人気ブログランキング |

<   2013年 06月 ( 16 )   > この月の画像一覧

八甲田山 (1977年) 生死を分けた過酷な行軍の記録

 新田次郎の山岳小説『八甲田山死の彷徨』を元に、日露開戦に備えて、八甲田山を南北から踏破するという、実際に行われた行軍訓練の壮絶な顛末を描いたドラマ。
明治35年、死者数210名中199名。史上最大の山岳遭難事件となる―。

少数の精鋭で綿密な計画を立てた徳島大尉(高倉健)率いる弘前連隊はまったくの無事であったのに対して、雪山を侮った山田少佐(三國連太郎)率いる大規模な青森連隊は、ほぼ全滅に追い込まれるという皮肉。
実話ベースの男気映画としても、サバイバルものとしても、期待以上にたのしめました。
悪者役が似合う三國さんや、無骨さが魅力の健さんなど、じつに『飢餓海峡』のときよりも、おふたりは輝いていたとおもう。そこに豪華すぎるキャスト陣と、若き北大路欣也氏の存在感がすばらしいです。

極寒の地、豪雪を掻きながらの彷徨に、身の凍える思いがする3時間。雪山のリアルさが足りないという感想も目にするけれど、当時の過酷なロケを想像すると立派なものではないでしょうか。

d0235336_23305113.png冬山の恐さが刷り込まれた北国人としては、こんな無茶な行軍、聞いただけでも恐ろしいですが、さらに防寒着が明治なわけです....近年でみるところの『劔岳 点の記』です。過酷さは、想像するに余りあるのでした。
八甲田山1584m、剱岳2999m、標高の差こそあれど時代はほぼおなじ。
ちなみに撮影は後に『劔岳』で初メガフォンを取ることになる木村大作氏。

命令に背くことはできず、命の危機を察しながらも、部下とともに、双方から山へ入る徳島大尉と神田大尉(北大路欣也)。
「八甲田山で会いましょう」
互いの希望となるべく、そう約束し合った、ふたりの大尉の男の友情が泣かせます。
無謀な上官の元、命を落としてしまった神田大尉の亡骸に対面して、つと感情を溢れさせる健さんの男泣きが、何度みてもいい。

 (監督 森谷司郎/169min)
by haru733 | 2013-06-30 00:00 | 日本映画 | Comments(0)

『凍』 沢木耕太郎 / 運命を分けたザイル (2003年)

d0235336_1420245.jpg
 もはやドキュメンタリーの域を越えたすごい一冊でした。
山野井泰史・妙子夫妻のストイックさ、徹底した自己責任における完璧に自由な人生、深い信頼関係、なにをとっても凄まじくって、ちょっと羨ましくて。
2002年、ヒマラヤの難峰ギャチュンカンで置かれた、絶望的な状況下からの奇跡の生還。
まるで目の前に起こっていることのように、手に取るように、当時の心境と壮絶さが伝わってきます。
心理の細部は、おそらく、山野井泰史著『垂直の記憶』を参考にしているのではないでしょうか。
たぶん、そうなら、近く読みたい。
それにしてもリアルでした....

クライミング用語を覚えたところで実物が観たくなって、山岳映画を2本観ました。
本書にも登場した、シウラ・グランデ峰におけるジョー・シンプソン&サイモン・イェーツの山岳事故を本人出演で映像化したドキュメンタリー『運命を分けたザイル』。と『八甲田山』。


『運命を分けたザイル』 (2003年)
d0235336_14565043.jpg














 1985年、若き英国人クライマー、ジョーとサイモンは、アンデス山脈の難関、標高6600mのシウラ・グランデ峰西壁を制覇し登頂に成功する。しかし、下山途中、ジョーが滑落した衝撃で片脚を骨折してしまう。2人をつなぐザイルを切るしか、サイモンが生きて還る道はなかった....

『凍』で知ったアルパイン・スタイルの登攀を映像で見ると、あらためて身の竦むおもいがします。過酷で、ストイックで、とても信じられない。命知らずの度胸。
彼らほど、肉体と精神の極限を知る者はないし、彼らのように諦めないことは、並の人間にはできない。
人間は、諦めた時に死ぬのだそうです。
by haru733 | 2013-06-29 19:24 | | Comments(2)

紋別岳 *初夏

d0235336_2073319.jpg

 気温があがりジリジリする日差しのなか、紋別岳に登ってきました。眼下にはモヤで霞んだ支笏湖、すっきり晴れていればすばらしい景観の山です。標高865m、登り1時間半―下り50分、全行程3時間。

山頂にあるNTTの無線施設へむかう舗装された車道が登山道。アスファルトのうえを歩く登山とはどんなものだろうと内心おもっていましたが、ほどよく崩れボロボロになっている道は、木々に囲まれて違和感ありません。森林浴しながらのトレーニングのよう。
d0235336_209691.jpg

d0235336_20103527.jpg

ところどころ、雪崩よけの高いフェンスがありますが切れ切れになっているから眺望もよし。
途中、モグラやトリやキツネなど生き物たちが死んでいて、なんどか家人とギャと叫ぶ。
熊のいそうな気配はありませんでしたが。
d0235336_2011447.jpg
d0235336_20123915.jpg

霞んでいなければ、もっとずっと遠くの山々や山脈まで見晴らせただろうとおもうと、ちょっとザンネン。
アンテナのむこうには雲に隠れた恵庭岳。対岸の樽前山からは、かすかに噴煙があがっているのが見えました。流石に平日はひとも疎らで、静かにおむすびを頬張り、コーヒーを飲んでから下山。

下りは、笹薮にできた獣道でショートカット。ウワサに聞いていた急斜面の直滑降がかなり膝やつま先につらく、あとは大人しくアスファルトのうえをひたすら足に鞭打って下りました。
d0235336_20133596.jpg
d0235336_20143023.jpg

d0235336_20143763.jpg

今日見た花。たくさんのハクサンチドリと、蕾の美学しているタニウツギ。ウツギは開くと可憐なピンクになります。
d0235336_20152995.jpg

なんとなくウェルカムとは言えない登山口の看板とバリケード。この手前に入山ボックスがあります。黙認風。
d0235336_2015443.jpg

早い時間の支笏湖は、こんなにも深いモヤに包まれていました。
by haru733 | 2013-06-26 23:59 | | Comments(2)

八剣山 *初夏

d0235336_21562917.jpg

 ふたたび、八剣山に登ってきました。国道からの姿が一際目立つ山。小ぶりだけれど達成感があります。
木々の豊かな湿った山道で一気に高度をかせいで、あとは頂上まで乾いた岩場をじりじり登っていきます。
春に来た時よりも、緑が濃くて、遠くの山の残雪はずいぶん減りました。豊平川の色は春ほどキレイではなくなっています。
それにしても、心肺機能が悲しいほどに軟弱で、ちょっとすると動機と息切れがする、じぶんのカラダが情けない。鉄か、鉄が足りないのか。
d0235336_21594712.jpg

d0235336_2158482.jpg

街や下界を俯瞰して心身がリセットされていく登山は、やはりとてもたのしいです。
by haru733 | 2013-06-23 00:00 | | Comments(2)

『映画館(ミニシアター)のつくり方』 映画芸術編集部 / そして十勝の映画事情

d0235336_1446060.jpg
 これからの映画館はどう変わっていくのでしょう。世界各国の良質な映画を観続けたい、そう願う一映画ファンとして、足繁くシアターへ通うことくらいしかできないけれど、ずっと残って欲しいものです。

大黒座
名古屋シネマテーク

シネマスコーレ
新潟・市民映画館シネ・ウインド
 
京都みなみ会館 
シネマ5

シネマルナティック  
シネマ・クレール
シネ・ヌーヴォ 
シネマ・トーラス
シネモンド  
シネマテークたかさき 
第七藝術劇場 
シアタープレイタウン 
桜坂劇場 
シネマ尾道

16の映画館が原稿を寄せています。

『映画芸術』誌で2004年から2008年にかけて不定期連載されていた「映画館通信」を大幅に加筆修正して単行本化。全国で住民に愛され続ける16の“ミニシアター”の現場の声と、ミニシアターの開業・運営の具体的ノウハウ、独立系映画館を経営する幸福と苦悩が凝縮した、すべての映画関係者&映画ファンに捧げる珠玉の一冊。  (「BOOK」データベース)


長くなりますが、一部、気に入ったところを抜粋すると―
■1993年にさらなる「流通革命」が起きる。シネコンの登場である。(まえがき)

■ミニシアターの「ミニ」は、単に座席数が少なかったり画面が小さかったりということだけではない別の意味、質の高さやきめ細かさなどを意味するものでありたい。例えるなら、豊臣秀吉の豪華な書院造り(シネコン)に対する、千利休のわびさびのある茶室というような、シネコンとは異なる価値観をミニシアターは提示することが必要だろう。 (シネマ5 代表)

■映画を見るということは個人的な行為だと思う。ときに映画は何かとつながるものとしてではなく、映像や音をもってしても、受容しえないその映画の距離とほころびを、映画からいったん離れてしまった後も、なぜそう感じたか、ということと共に、現実の行為として抱えさせる装置なのかもしれない。そういった違和感を、共感と同時に受け入れてきた観客がおとずれた映画館の形を存続させていきたい。 
(中略)
映画産業にかかわる人々が、今、何の焦燥も感じずに、映画館の暗闇で無目的に映画を楽しむことが出来るのだろうか。映画館は、作り手にとっても、観客にとっても、かつてそこで映画が上映さえていたという記憶の場所となっていくのだろうか。もし映画館が失われても、映画があればいいという考え方もある。では、映画は残るのか。 (名古屋シネマテーク スタッフ)

■日本映画の本数が多くなったが、本当に素晴らしいと言える作品がどれだけあるだろうか。確かに10年ほど前に比べると、日本映画は見るべき作品が多くなってきたように思うが、現状の中で当館がその全てを上映できないのは残念である。 (シネマ・クレール 支配人)

■とにかく潰すわけにはいかない。テレビで宣伝していない映画の中に、珠玉の映画体験があることを伝えられる、その場所がここにちゃんとあるのだから。 (シネマテークたかさき 支配人)





余談ですが、故郷、十勝の帯広にも、かつて映画館はたくさんありました。1999年ごろまで、「キネマ館」「キネマ2」「キネマ5」「プリンス劇場」「グランドシネマ」「シネマアポロン」「テアトロポニー」「帯広ミラノ」「帯広シネマ」と、なんと9館もの劇場があったそうです。わたしもたくさんお世話になりました。
それが2013年現在、駅前にできたシネコン「シネマ太陽帯広」のみという現状は比較的文化水準の高いはずの十勝には憂うべき事態。
NPO団体による唯一のミニシアター「Cineとかちプリンス劇場」は、老朽化により昨年9月30日に閉館。
その後、移転先は見つからず、ホームグラウンドなしの活動が続いているそうです。名画の灯が消えないように、良い場所が見つかることを遠い空から祈るばかり。
ちなみにその老朽化した古くて狭い建物は、むかし「プリンス劇場」があったところで、遠い記憶を辿ると、中学生時代、ジェッキー・チェンの『プロジェクト・イーグル』を観たのはこの館でした。

そして、札幌はというと、『シアターキノ』と『蠍座』の2館のミニシアターが現存しています。ファンとしては手放しで刺激的な映画環境を満喫させてもらっているけれど....ときおり経営難をつぶやかれるコラムに出会うとき、ハッとさせられるのです。安心してちゃいけないと、よりおおく劇場で観ることで映画そのものを守る意識を持たなければいけないと。
by haru733 | 2013-06-22 16:56 | | Comments(0)

飢餓海峡 (1965年) 飢餓感に蝕まれた時代を巡る運命劇

d0235336_859842.jpg

 せんじつまで札幌のミニシアター“蠍座”では、三國連太郎追悼企画として『飢餓海峡』がリバイバル上映されていました。気になりつつも終わってしまい、しかたなく今回はDVDで。
物心ついた時から三國さんは『釣りバカ日誌』のスーさんで、役者としての凄みを感じさせる立派な主演作を見ておきたかったのでした。

水上勉の同名推理小説を内田吐夢が監督した、サスペンスタッチの壮大な人間ドラマ。
昭和22年、函館地方を襲った台風で青函連絡船が転覆、折しも岩内町では大火が発生する。火災は質屋の店主を殺害し現金を奪った犯人による放火と判明。そして転覆した連絡船からは二人の身元不明死体が見つかり、質屋に押し入った三人組強盗のうちの二人であることが分かるのだった。函館警察の弓坂刑事(伴淳三郎)は、事件の夜に姿を消した第三の男、犬飼多吉(三國)を追って下北半島へ赴くのだが....。
物語は、迷宮入りした放火殺人事件から10年。樽見京一郎と名を変え、舞鶴で名士として成功している犬飼の元に、あの事件の日親切にされた下北の娼婦・八重(左幸子)が訪ねてきて劇的な変化の様相をみせていく―。
d0235336_8595390.jpg

砂の器』と並び称されるだけあって、鑑賞後の印象は似ています。年代特有の古さがある殺人事件を追う刑事ものは火曜サスペンス劇場のゴージャス版のよう。日本映画を代表する傑作にむかってとても失礼だけれど。
黒澤明監督の『天国と地獄』を新鮮な驚きを持って観たことをおもうと、3時間を長くかんじた本作は過大に期待し過ぎてしまったのかもしれません。

10年前の逃亡のさなか、しとねを共にしたあと犬飼は、親切な八重に盗んだ金から大金を包み去ってゆくのでした。その金で借金を返して都会へ出て親孝行まで果たした八重は、たった一夜の情交で得た恩を忘れられず、犬飼の残していった親指の爪を大切にしまい込んで心の支えにしてきたのです。
そんな彼女が、ふと手にした新聞。そこに犬飼の顔を見つけた衝撃は大きく、居てもたってもおられずに名前こそ違えど写真の男・樽見京一郎を訪ねていったところで、第二・第三の悲劇は起こるのです。

廉潔とはいえないまでも懸命に生きてきた八重の無念の短い人生。事件に翻弄されながらも父親として立派に息子たちを育てあげた弓坂刑事の人生。そして、敗戦後のどん底からのし上がろうと強かに生きる犬飼の人生が絡まりあう。10年間の物語は、中だるみはあるけれど、構成は緻密。なかなか見ごたえがありました。
やがて追い詰められた犬飼の見事なラストシーンは圧巻、日本映画史に残る名デッド・シーンではないでしょうか。

 (183min)
by haru733 | 2013-06-21 00:00 | 日本映画 | Comments(0)

プロメテウス (2012年) 人類のルーツを求めて

d0235336_22133258.jpg

 子どものころ、SF映画のパラダイムといえば『エイリアン』でした。四作までつづいた『エイリアン』はリドリー・スコットにはじまり、ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・フィンチャー、ジャン=ピエール・ジュネと名だたる監督たちによってシリーズ化されたお気に入り。
その世界観を再び描いた本編は、人類の起源を求めて未知の惑星へと旅立った宇宙船プロメテウス号の乗組員が目の当たりにする驚愕のドラマを描いたSFミステリー。

いたるところにある『エイリアン』へのオマージュがたのしい。あの頃、最強の女と信じて疑わなかったシガーニー・ウィーヴァーの(あえてそう呼びたい)後任は、中性的で締まった肉体を持ち、今後スキンヘッドにだってなれそうな『ミレニアム』シリーズのノオミ・ラパス。続編がありそうな予感がします。

2089年、世界の古代遺跡が地球外知的生命体からの“招待状”であることを発見した科学者のエリザベス(ラパス)とホロウェイ(ローガン・マーシャル=グリーン)は、巨大企業ウェイランド社が出資する宇宙船に乗りこみ、はるか彼方の惑星を目指します。2093年、長い人工冬眠から目覚めた彼女たちは、ついに目的の惑星に降り立ち、人類を導いた未知の生命体を探し始めるのでしたが....
d0235336_22134547.jpg

エイリアンの卵そっくりな惑星人たちの墓、寄生妊娠、白い体液を持つアンドロイドの活躍.....
ウェイランド社の思惑など絡み、映像技術は進化しても到底かのシリーズには敵わない作品であるけれど、シリーズが好きだったファンにはうれしくなるシーンもおおいのではないでしょうか。

余談ですが、宇宙船内をひとりの男が理知的な物腰で動き回っている―そのオープニングがいいのです。精巧なアンドロイドであるデヴィッドは、『エイリアン2』でいうところのビショップで、彼を彷彿とさせるキーパーソンを演じているのは、さいきん殊に気になるマイケル・ファスベンダー氏。彼の風采端麗ぶりはアンドロイド役も似合います。このひとはほんとうにカッコいい。

(監督 リドリー・スコット/124min)
by haru733 | 2013-06-20 00:00 | アメリカ映画 | Comments(0)

空沼岳 *初夏

d0235336_20151595.jpg

 2年前の秋、台風あとの過酷なコンディションのなか登った空沼岳へ。今回は山友達とふたりで。
いつになく快晴で汗いっぱいかきましたが、初夏とはおもえない残雪が行く手を阻みます。
万計沼までは1時間半。ここでしばらく景色を眺めながら休けいして、第二の目的地、真簾沼を目指しました。山頂まではムリだよーと、引き返してくる方々に教えられながらも、行けるところまで登っていくと、沼のすぐ手前が溢れた雪解け水で冠水していて、わたしたちの靴ではとうてい先へは進めないのでした。
d0235336_20163936.jpg

緑と青と白のコントラスト。ものすごく暑いのに、歩いているのは雪の上。
ときどき、踏み抜いては埋まって登りにくいけれど、手に触れる雪の感触と涼しさが、疲れを癒してくれました。
d0235336_20175571.jpg
d0235336_20171592.jpg

d0235336_5312443.jpg

山頂へはいけなかったから、山の上らしい写真はこれだけ。標高900mくらいでしょうか。
d0235336_20181656.jpg

万計沼よりすこし手前、登山道から逸れて下ったところに、この青沼がありました。なぜか前回はまったく気がつかなかったのだけれど。終わりかけのミズバショウを観ながら、蕾の美学というものを知るひととき。
d0235336_202484.jpg

激流に掛かる丸太橋は梯子もどきで補強されていて、ちょっとはマシになっていたけれど怖いよー
別名、泥沼岳でドロドロになった靴は滑り、慎重にしんちょうに渡りました。
全行程5時間半のたのしい登山でした。
d0235336_2019768.jpg

きょう見た花―ツバメオモト、シラネアオイ、エンレイソウなど。蕾の美学しているエゾアジサイ似の白い花がかわいくて名前を調べてみると、葉や花びらが丸いスイカズラ科のオオカメノキだそう。
by haru733 | 2013-06-15 17:51 | | Comments(2)

ローマでアモーレ (2012年) すべての愛はローマに通ず

d0235336_2091939.jpg

 毎年一本の映画をコンスタントに送り出しつづけているウディ・アレン監督最新作。観れば楽しいとわかっていながら、多産ゆえにタイトルだけで満腹になってきた感のあるアレン作品は、『スコルピオンの恋まじない』以来だから、なんと10年ぶり。劇場で始終ニヤつきながら観た本作は、やはりおもしろかった。
ローマを舞台に、老若男女の悲喜こもごもをシニカルかつユーモラスに描いた群像ラブ・コメディ。

なんとも豪華なキャスティングで同時進行するのは、たとえば、旅先のローマでイタリア人と婚約した娘に会うため、アメリカから飛んできた元オペラ演出家夫婦(アレン×ジュディ・デイヴィス)の物語や、小悪魔的な恋人の親友モニカ(エレン・ペイジ)に惹かれていく建築家の卵ジャック(ジェシー・アイゼンバーグ)の物語、田舎から上京したしたばかりの新婚カップルに浮気の火種が降りかかるエピソードなど4つ。
d0235336_2092082.jpg

新婚ホヤホヤの新郎を誘惑するグラマーなコールガール役にペネロペ・クルス、ごく平凡なローマの中年男役にロベルト・ベニーニなど、この適材適所ぶりはお見事!
建築家ジャックの移り気に軽妙な忠告を与えるアレック・ボールドウィンなど、狂言回しでもある彼のフシギな立ち位置は、練られた洒脱な脚本をさらにたのしくしてくれます。
d0235336_2093935.jpg
等身大の青年像が似合うジェシー・アイゼンバーグと小悪魔エレン・ペイジ ↑

d0235336_2094113.jpg

とはいえ、ほんとうに会いたかったのはロベルト・ベニーニ、この人であるなんてやや照れくさくて大声ではいえない。しばらくお目にかかれなかったベニーニ氏はちっとも変わっていず、ホームグランドで放つマシンガントークは私的に無条件幸福になるのでした。

(111min/アメリカ=イタリア=スペイン合作)
 
by haru733 | 2013-06-13 00:00 | 多国合作映画 | Comments(0)

ミスター・ノーバディ (2009年) 誰でもない、二度と戻らない

d0235336_20114895.jpg

 せんじつの『トト・ザ・ヒーロー』がだいすきだったジャコ・ヴァン・ドルマルによる、13年ぶりの監督作。
医学の発達で不老不死の世界となった近未来を舞台に、もはや唯一にして最後の“死を迎える人”となった世界最高齢の老人(見事な老けメイクのジャレッド・レトーがすごい)が、自らの過去を振り返り、彼が選んだ、あるいは選んだかもしれない3人の女性と辿る幾通りもの人生を、美しい映像とともに壮大なスケールで描き出していくSFヒューマン・ファンタジー。
『トト』でも印象深かった音楽は、ドルマル作品すべての音楽を担当している、監督の兄で、今は亡きピエール・ヴァン・ドルマル氏。

118歳の老人ニモが死の床で回想する、懐かしくも痛々しい記憶の断片。3通りの人生すべてが真実にも妄想にもおもえてくる、後悔とノスタルジーで彩られた目眩くファンタジーは、人好きのするユーモアと、瑞々しい初恋のイタミと切なさで溢れています。
ドルマル監督が描く初恋の描写は、琴線に触れるものばかりでこころを持ってかれる。
d0235336_20115124.jpg

圧倒的な映像の美しさと、バタフライ・エフェクトや物理学に分入ったような、哲学チックな脚本が魅力。些細な出来事が未来を分ける、可能性や不可能性にドキドキする。何をすることができて、何をすることができないか―SF映画ばりにリアルな近未来と、ノスタルジックな回想シーンを巧みに行ったり来たりして、もう二度ともどらない過ぎ去った時に想いを馳せる、切ない切ないフシギなファンタジーでした。

 (137min/フランス=ドイツ=ベルギー=カナダ合作)
by haru733 | 2013-06-12 00:00 | 多国合作映画 | Comments(0)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

更新通知を受け取る

カテゴリ

全体
日常



旅行
おでかけ
雑貨
鑑賞
映画index
ポーランド映画
スペイン映画
フランス映画
イギリス映画
イタリア映画
ドイツ映画
トルコ映画
ブルガリア映画
アメリカ映画
日本映画
多国合作映画
韓国映画
中国映画
香港映画
ノルウェー映画
フィンランド映画
デンマーク映画
スウェーデン映画
ロシア・ソ連映画
オーストリア映画
カナダ映画
オランダ映画
ベルギー映画
キルギス映画
ギリシャ映画
スイス映画
アルバニア映画
セルビア映画
南アフリカ映画
インド映画
インドネシア映画
イラン映画
メキシコ映画
ウルグアイ映画
ニュージーランド映画
ポルトガル映画
アイルランド映画
ボスニア=ヘルツェゴビナ映画
ルーマニア映画
モノローグ
脱原発

記録

タグ

(172)
(109)
(82)
(69)
(68)
(59)
(56)
(54)
(46)
(28)
(28)
(26)
(23)
(23)
(22)
(22)
(16)
(16)
(14)
(13)

最新の記事

『記憶の絵』 森 茉莉
at 2015-03-16 22:05
悪魔憑き考 『汚れなき祈り』..
at 2015-03-07 13:16
U Want Me 2 Ki..
at 2015-03-07 09:55
わたしはロランス (2012..
at 2015-03-06 12:41
アメリカン・スナイパー (2..
at 2015-03-06 09:53
市民ケーン (1941年) ..
at 2015-02-23 09:49
ゆうばり国際ファンタスティッ..
at 2015-02-22 21:41
『麦ふみクーツェ』 いしいしんじ
at 2015-02-22 16:00
藻岩山 *冬
at 2015-02-19 18:00
ありがとう
at 2015-02-15 22:08

最新のコメント

はじめまして 映画に詳..
by ミキ at 18:11
このごろの暖かさ、いつか..
by haru733 at 21:04
昨日は穏やかな良い天気で..
by kanae at 17:04
あのシチュエーションで飛..
by haru733 at 21:24
おかえりなさいませ。 ..
by kanae at 19:51
あけましておめでとうござ..
by haru733 at 22:07
あけましておめでとうござ..
by kanae at 08:01
Merry X'mas☆..
by haru733 at 22:22
merry christ..
by kanae at 23:46
こんばんは。手放しにおも..
by haru733 at 21:35

ブログパーツ

以前の記事

2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
more...

フォロー中のブログ

はなももの別館
ジャックの談話室
salvage anti...
古本とビール アダノンキ
手製本工房 O塾  
Собака и Кошка
やぁやぁ。
OSOに恋をして

ライフログ


麦ふみクーツェ


掏摸(スリ) (河出文庫)


話を聞かない男、地図が読めない女


図書館の神様


爪と目