39年間の歩みを眺めながら、同時に、北海道の開拓が囚人の労働なくしては語れないことを学びつつ、一時間ほどで館を後にしまた。
それにしてもキレイに整えられればられるほど、面白みが半減してしまうのはなぜだろう。
(見ごたえとおもしろみは別モノ)
整然とした淀みない空気より、すこしくらい陰気なほうが魅力的であると、『珍世界紀行』(都築響一 著)を読んだばかりのせいか殊にそうおもいます。
北海道のキング・オブ・監獄はなんといっても網走、リアルな蝋人形の数々が最高にシュールな場所です。

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by haru733 | 2012-10-28 00:00 | | Comments(0)

転々

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 わたしにしてはよく働いた一週間が終わって、うれしい3連休を過ごしています。
秋雨前線の合間にぽつんと晴れた土曜日は、R275をひた走り樺戸博物館へ、その足で、むかし住んでいた町へ足をのばしました。

お昼は、駅前の純喫茶“やまいち”で、ナポリタンとコーヒーをいただきました。
お店のすぐ近くに住んでいたのに、一度も入ったことがなかった喫茶店。味わいある昔ながらの佇まいは、ぜんぜん変わっていませんでした。味も昔ながら。
オムライスを注文してパクついている娘は、あのころ幼児だったけれど、いまじゃすっかりわたしの背を追い抜いているのでした。10年の歳月おそるべし。

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近年リニューアルされた駅の隣にあるこのお店が、ドラマ『昨日、悲別で』のロケ地として使われたのは、かれこれ28年前。店内の壁に記念品が飾られています。主演女優の写真や倉本聰さんのサインなど。
そのなかに、せんじつ亡くなられた大滝秀治さんの色紙をみつけました。

もう駄目だと思ったり まだやれると思ったり

思い出の場所を転々とした、いちにちでした。
by haru733 | 2012-10-27 00:00 | おでかけ | Comments(0)

アウトレイジ ビヨンド (2012年)

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 男気映画は好きだけど任侠映画が得手ではないわたしにとって、北野監督の『アウトレイジ』シリーズは世間の評判ほどやはり夢中にはなれなかった。
北野作品なら、初期のヤクザ映画がおすすめですと、いつか教えてもらったことを思い出して、未見の初期作品を辿ってみたくなったことが、なによりの収穫かもしれない。まだ気づいていない美学が、そこにはあるのだろうか。

壮絶な抗争劇から5年。前作で死んだことになっている大友組組長(北野武)は、獄中で生きていたという設定で、関西の巨大暴力団“花菱会”が登場し、目を覆いたくなるような血みどろの潰し合いが苛烈する。裏切りでのし上がった現・山王会会長の加藤(三浦友和)と若頭の石原(加瀬亮)は、反逆する勢力に押され見事に失墜していく・・・・ヤクザの権力争いに終わりはみえない。

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暴力団と、マル暴の刑事・片岡(小日向文世)との蜜月関係など、さもありなん。組同士が潰し合うようにけしかける片岡を、出しゃばりすぎという見方もあるけれど、小日向ファンにはおおいにうれしかった。
前作でおいしいところを持っていった金庫番の加瀬亮は、大出世して若頭となっているのだが、始終吠えていて飄々としたところはもはやなく無様。それでも半殺しにされる顔面ピッチングマシーンのおそろしい場面などそうとうシュールで、おいしいところをさらっていた。
桐谷健太と新井浩文のチンピラぶりは、一等輝いている。

男たちの溢れんばかりの男気をみていたら、必要悪ということが浮かんできた。不謹慎な想像とはいえ、その命知らずが国の正義のために使われたら、どれほど心強いだろうかと。

(監督 北野武/112min)
by haru733 | 2012-10-22 00:00 | 日本映画 | Comments(0)

冬支度

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       木   冬
       製   の
       ス   食
       プ   卓
       |   に
       ン   か
       を   か 
       新   せ
       調   な
        ○   い  
        





         
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               買   ス   き         
                っ   リ   ま 
               た   ッ   っ
                ○   パ   て
                   も    ほ
                        し
                        く
                        な
                        る
                       
                                                                                         




                                                            
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           初   あ        
           雪   た    
           を    た          
           待   か      
           と    い     
           う    二
            ○     ッ   
                 ト        
                で 
                                                          
                                                                                                                                       
by haru733 | 2012-10-21 00:00 | 雑貨 | Comments(2)

ゆくりない哀愁

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 紅葉をながめて歩こうと、出かけてみた公園。そろそろ見ごろかとおもって来たけれど、平地の紅葉はまだすこし早いようでした。車を駐車したものだから、なんとなく文学館へ行かねばならない気がして足を向けると、特別展は『ごんぎつねの世界』。
教科書に載っている有名なおはなしの作者は、29歳の若さで夭折した新美南吉。今年はちょうど生誕100年にあたるのだそうです。数名の画家による絵本の原画展もあって、おもいがけず哀愁がひたひた押し寄せてきました。
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文学館を後にして、あたらしいブーツなど探して歩きましたが、これはというものに出会えず。夕飯の食材だけ買って家路につきました。今日はもつ鍋。こちらはすっかりお鍋の美味しい季節です。
by haru733 | 2012-10-17 20:01 | | Comments(4)

善き人のためのソナタ (2006年)

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 東西が分断されてから統一されるまでのドイツ映画をみると、ほとんどが西ドイツ映画だ。一介の映画ファンとしてはそんなところに東の厳しい実情など想像していたのだけれど、本編で知った国家保安省“シュタージ”の冷酷さは想像以上だった。なにもかもが国家によって監視・諜報されていた東ドイツの闇。骨太な社会派ドラマ。

局員ヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)は真面目でやりての男。彼が新たに命ぜられたのは、反体制の劇作家ドライマン(セバスチャン・コッホ)と、その同棲相手の女優クリスタ(マルティナ・ゲデック)を監視することだった。寡黙で孤独なヴィースラーは盗聴を続けていたあるときから、芸術を愛するドライマンらの生き方に共鳴していくことになる。それは抑えきれない感情で、現実に置かれた立場との狭間で苦しむのだが―。
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盗聴する側とされる側。彼らは数奇な運命を辿る。監視対象の生き方に突き動かされる形で、たったひとり体制に背いた男と、それによって過酷な運命を生きながらえた男。そしてふたりの男に愛された女の悲劇。
社会主義国家の非人道的な怖さのなか、ギリギリのところで信念を貫いた人々の誠実さや強さが胸にひびいた。骨太なドラマは、数年先を描くことで、ロマンを添えて幕を閉じる。

ヴィースラー大尉を演じたウルリッヒ・ミューエ氏の、早すぎる死があらためて悔やまれた。盗聴器のヘッドフォンをつけて、セリフ以上に表情で語る名演は、おおきな存在感を放っている。自身も東ドイツの出身で、当時は監視下におかれていたのだそう。
ちなみに、遺作『わが教え子、ヒトラー』もシニカルに時代を抉っていて好きです。

この見事な人間ドラマを描いたのはドイツの新鋭監督フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。なんと当時弱冠33歳で、本編がデビュー作というからおどろき。


(監督・脚本  フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク/138min)
by haru733 | 2012-10-16 00:00 | ドイツ映画 | Comments(2)

おとなのけんか (2011年)

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 おもしろい映画に制作費も尺の長さもいらないと、改めて実感させられるシチュエーション劇の傑作。
ロマン・ポランスキーによるシニカルな大人のドラマは、4人の名俳優たちの共演でものすごい見ごたえ。

(あらすじ)
ニューヨーク、ブルックリン。子ども同士の喧嘩を穏便に解決するべく親同士が設けた和解の席で、平和的だったはずの話し合いが、いつしか本音飛び交う混沌と狂騒の場へと化していく―。
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進行はリアルタイム。おとなの話し合いもつかの間、本音を堪えきれなくなる面々が可笑しすぎる。
ケイト・ウィンスレット演じるカウアン夫人の突然のゲロを皮切りに、これでもかと巻き起こる小ネタの数々は圧巻。原作戯曲の妙だけじゃない、ポランスキー監督の演出と俳優たちの名演が光る。
何度も話し合いを中断させる、弁護士カウアン氏の鳴り止まない携帯から、ロングストリート夫妻の豹変まで、いつしか子供の問題から夫婦間の問題へ、はたまた大人たちの暮らす社会批判へと膨らむ、痛いとこつかれるようなノンストップ会話劇だった。
酒盛りの様相を呈していくころには、子どものケンカなどかわいく思えてくる皮肉。すっかり仲直りした子どもたちを映す粋なエンドロールに、ニヤニヤとした笑いがこみ上げてきた。

ちなみに、ジョディ・フォスターとジョン・C・ライリーが被害者側、ケイト・ウィンスレットとクリストフ・ヴァルツが加害者側の親御さん。この4人が揃っただけでそそられる画面なのだ。


(フランス=ドイツ=ポーランド合作/79min)
by haru733 | 2012-10-15 00:00 | 多国合作映画 | Comments(4)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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