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原子力発電所事故の不都合な真実 『チャイナ・シンドローム』

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 東日本大震災からもうすぐ3年経つなんて、ちょっと信じられない。3年あれば、ある程度の復興は完了するだろうなんていう考えは浅はかでした。
復興を遅らせている一因、福島第一原発の事故が起こる前に、もしこの映画を観て知っていたら、直後の印象は随分変わっていたに違いない。
米国の原子炉がメルトスルーを起こしたら、高温の核燃料は地中にのめりこみ、地球の裏側にある中国にまで達する―タイトルとなった「チャイナ・シンドローム」の意味がたとえアメリカン・ジョークだとしても、メルトダウンの恐ろしさや原発推進派の隠蔽体質くらい、せめてあの時に知っていたかった。

公開ほどなくして、スリーマイル島で原子力発電所事故が発生してより現実味を帯びた本編は、当時大きな反響を呼んだのだそうだ。立派な社会派作品でありながら、エンタテイメント性を忘れない第一級のサスペンスは、原発を取り巻く後暗さや恐ろしさを見事に描いていてすばらしかった。製作年1979年と、意外に古いことにびっくり。
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TVリポーター、キンバリー(ジェーン・フォンダ)とカメラマン(マイケル・ダグラス)ら撮影クルーはカリフォルニアの原発を取材中、原子炉の事故に遭遇する。事故を究明しようとするカメラマンとともに、次第に深刻さを理解していくキンバリーだったが、テレビ局の思惑によって放送はNGとなってしまう....。やがて運転を再開した発電所では、技師で室長のジャック(ジャック・レモン)が原子炉に甚大な欠陥を発見していたのだが―

原発事故に遭ってから、ただの人気者リポーターだったキンバリーは、真相を公にする使命感に誠実に向き合っていく。カメラマンとともに局の方針に背いて事件の真実を突き止めた彼女の目を通して、いまとなっては生々しすぎる電力会社やマスコミの動きを知ることは、やけにリアルでとてもこわい。

手抜き工事した建設会社が送り込む刺客も、電力会社社長のキレっぷりも、エンタテイメント性に則ってハラハラ感が堪らない。とくに欠陥を発見した室長ジャックが、命懸けで操業停止を訴える終盤の緊迫感などものすごいのだ。制御室を占拠したジャックは、キンバリーたちの協力を得て生放送での告発を試みるのだが...良心が巨大な組織に敵うはずはなく....
いまにも暴発しそうな原子炉の映像が映し出されるたび、それがたとえしょぼいセットだとしても、恐怖の実感はかくじつにある。見逃していた映画ファンとしては、ニーズに答えてDVD発売されたことがすごくうれしい。

ところで福島の核燃料はメルトダウンしてメルトスルーして今はどこにいったのだろう。ブラジル・シンドロームなんて言葉はありえなくても、甚大な汚染被害の行く末は、身の毛もよだつ形で数年後に表れてくるのだろうか。原発が相変わらず世界中で動き続けていることに、軽い絶望を覚えないわけにいかない。

 (122min/1979年製作/監督 ジェームズ・ブリッジス)
by haru733 | 2014-02-28 23:22 | アメリカ映画 | Comments(0)

引越し

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 まだ日の出たばかりの早朝に、道東へむかって車を走らせました。
この春、異動のきまった家人が赴任する先は、わたしの生まれ故郷でもあります。
2時間ほどで片付けて、これから利用することになる市立図書館を覗きに行きました。
以前とは比べ物にならないくらい、建て替えてずいぶん立派になった館は充実していて羨ましくなります。各所で組まれた本の特集がとてもおもしろいの。

それから、ミシュランに載った天ぷら屋さんで遅めの昼食を済ませて、すこしだけ実家に寄らせてもらいました。

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25年も飼っているクサガメの亀吉に会うのはひさしぶり。元気そうで、ちょっと大きくなっている。

いまでは物置と化した私の部屋は、この時期、お雛様代わりのお人形さんたちが並んでいるのだけど、そのなかに場違いな美女を発見しました。

だれから頂いたかわからない、かれこれ30年は経っているという胸像が気に入って、もらって帰ることに。
わがやへ、ようこそ。
うつむき微笑んだお顔が、古物棚に似合うのです。
by haru733 | 2014-02-28 01:09 | 日常 | Comments(0)

小樽文学館 『小樽文学史展』

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 何遍足を運んでも飽きないステキな空間づくりの小樽文学館、開館35年を迎えた企画展をみてきました。
展示はささやかでも変わった視点。ちまちま人形でお馴染みの高山美香さんによる、”職業別明細地図之内小樽”が細かくてたのしかった。
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情緒ある冬の小樽にほだされて、この頃の疲れがすこしだけ回復したかもしれないな。帰り際、新色の出た文学館トートバッグを購って、古書を2冊いただいて館をあとにしました。
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 ロビーの一角に飾られていた江戸時代の雛人形。冠の細工、端正なお顔が味わい深く、どこか気品があるのでした。
by haru733 | 2014-02-24 22:23 | | Comments(0)

変転

 ただでさえ落ち着かない変転の季節に、タイミングをつらまえて新調したダイニングテーブルが届いて、
週末、模様替え熱が疼いてじっとしていられないのでした。
ふたつ並んでいた本棚を、おおきい古家具のほうだけ残してひとつにしたら、あぶれた本がいっぱい。
もう読まない本を古書店へ持っていって、ずいぶんすっきりしました。

尽きない模様替が趣味のようになっていくのは、より心地良い空間を作るため、いつだって。
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by haru733 | 2014-02-24 21:21 | 雑貨 | Comments(0)

甘美なテーマが忘れがたい不朽のメロドラマ 『慕情』

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 誰しも一度は聴いたことのある名曲にのせて、中国系未亡人医師とアメリカ人新聞記者の悲恋を描く。
 1949年、香港。イギリス人を父とする混血娘で女医のハン・スーイン(ジェニファー・ジョーンズ)は、軍人の夫を失い、医療への献身に生きがいを見出していた。そんなある日、彼女はアメリカの新聞記者マーク・エリオット(ウィリアム・ホールデン)と出会う。お互いに惹かれ合い困難を乗り越え愛し合う2人だったが、その幸せは長くは続かなかった....。

甘く愛し合うメロメロドラマで終わらせないのは、ハン・スーインによる自伝的小説を元にしているからか。
奔放な記者マークとの出会いによって解き放たれていく、中国系ハーフの未亡人として生きるスーインのアイデンティティを描いたたしかな人間ドラマは、だからこそ朝鮮戦争によって引き裂かれていくことが素直に切ない。
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本編を観るもうひとつの楽しみは、20世紀半ばの香港の街並みだろう。
黒澤明監督が捉えた戦後間もない日本の、たとえば『素晴らしき日曜日』の東京や、『白痴』の札幌など、今は失われた一時代をフィルムのなかに記憶している、お宝のような映画体系というものがあって、『慕情』もまたそのひとつといっていいとおもう。
高速フェリーなどまだない時代、島と島を結ぶのは貧しい渡し舟だけ。木造家屋の目立つ香港の猥雑な街並みは、過去の営みを如実にとどめていてとっても興味深かった。

 (102min/1955年/ヘンリー・キングfilm)
by haru733 | 2014-02-20 21:02 | アメリカ映画 | Comments(0)

手袋

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 篭りがちな冬を過ごしています。映画館へ行く足も遠のいて、はやく春がきてほしい。家に受験生のいる冬とは、こんなかんじなんだな。

きょうは、糸の痩せはじめた愛用の手袋を繕いました。せんじつ閉店してしまったcholonさんで購った手袋は、もう3シーズンめ。あたたかくてデザインもすきだからと、冬の初めに同じようなのを探しにいったけれどなく、そろそろ買い換えたい定番のポーチもなく、そういえばあの頃から、閉店への準備は進んでいたのかもしれません。
北国では必須アイテムの手袋は穿いたまま雪かきすることがおおくて、とくにダメージを受ける指先を適当に補修して毛玉をとって、手洗いしたらすっきりしました。
by haru733 | 2014-02-16 23:01 | 日常 | Comments(0)

壮麗な自然と人間の狂気 『アギーレ/神の怒り』

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 16世紀末、黄金郷エル・ドラドの発見をめざし、アマゾン奥地を進むスペイン軍。インディオに襲われ、あるいは熱病で全滅していく一行.....王国を築くという夢にとり憑かれた副官アギーレ(クラウス・キンスキー)の野望と狂気を描く。 (映画大全集より)

はじめてのヘルツォークは画の力がすごかった。背景に目を奪わせる画力映画体系。イタリアのフェリーニ、ギリシャのアンゲロプロス、メキシコのホドロフスキー、日本の黒澤明など、大掛かりなセットにこだわった各国の作品群は映画を観る醍醐味とおもう。
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過酷な自然や熱病、未開の原住民が放つ毒矢を前に、軍はなすすべなく破滅を突き進む。野望と狂気に苛まれたアギーレ率いる面々は、分隊として河を行き、神父も奴隷も女たちも、例外なく次々に命を落としていく。
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切り立つ山を一列になって下る冒頭の長回しから、巨大筏での川下りまで、終始圧巻だった。
なにが待ち受けるかわからないアマゾンの奥地は恐ろしく、輪をかけて、顔力すさましいギョロ目のクラウス・キンスキーは相当クレイジーで不気味なのだった。

(93min/1972年/西ドイツ)
by haru733 | 2014-02-15 17:17 | ドイツ映画 | Comments(0)

『第二の性』 ボーヴォワール

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 人は女に生まれるのではない、女になるのだ

古今の文学から多数の引用を用いて、社会的に作られていく約束事の性 ”女”について仔細に考察したジェンダー論。

女性にとって、パートナーが本著を読み識っていることは幸せだとおもう。ぜひ女というものを知ってほしいとすすめるとき、意識の高い相手なら、きっと苦痛を感じてでも読み終えてくれるにちがいない。男性にこそ読まれて欲しい名著は、けれども、たいていは読まれないか、途中で放り出されてしまう確率が高そうだ。

胸におぼろげにあった考えが裏打ちされる爽快感。
女は女として生きていくしかないけれど、その精神のありかたがスキだから、女性はたいてい、男が羨ましいといいながら次もまた女に生まれたいと答えるのか知らん。

女とは何か。女と男とはどう違うのか。なぜ歴史の初めから男女という性別に序列がつけられ、女は男より劣った性“第二の性”とされているのか。男たちは法と慣習を通じて、歴史的にどう女の地位を決定したのか―女性を文化人類学、心理学、哲学、神話学、文学といった様々な角度から分析し、女性の置かれている立場を明快に解説した女性論の古典。― 「BOOK」データベースより
by haru733 | 2014-02-11 17:35 | | Comments(0)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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