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旅よ 『飛光よ、飛光よ』

 『深夜特急』シリーズ、最終巻まで読み終える。
はじめは、多少骨太なバックパッカー旅行記だ、くらいにしかおもっていなかったのに、あれよと言う間に著者は、本人さえ眉唾だった旅=人生という境地に達していく、無二の旅本だった。
バックパッカーがその果にいかなる高みへたどり着くのか――考えてみたこともなかった。
その究極の心理状態は破綻と死・・・・・。穏やかじゃない、でもわからなくもない。


時には、彼らが、いつ崩れるか分からない危うさの中に身を置きながら、求道のための巡礼を続けている修行僧のように見えることもありました。彼らは、もしかしたら僕をも含めた彼らは、頽廃の中にストイシズムを秘めた、シルクロードの不思議な往来者だったのかも知れません。しかし、彼らこそ、シルクロードを文字通りの「道」として、最も生き生きと歩んでいる者ではないかと思うのです。(中略)
彼らがその道の途中で見たいものがあるとすれば、仏塔でもモスクでもなく、恐らくそれは自分自身であるはずです。 (本文より)

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著者の破綻をきたしそうな精神が、それでも人を求めて留まったから、スリリングかつ自己の内面にここまで迫った稀有の本書が生まれた。
この本を知ってからでは、ほんの少し、次の旅が変わるような気がする。
まずは年明け2月いく沖縄旅から。
気ままにひとり、計画を立てない自由な一日を過ごしてみよう。日がな一日、北海道とは真逆の風土のなかに漂ってみよう。


by haru733 | 2012-12-28 00:00 | | Comments(0)

SR サイタマノラッパー (2008年)

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  B級感溢れる低予算映画ながら、各方面で評価されて話題になっているSRシリーズを知ったきっかけは、あろうことか『ムカデ人間』だった。
ムカデの先頭を演じた北村昭博氏の出演作に、『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』というのがあって、これこそSRシリーズの3作目なのだった。
監督・脚本、入江悠。自身の地元を舞台に、ラッパーとしての成功を夢見ながら埼玉の片田舎で不全感いっぱいの日々を送り続ける不器用な若者たちの姿を、シニカルな中にも共感を込めて描いた青春ヒップホップ・ムービー。

元来わたしにはロックスピリットが欠けているのかもしれない・・・・・・田舎ならではの鬱屈した青春は痛痒い懐かしさがあるものの、期待したほどはおもしろくなかった。それでも、安っぽい画面に密度の濃い撮影現場の匂いがプンプンするこの1作目は、まだ完成度がそれほど高くはないのかもしれず、続編にいやがおうにも期待が高まる。
田舎で燻る面々には、IKKU(駒木根隆介)、TOM(水澤紳吾)、MIGHTY(奥野瑛太)。演じている役者さんみんなラップ未経験だというけれど、そうとは思えぬ見事なラッパー振りだ。
言いにくい言葉をラップに乗せる演出は斬新で、独特の心地よさがあった。

本作のキーパーソンはたぶん都会から地元へ戻ったばかりの紅一点、千夏(みひろ)だとおもう。彼女は高校を中退して東京へ出たあとAV女優になった。町の男たちは千夏の話題で盛り上がり、IKKUは秘かに憧れていた彼女との再会に複雑な心境だ・・・・・。
千夏とIKKU、ふたりの場面には、憎まれ口叩きながらも未来に向かってすこし前向きに変わる良いシーンがおおかった。
                                                              (80min)
by haru733 | 2012-12-24 00:00 | 日本映画 | Comments(0)

桃(タオ)さんのしあわせ (2011年)

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 中国の女流監督アン・ホイによる感動のドラマ。香港の映画プロデューサー、ロジャー・リーの実体験を基に、彼と彼の家族に仕えてきた老家政婦の桃(タオ)さんとの心の絆を描く。

さいきん殊に、豊かな食風景のある、ハートフルな暮らしを描いた作品が増えている。その都度、一食一食の食事を大切にいただいていこうと決めるのだけど、いつの間にかまた、なあなあになる。
“食べることは生きること”
桃さん(ディニー・イップ)が脳卒中で倒れて、ロジャー(アンディ・ラウ)の家を去ってはじめて、いかに彼女が大切な存在であったか、美味しい食事が感謝すべきものであったかをロジャーは知る。家庭で料理する習慣がない香港で、手料理が待っている幸せ―というのも本編を観るときのキーワードなのかもしれない。
彼は、桃さんの望みどおり老人ホームを探し、実の息子のように献身的に面倒をみるのだったが・・・・。
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ロジャーの家は代々裕福で、桃さんは少女のころから親子3世代に渡って仕えてきた。いまはみんな海外で暮らしていて、家にはロジャーと桃さんだけ。
未婚の桃さんに、身寄りはおらず、身の回りの世話は独り身のロジャーが看ることになるのが自然のながれのようだった。
家族みたいに暮らしたひとを放っておかないのは、きっと主人公でなくたって、誰もがしたい選択で、それでも、すべての人がロジャー家族のように、ホームからお葬式まですべてをサポートしてあげることは現実的にむずかしい。余裕があるからこそできたんでもある。
香港は合理主義が徹底しているそうなので、日本人の感覚よりはその行為が美談に映るのかもしれないなと、ちょっとおもってしまった。

満員状態の老人ホームに入所して、桃さんの暮らしから、豊かさやおいしい料理は消えてしまう・・・・。それでも、ロジャーが会いにきてくれて、外へ連れ出しては、想い出ばなしや笑いの絶えない会話ができて、桃さんの晩年は幸せだ。
得難いのはロジャーの男気もそうだけれど、忙しい合間を縫ってでも会いに出かけるその優しさこそで、誰にもしてあげられることなのに、なかなかできないということなのだった。

高齢化社会のすすんだいま、ホーム内での悲喜交々な出来事には考えさせられてしまうかも。実話ゆえか、あざとさはなく淡々としたラストがいい。
ひさしぶりに主演作で見たアンディ・ラウは、壮年の年頃とは思えない若々しさで、人間味のある好人物がとても似合う。


 (119min/中国=香港)
by haru733 | 2012-12-22 00:00 | 中国映画 | Comments(2)

しんぱしー

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 『少年になり、本を買うのだ 桜庭一樹読書日記 』 (創元ライブラリ) を読んでいたら、無性に本屋さんへ行きたくなって、いつもはぜったいに読まないようなミステリーを2冊と小川洋子さんの本を1冊えらんだ。
共感しながらたのしかった読書日記は、来年の読書生活を濃いぃものにしてくれそうなうれしい予感。しめしめ。
読書日記のかたわら、日常も記されてあって、それはちょうど『青年のための読書クラブ』や『私の男』が書かれたころだった。
『私の男』は、音楽を聴きながら暗い部屋で食餌も摂らず、肋骨の浮き上がる体で書き上げたという・・・・・たぶん神経を削って生まれた作品だろうとかんじてたので、やっぱりなあと痛々しくもしみじみとした。
いつもおもうのだけど、作家さんには映画好きな方がおおい。芸術の分野が似ているのかな、伊坂幸太郎氏や稲垣足穂氏、池波正太郎氏のエッセイにも映画に関するお話がいっぱい出てきた。
しかも、作家の怒涛の読書と、映画好きの観漁りには、とても似た匂いがする。

この世に傑作は存在するが、知らずにその書棚の前を、なんども、なんども、なんども、フンフン鼻歌を歌いながら通り過ぎてしまうのだ。出会わないって、おそろしいことだ。

わかるーこの気持ち。“書棚”のところを、“チラシ”や“レンタル店の棚”に置き換えたら、至極しっくり。『死ぬまでに観たい映画1001本』なんて、まさに通り過ぎを回避するために読んでる本だもの。
買ったばかりの本を床に並べてニヤニヤする作家=予告やチラシを見てニヤニヤする映画ずき・・・・おんなじ匂い。良い作品に出会ったら人知れず叫び、床の上をゴロゴロ転げまわりたくなる、それもおんなじ。

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 『深夜特急 第二便 ペルシャの風』

こちらも同時読みしていた。
これまたとってもおもしろい。
二便ではついにインドからの乗合いバスの旅がはじまった。旅は過酷さを極めていく。
いつしか沢木氏は、その目的を見失い、不感症になり、他人の親切さえうるさくおもう、退廃の一途を辿っていく・・・・最終便ではどうなってしまうのだろう。

前作ではユーモアがあったが、インド編にはない。
もっともインド特有の混沌と貧困、さらには得体の知れない病にかかり命を落としかけた体験の壮絶さ故かもしれない。インドを後にしてパキスタンへ向かうあたりからは、軽妙なユーモアが戻ってきた。

はじまりの辺りにチャイに関する記述があって、
駅売りのチャイはどちらかといえば薄目で、素焼きのぐい呑みのような容器に入ってくるため飲むと微かに土の味がする。インドの人はチャイを飲み終わると、その容器を窓から叩きつけるようにして割ってしまう。私には素朴で魅力的な器に思え、もったいなくてどうしても割れなかった・・・・・とある。
わたしも気に入って、チャイ屋さんから購って持ち帰ってきた、その素朴な器。なんだかうれしかった。
by haru733 | 2012-12-21 00:00 | | Comments(0)

はなれ瞽女おりん (1977年)

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  これすごくよかった。岩井俊二監督の番組、『マイリトル映画祭』で紹介されていて面白そうだったもの。それまで“瞽女(ごぜ)”という言葉さえ知らず、篠田正浩監督を観たこともなく、まさか監督と主演の岩下志麻が夫婦だなんてこともぜんぜん知らなかった。(知らないことばかり)

舞台は雪深い越後。男と関係を持ったことから“はなれ瞽女”となったおりん(岩下志麻)は、ある時、平太郎(原田芳雄)という男に出会う。たがいに惚れあいながら、兄妹と名乗って旅を共にするふたりの、儚くも情熱的な愛の道行を、美しい自然を背景に描いていく。

むかし男の盲人には按摩師、女には瞽女という職業があった。旅芸人集団“瞽女”は、男から身を守りながら自活するために機能していて、当然男と関係を持つことを禁じた。禁を破ると“はなれ瞽女”になって、ひとりで旅を続けなければならなかった。

平太郎と知り合ったころ、おりんはすでに身を落とし、はなれ瞽女になっていた。おりんの健気さに打たれて守りたいとおもう平太郎は、兄のように彼女と道行を共にする。けしておりんの体を要求しようとしない平太郎にたいして、もどかしくもあり幸せなおりんだったが、平太郎もまた、不幸な生い立ちからの孤独を忘れて安らぎを得るのだった・・・・・・
しかし平太郎の素性にはのっぴきならない嘘があり、その先には、愛するあまりの悲劇が待ち受けている―。

絵画的な美しさの画面と、時代特有の凄みのなかで、美男美女の純愛物語はとても好きだった。
艶っぽい岩下志麻の美しさにまけないほど、ワイルドで蔭のある原田芳雄が美しい。
昨年、原田氏が亡くなったとき、行きつけのミニシアターで追悼上映が行われていたのだけど、若かりし日の頽廃した面相がこんなに素敵とはしらず、出かけていかなかったことを後悔した。
『ツィゴイネルワイゼン』の原田氏も、そういえばステキだったのだ。

d0235336_16124572.jpg要はとにかく純愛であり、悲恋であること。
『マイリトル映画祭』では監督自らが撮影裏話などたくさん話してらした。
たとえば、突然の地震シーンは、これから来る不穏な展開を予感させるためであるとか、枝がアーティスティックな松は天然ものであるとか。
岩井氏はこれを中学生のころ劇場で観て、衝撃的だったのだそうだ。そのチョイス、大人。
時を経ても、とてもおもしろかった。


 (117min /原作 水上勉「はなれ瞽女おりん」)
by haru733 | 2012-12-20 00:00 | 日本映画 | Comments(0)

原爆の子 (1952年)

d0235336_2181149.jpg 新藤兼人監督・脚本による被爆児たちの体験記を元にした社会派ドラマ。
生々しい戦争の傷痕を残した瓦礫だらけの広島の情景が強烈。それもそのはず、原爆投下からわずか7年後の広島で撮影された本作は、終戦後、原爆を取り上げた最初の日本映画なのだそうだ。
古い映画には、歴史的に貴重な風景が留められた作品というのがあるけれど、こちらもまさにそう。

原爆で家族みんなを亡くしひとり生き残った保母の孝子(乙羽信子)は、いまは瀬戸内海の小島にある親戚の家で、小学校の教師をして暮らしている。
終戦後ひさしぶりに家族の眠る広島へ渡った彼女は、元同僚の元に世話になりながら、かつての教え子たちを訪ね歩く。そこで孝子が見たのは、あまりにも悲惨で過酷な現実だった―。

教え子で生き残ったのはわずかに3名、感動の再会に手放しの笑顔はない。
浮浪者同然の暮らしをしていたり、不遇にあったり、被爆者だと差別されることもある。そして今まさに死と向かいあわせの少女が祈りのなかにいる・・・・・。
悲惨な現実を次々と知っては、胸を痛めて落ち込んでいく純朴な孝子は、核兵器のその後の恐ろしさまでまざまざと見せつけられる。

かつて孝子の家の使用人だった、岩吉とのエピソードが印象深い。被爆して視力を失った岩吉は働くこともできず、たったひとりの身内である孫さえ施設に預けている。孝子は、少年の将来を思って瀬戸内へ連れて帰りたいと申し出るのだが・・・・・ふたりは離れたがらず、誰ひとりとして救うことのできない無力さに彼女は打ちのめされてしまうのだ。
岩吉を演じたのは宇野重吉さん、隣家のおばあさんは北林谷栄さん。味わい深い二人の居住まいに胸が打たれる。

  *  *  *

義務のように課してきた夏の戦争映画月間を、ことしは怠っていたなあとおもう。震災や原発関連の情報に気を取られていたのもあるけれど、みずから怖れを擦り込まないと、いろんなことが風化していって、また時代は繰り返されてしまいそう。
夏にはひとつでもふたつでもいい、反戦の映画をみておきたい。
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撮影風景のスチールはなごやか風景。監督の妻である乙羽信子さんが、せんじつの『鬼婆』とはまるで別人の清らかな美しさでおどろいた。おそるべし。  (100min)
by haru733 | 2012-12-18 00:00 | 日本映画 | Comments(2)

ダウン・バイ・ロー (1986年)

d0235336_23224055.jpg  モノクロームとロードムービーの異才ジム・ジャームッシュの愛すべき世界。
ジャームッシュ作品は、アキ・カウリスマキが好きみたいに好き。善人たちの身軽でオフビートな生き様がとにかくカッコいいのだ。

ジャームッシュ組の常連であるトム・ウェイツ、ジョン・ルーリー、ロベルト・ベニーニ扮する3人のゴロツキが、刑務所を脱獄して行くあてのない逃避行を繰り広げる―。
DJのザック(ウェイツ)と娼婦のヒモ、ジャック(ルーリー)に諍いは絶えないが、イタリア人の陽気な男ロベルト(ベニーニ)が加わると、奇妙な交友が生まれはじめるのだった。

逃避行はやがて、ニューオリンズから西へ西へテキサスまで。どこまでもアンニュイな旅に、囚われるなにものをも持たない彼らの生き様は、至極ステキに見えてくる。

ジャームッシュ作品に欠かすことのできない音楽は、大好きなウェイツによる歌とルーリーによる、緩くて退廃的な世界。そしてそこに、愛してやまないベニーニのマシンガントークが絡むと、至高の三つ巴誕生。
ロベルト・ベニーニを見てるだけで幸せになってしまうなんて普通じゃないのかもしれないが(?)、少なくともわたしにとっては、ベニーニ氏のおしゃべりさえ、無条件幸福になれる要素なのだった。

やがて腹ペコの3人は、とある一軒家に辿り着く。そこには傷心のイタリア人女性が一人りで住まっているのだった。(演じているのはニコレッタ・ブラスキで、彼女は後に、ベニーニの妻となった)
失恋したばかりの彼女は、ロベルトと一瞬にして恋に落ち、ロベルトの逃避行はこの家でハッピーに終わりを告げる。
そしてザックとジャックは、二股に分かれた道を別々の方向へ、憎まれ口叩きながら再び歩き出していくのだった――。
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ベニーニとブラスキ。この二人が見つめ合うシーンは毎度、深海のような深い愛の眼差しで熱すぎてすごい。もし彼らが仮面夫婦だったら・・・・・・愛なんて信じられなくなるだろうなあと、いつもおもう。
二人のダンスシーンが長いのは、監督にとってもそれが、胸に響く愛の情景だったからに違いない。
そして、背後の間の抜けたザックとジャックの呆れ顔にも注目。

名場面といえば、浮草に覆われた川を下るボートや、刑務所のなかのスクリーム!も、後々まで語られそうなワンシーン。

“ I scream you scream we all scream for ice cream!”


ひさしぶりに頬が緩みっぱなしだった。


(107min/アメリカ=西ドイツ)
by haru733 | 2012-12-15 00:00 | アメリカ映画 | Comments(0)

『深夜特急 第一便 黄金宮殿』 沢木耕太郎

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 沢木耕太郎によるノンフィクション旅行記、全3部作。初版は1986年、通貨の価値や、国の様子は移ろっても、良くも悪くも普遍のバックパッカー精神がここにある。
デリーからロンドンまで、2万キロの道のりを乗合いバスで旅することを思い立った、〈私〉26歳の旅路。
第一便では、まだスタート地点デリーにさえ遠く、アジアの国々を放浪ちゅう。
とりわけ、黄金宮殿という名の奇妙な宿に長居した香港と、サイコロ博奕に取り憑かれたマカオでの日々が熱い…!

旅行記は数あれど、巧みな文章に引き込まれて、これほど笑えてスリリングかつワクワクするものは、なかなかない。こうして読んでいると、じぶんの冒険少なな旅が惜しまれてくるね。もっと警戒心を取り払って楽しめばよかったのだなあと、いまさらになっておもう。
とくに香港は、帰国してからじわじわとその魅力に気づいていった国。ダークサイド一度も見ずなんて、ほぼ一年前の旅日記を書いたけど、あえて近づかなかっただけなんだと実感する。ここに出てくる“廟街”へも行かなかったのが悔やまれる。先に読んでいたら良かったな。
いつか、リベンジ旅ができればいいけれど、、

第二便ではついに乗合いバスの旅がスタート。私的に思い入れあるインドという国を、若き日の沢木耕太郎氏がどのように見たのか、続きがとてもたのしみになった。
by haru733 | 2012-12-14 21:33 | | Comments(0)

さよなら子供たち (1987年)

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時代背景のたまらなくノスタルジックな、ルイ・マル監督の半自伝的、晩年の佳作。

ナチス占領下のフランス、カトリック寄宿学校に疎開しているジュリアンは、転入してきたボネと友情を育むが、彼は収容所送りを免れるため名前を変えたユダヤ人だった―。


寄宿学校ならではの静謐のなかで、四六時中生活を共にする少年たちの、いたずらや腕白の日々がとても瑞々しい。
ドイツ兵が街を横行しても、空襲警報に脅かされるくらいで、大人たちほど悲観的に暮らしていない元気な子供たちに、飾らない良さをいっぱいかんじる。

いまだに親元を離れて寂しいジュリアンと、なにやらワケありの転入生ボネは、さいしょ、お互いを意識しあいながらも、相手の様子を窺うていどの仲だった。
なんでもできるボネにライバル心を抱きつつ、プロテスタントだという彼の変わった行動が気になるジュリアンだったが、いつしか、ふたりの間には言葉にならない純粋な友情が芽生えていく。

素材そのまま、見事なまでにさりげなく、激動の時代のなかでジュリアンが経験する、初めての深い友情と別れが描かれている。

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裕福で優しい母親のいるジュリアンと、ひとりぼっちのボネ。ボネは素性を隠した自分の運命をどこか諦観してるようなところがあって、ついにゲシュタポに連行されていく段になっても、いつもとおなじ表情を崩さない。
涙を流すのはジュリアンばかりで、その淡々とした演出がたまらない。
ふたりは互いの愛読本を交換して、さよならをする。当然、ボネの未来にあるのは“死”だけれど、あくまでドライに閉じる幕切れが素晴らしかった。粉飾なしの切なさは、なにものにも代えがたい。
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ルイ・マル作品はまだあまり知らないけれど、『地下鉄のザジ』や『死刑台のエレベーター』が記憶に新しい。それぞれ趣向が違っていておもしろい。
はじめてのルイ・マル作品は、忘れもしない萎え映画『ダメージ』で・・・・こちらは好きになれなかった。以後しばらくは、マル監督に変な先入観を抱いていたものだった。

                                    (103min/フランス=西ドイツ)
by haru733 | 2012-12-13 00:00 | フランス映画 | Comments(2)

ヒミズ (2011年)

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 一年を纏めるにはまだちょっと早いけれど、ことし出会った初見の映画のなかで、私的に一等良かった作品を挙げると、『KOTOKO』や『ムカデ人間1,2』『その夜の侍』『海炭市叙景』、古いもので『キャバレー』『美しき冒険』かなとおもう。
鬼才・園子温監督が、古谷実の同名コミックスを映画化した本編もまた、ことし観た脱帽の佳作だった。


貸しボート屋の息子・住田祐一(染谷将太)は、愛のない両親に育てられ自らの未来に絶望していた。
彼に好意を抱いているクラスメイトの茶沢さん(二階堂ふみ)は、似た境遇にありながらも努めて明るく振舞い、積極的にアプローチを繰り返している。
腐った大人にはならないと耐え続けてきた祐一の運命は、しかし、蒸発した父親(光石研)が戻ってきた日を境に、大きく狂い始めてしまう――。


絶望、絶望、絶望、絶望・・・・・・そして希望・・・。
マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した、染谷将太と二階堂ふみの力強いもがきや、叫びが、物凄い。
震災後の情景を舞台にしたことで、その絶望が被災者のそれと重なり、彼らの再生や希望は、苦しむ人々を救って、復興さえ後押ししてくれそうな力強さに満ちていた。

津波で荒涼とした土地、荒廃した心。祐一と茶沢さんを見守ってくれるのは、唯一、ボート屋の傍に住み着いた、良心溢れる変わり者のホームレスたちだ。
渡辺哲、諏訪太朗、吹越満、神楽坂恵ら、園ファミリー勢ぞろいで若者たちの咆哮を抱きとめる。

人でなしの大人オンパレードのなかで、祐一は、自分だけは清く平凡な大人になりたいと思っていた。そう願っていたのに・・・・ささやかな望みさえ奪われ、気がつけば血は争えない父親殺しの犯罪に手を汚していく・・・・。
しかし、絶望から容赦なく転落していく祐一を、たったひとり気丈に引きずり上げる茶沢さんの頑張りは、そんじょそこらに転がっていない、ダイヤモンドの原石みたいにひときわ輝いている。いじらしくて、強靭で、二人の壮絶な芝居は脱帽ものとしかいいようがない。末恐ろしいほどの見事な掛け合いは、バンザイしたくなるほど立派だった。
たった15歳、されど15歳。人生観に泣けて胸がイタい。どんなに狂っていても、ピュアなハートは絶望ののち晴れてほしい。ちょっぴり幻想的で過酷すぎる物語は、幕を閉じるまえに観客に強力なメッセージを残していった。
繰り返し流れるテーマはモーツァルトの『レクイエム』で、情感をさらに引き立てて心に沁みた。

せんじつ『その夜の侍』で顔面にプリンを塗りたくる堺雅人がスゴイとおもったばかりだけど、染谷くんの顔面絵の具シーンも、相当にすごかった。彼は若手実力派俳優ナンバーワンではないだろうか。
はじまりは『気狂いピエロ』か、その後もトラン・アン・ユンの『シクロ』など、顔を染める象徴的なシーンには名場面がいっぱいだ。

ちなみにタイトルの「ヒミズ」とは「日不見」と書いて、日本固有のモグラ科の哺乳動物。暗闇に生きる主人公に例えているとおもう。
茶沢さんが幾度も朗読する印象的な詩はフランソワ・ヴィヨン。

  牛乳の中にいる蠅 
  その白と黒はよくわかる 
  どんな人かは 
  着ているものでわかる 
  天気が良いか悪いかもわかる 
  何だってわかる 
  自分のこと以外なら


「軽口のバラード」、詩集を手にとってみたくなった。



                                          (129min)
by haru733 | 2012-12-08 00:00 | 日本映画 | Comments(4)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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