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宇宙人王(ワン)さんとの遭遇 (2011年) ワンさん嘘つかない

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イタリア、ローマ。中国語翻訳家のガイア(フランチェスカ・クティカ)のもとに、同時通訳を依頼する緊急の電話がかかってくる。仕事内容も場所も機密として目隠しで連れてこられたのは真っ暗な地下室。ワンさんと呼ばれる男性への厳しい尋問を通訳していくガイアだったが―。

マルコ&アントニオ・マネッティ兄弟監督によるインディーズムービー。
イタリア映画のSFは、ほとんど観たことがない。そもそも中国語を操るという宇宙人も見たことないが、その理由が「世界一多く話されている言語だから」と答えるワンさんにすこし笑った。
ワンさんは常に低姿勢、まるで拷問のような取り調べにも真摯に答える。

突然の状況下に怯えるガイアに、追い討ちをかけるように、暗闇からの照明点灯。通訳の相手が完全に地球上のものじゃないワンさんを見て腰を抜かすガイアだったが・・・・苦痛に顔を歪めながらも誠実に応答を繰り返す彼に、いつしかたったひとり味方となっていく。

果たして宇宙人ワンさんの目的はなんなのか。光る装置の正体はなんなのか―。
うすうす感づいてしまうものの、驚愕のオチが待っている。

中国(アジア)への偏見ありあり。ワンさんが聞き分け良く低姿勢であること自体、かなりシニカルだったりする。中国語のやかましいイメージ覆すワンさんの抑えた対応と相反するように、軍関係者たちは非人道的で酷い。
しかし、そんなワンさんが時々耐え切れなくなって、ぶぅんわーー!とエラのようなものを出して威嚇するところはとっても怖い。
ギリギリの取調室から助けを求めて逃げ出すガイアが、命懸けで見たものは、ありえない光景だった―。

いかにも低予算の画面のなかで、失笑と賞賛をかうワンさんの造型が最高。
とはいいながら、、半ドンの仕事を終えた昼下がり、ひさしぶりに映画館でうとうとしてしまった。 (83min)
by haru733 | 2013-01-17 00:00 | イタリア映画 | Comments(0)

悪い種子(たね) (1956年)

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    『トラウマ映画館』 (町山智浩著) に紹介されている作品はどれもマニアックで、かんたんに観られないものがおおいのだけれど、最近一気にソフト化されたらしく、レンタルできるタイトルが増えてきた。
『マンディンゴ』『ある戦慄』『マドモアゼル』『肉体の悪魔』、どれもおもしろそーう。

同名舞台劇を映画化した『悪い種子』は、1956年製作とは思えない斬新なサスペンス。
殺人鬼の実母を持つ母親は、8歳の娘が事故死した少年の宝物を隠していたことを知りショックを受ける。娘は以前にも、ガラス玉欲しさに隣家の老婆を殺していたようなのだ。罪悪感のカケラさえ見せない娘に、“悪い種”のせいだと苦しむ母親は無理心中を図るのだが――。

悪い血は遺伝するか・・・・・・?
殺人鬼の母から逃れ、養父母に大切に育てられたクリスティーンは、愛情豊かで優しい大人に育った。いまではしあわせな結婚をして、可愛い娘にも恵まれた。犯罪者の血は遺伝などしない。
しかし、慈しんで育てた愛娘ローダが、殺人を繰り返す冷血鬼であるかもしれないと知ったとき・・・・・・
恐ろしい矛盾にゾッとなるのだった。

驚愕の少女を演じたパティ・マコーマックがかなり怖い。人前でみせる愛くるしい一面と、悪魔のような一面、子役とは思えない見事な両面性で、悪夢をみせてくれる。
ローダに息子を殺された母親が酔いつぶれては訪ねてきてクリスティーンを責めるのだが、誰かに救いを求めたくても、夫や身近な大人はローダを天使と信じて疑わない。出生からくる彼女の苦悩は、誰にも理解されず、完膚なきまで冷血ローダにしてやられてしまう・・・・おそろしい脚本。
これ以上愛する娘が罪を重ねないため母親にできるのは、娘を殺して死ぬことだけなのだった。

マコーマックちゃんをはじめ、舞台の主演メンバーがそのまま出演していて、役作りや立ち居振る舞いはすでに完成形ゆえ、圧巻の人間ドラマと一級のサスペンスがたのしめる。
ゆいいつ時代を感じるとすれば、天罰という形でローダの凶行に幕が閉じられる“悪は滅び去る″という図式なのかもしれない。


 (監督 マーヴィン・ルロイ /130min)

by haru733 | 2013-01-02 00:00 | アメリカ映画 | Comments(0)

夏の終止符 (2010年)

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  ベルリン国際映画祭で2つの賞を獲得した、劇場未公開作品。
見終えてずいぶん経ったけれど、まだ掴みどころのない良さをうまく言葉にできないでいる。背景が謎に包まれているだけに、受け取る側がうんとドラマを膨らませることができる魅力的でミステリアスな作品だった。

ロシア北極圏辺境の島にある気象観測所。ベテランのセルゲイと新米のパーシャは、放射能の数値を測定し、本庁にデータを送る仕事を黙々とこなしていた。ある日、パーシャに仕事を任せて釣りに出かけたセルゲイは、帰宅後、彼のミスを知り激しく怒鳴りつける。その直後に、家族の危篤を知らせるセルゲイ宛の無線をうけとったパーシャは、八つ当たりが怖くてとても伝えることができなくなってしまうのだった―。

閉塞した孤島に、登場人物はわずか2人だけ。放射線を放つ謎の物体を監視している彼らは、汚染された厳しい自然のなかに孤立した存在だ。外部との接点は無線のみ。家族と離れた孤独な彼らが、かろうじて保っている良識は、些細なことをキッカケに脆くも音を立てて崩れていく。

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どちらにも非はありすぎるほどあるけれど、こんな恐ろしいシチュエーションでは、破綻は必然の結果にみえてくる。
なにをしでかすがわからないセルゲイの粗暴さに身の危険を感じたパーシャは、観測所を飛び出していく。そんな彼を、猟銃を携えたセルゲイが追う・・・・。仲裁する者さえいない島で、事態は悪化の一途を辿るばかりなのだ。
過度の恐怖心と、飢えと寒さで、みるみるガオっていくパーシャの命懸けのサバイブを見ているのは過酷。けれど、なによりおぞましいのは、放射能で汚染した魚をセルゲイの食料庫に仕込む、追い詰められたパーシャの行動だったとわたしはおもう。
放射能というキーワードは、原発事故以来、とてもリアルに恐怖を与えてくるようになった。
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やがて配給船がやってきて、魔の島から解放される日はちゃんとくる。しかし帰還を許されるのはひとりだけ。それがパーシャなのか、セルゲイなのかは、ぜひご覧になってたしかめてみてください。
ふたりの交わす、長い和解と別れと諦めの抱擁が、思いがけないほど深淵な余韻をのこしていく―ロシア発のフシギな骨太サスペンス。


(監督・脚本 アレクセイ・ポポグレブスキー/124min)
by haru733 | 2012-10-09 00:00 | ロシア・ソ連映画 | Comments(0)

ゾディアック (2006年)

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 1968年~1974年にかけて、サンフランシスコで実際に起こった未解決連続殺人事件を元に、それぞれの立場から犯人に迫り、運命を狂わされていった男たちの姿を描く―。

デヴィッド・フィンチャーのサスペンスというだけで期待してしまうのだが、時系列に淡々と事実を並べていく構成は、実話を元にしているだけあって、いつもとやや違っているかもしれない。畳み掛けるこま切れのスタイリッシュな編集は変わらないのだけれど。
全米を震撼させた“ゾディアック事件”を追うのは、サンフランシスコ市警の刑事トースキー(マーク・ラファロ)とアームストロング(アンソニー・エドワーズ)。
そしてもうひと組、“ゾディアック”と名乗る犯人が手紙を送りつづけたサンフランシスコ・クロニクル紙の、記者エイブリー(ロバート・ダウニー・Jr)と、風刺漫画家のグレイスミス(ジェイク・ギレンホール)だった。
4者4様に犯人暴きに躍起になるのだが。

いかんせんプロローグが長く、物語が動き出すまで幾度も眠気に苛まれた。容疑者に肉迫していくグレイスミスに眠気がふっとぶころには、長丁場のすでに終盤。
彼と容疑者アレン(ジョン・キャロル・リンチ)の対峙・・・・あそこがなければ、さいごまで淡々と眠気と闘って終わったことだろう。暗号文の謎解きさえドラマチックではなくて、実話ゆえに演出は抑え気味。
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名優の揃った役者陣のなかでも、一番光っていたのはやはりジェイク・ギレンホールか。原作は、ジェイクが演じた風刺漫画家グレイスミス氏の書いたノンフィクション本。家庭を省みることも忘れて、事件の真相にひとり迫っていくあたりからは急におもしろくなる。

ちなみに、字幕の羅列に疲れて吹き替えで観た映画はひさしぶりかも。


(監督 デヴィッド・フィンチャー/157min)
by haru733 | 2012-10-07 00:00 | アメリカ映画 | Comments(0)

譜めくりの女 (2006年)

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 女の執念というよりも、少女メラニーの執念と復讐を描いた本作は、ピアノ線一本ピンと張り詰めたような緊張感漂うサスペンス。
ピアニストへの夢を絶たれた少女が、その原因をつくった女性ピアニスト、アリアーヌ(カトリーヌ・フロ)への復讐を果たすべく、“譜めくり”となって彼女に近づいていく―。

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美しく成長したメラニー(デボラ・フランソワ)は大人しくて物静か。その復讐の手際は巧妙で、アリアーヌの不安定な情緒を利用したさまがじつに見事。夫の居ぬ間に息子を操り、家族全体を狂わせていく。いかにもフランスなのは、メラニー依存がすすむにつれ、それが同性愛へと進展していく飛躍かもしれない。高慢で無神経だった女が、夢奪われたと信じる少女によって破滅してくドラマは、ありがちといえるかもしれないけれど、静と動の均衡とれた恐怖は素朴な新鮮さだ。
過去にとった無遠慮な行為が、自らをいま奈落へと運んだことをアリアーヌは知らない。恨み言のひとつも漏らさず完璧な復讐を遂げて消えるメラニーに、残暑の一夜をひんやりさせてもらった気がする小粒なサスペンス。


(監督 ドゥニ・デルクール/85min)
by haru733 | 2012-09-20 00:00 | フランス映画 | Comments(0)

砂の器 (1974年)

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  いつかは観ておきたかった野村芳太郎監督の松本清張シリーズ。
暗い過去を背負うがために殺人を犯してしまう天才音楽家・和賀(加藤剛)の宿命を描いた社会派サスペンスで、事件を捜査する刑事役には、丹波哲郎、森田健作が熱演している。

デジタルリマスター版で観たとはいえ、火曜サスペンス劇場を彷彿としてしまうのは、年代特有の古さと殺人事件を追う刑事ものだからか。それでも、物語が進行するにつれて、映画らしさはグンと濃くなっていく。
殺害された男・三木謙一を演じた緒形拳が登場するころには、生き別れた父子の辿った宿命に、深い悲しみでいっぱいになっていた。
三木が殺されなければならなかったのは、天才音楽家・和賀に隠された生い立ちの秘密を知っていたから。当時、島根県の出雲で巡査をしていた三木は、ハンセン病の父と放浪する幼い彼を保護していたのだった。
情が厚い為に、20年を経て東京で殺される皮肉・・・・・実直な生き様を挫いたのは、ひどい差別を生むハンセン病なのだ。
病気による差別を知れば、栄光をフイにすることを恐れて強行に及んだ和賀のことを、手放しでは責められなくなるかもしれない。三木の元を自ら去り、幼い胸を痛めて泣いていた彼がやっと掴んだ成功は、けして幸福と呼べるものではなかったし、コンサートを終えた彼はきっと安堵して連行されていくだろうラストの余韻がとてもいい。
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病に倒れてなお、息子(幼い頃の和賀)を守り放浪の旅を続けた父親役の、加藤嘉の悲痛な表情が印象深い。刑事を演じている丹波哲郎は、霊界との接点さえ感じさせないダンディぶりでカッコいい。若かりし森田健作はそうとう爽やかだ。
私的に嬉しかったのは、“ひかり座”の支配人役で渥美清氏が見られたこと。飄々とした姿がこころをくすぐり、久しぶりに『男はつらいよ』シリーズが見たくなってしまった。渥美さんは野村芳太郎監督作品で幾度か主役を演じていて、『八つ墓村』ではなんと金田一耕助を演じていたことを思い出します。

(143min)
by haru733 | 2012-08-12 18:17 | 日本映画 | Comments(0)

行きずりの街 (2010年)

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 『海猫』『接吻』など仲村トオル氏の作品はとくに恋愛ものが好き。本編は、志水辰夫原作のベストセラーをハードボイルドに描いたサスペンスで、観るまで知らなかったけれど、私的偏愛シチュエーション、教師と生徒の恋愛まで含んでいてちょっと萌っとなったり。

 (あらすじ) 失踪した教え子の“ゆかり”を追って12年ぶりに東京に足を踏み入れた塾講師・波多野(仲村トオル)は、やがてとあるバーへと辿り着く。そこにいたのは、別れたかつての妻、雅子(小西真奈美)だった。彼女は、波多野が名門高校で教師をしていたときの教え子で、波多野は彼女との結婚がスキャンダルとなり学園を追われたのだった。やがて、今回のゆかりの失踪が、偶然にもこの彼の忌まわしい過去と繋がっていることを知るのだが…。

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サスペンスフルとまではいえないけれど、懐かしい窪塚洋介などキレた演技で出演していて、邦画には珍しい系統のアクションシーンも見所。そこに男ざかりの哀愁ある仲村トオルが映えること。
かつて勤めた名門高校の汚職に絡んだ殺人事件にひとり立ち向かう波多野は、自らの過去の罪とも闘っている・・・・12年の時を経て、過去の傷を癒し、赦し合っていく大人のラブストーリーでもあります。妻を演じた小西真奈美が、難しい役柄を艶っぽく品良く演じていて綺麗。

観ながらしぜんと、2000年に公開された『顔』が浮かんできたのだけれど、それもそのはず監督はおなじ阪本順治氏なのでした。骨太な作品にはなくてはならないバブルチックな感性。『闇の子供たち』もぜひ観ておかなければ。


(123min)
by haru733 | 2012-07-26 00:00 | 日本映画 | Comments(0)

ディナーラッシュ (2001年)

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  先日『ソウル・キッチン』を観てから、無性に再見したくなったサスペンス・ドラマの快作。ニューヨークのレストランを舞台にした、一夜の物語で、伏線の張られた小気味よいストーリー展開は、やはり面白かった。
 (あらすじ) 地元の胴元という裏の顔を持つルイス(ダニー・アイエロ)は、イタリアン・レストラン“ジジーノ”のオーナー。将来店を譲ることになる、イタリア帰りでチーフ・シェフの息子ウード(エドアルド・バレリーニ)のおかげで、店は連日大盛況だ。しかし、自分のせいで長年のビジネスパートナーをギャングに殺されてから、ルイスはある思惑を巡らせるのだった―。
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喧騒のレストランで繰り広げられるディナーラッシュの結末は、期待以上のカタルシス。そこへ至るまでの様々な人間模様にとびっきり滋味があるのだった。
戦場のような厨房には、借金帳消しの大博打を打ったシェフのダンカンに、オーナーの座を催促するウード。2階客席には、隣町の胴元に、NY市警夫妻、料理批評家までが顔を揃える不穏な賑わい…。
いつになく濃い客が集まった、この夜の創造主は 、指定席に収まっているルイスか、はたまた第三の男か。カメラは狭い店内を存分に行き来しながら、事の顛末を見せつけて、きっとアッと驚かせてくれる。
エドアルド・バレリーニのちょい悪なイケメンぶりと、厨房の喧騒、これからも機あるごとに再見したくなる作品だとおもう。ボブ・ジラルディ氏はCM界・音楽ビデオ界の監督だそうで、独自の感性と斬新さはいまもまったく色褪せていなかった。

(監督  ボブ・ジラルディ/99min)


by haru733 | 2012-06-22 21:46 | アメリカ映画 | Comments(2)

獄門島 (1977年)

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  だいすきな市川崑監督の金田一シリーズ第3弾。文芸作品では原作に忠実なイメージの市川監督ですが、本編では犯人に脚色を加えているということで有名。
(あらすじ) 終戦直後の引き上げ船で戦友の遺書を預かった友人に代わって、"獄門島"を訪れることになる金田一耕助(石坂浩二)。だが到着して間もなくから、俳句の言葉に見立てた奇怪な殺人事件が立て続けに起こるのだった―。

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敗戦後を舞台にした禍々しさに、孤島の閉塞感、本家と分家の骨肉の争い、どこまでも不吉で不気味なのがたのしい。
「俺が生きて帰らなければ、3人の妹達が殺される」
本家の長男・鬼頭千万太が遺した奇妙な遺言のとおり、妹たちは一人また一人と殺されていく・・・いつもながら凄惨な手口はオドロオドロしくて、蠱惑的な魅力がある。
お決まりの出生の秘密もさることながら、ピーター演じる分家の居候・鵜飼や、白痴の3姉妹、座敷牢にいる精神病の当主など、濃いぃ人物のオンパレード。そこに大原麗子演じる、可憐で心優しい千万太の従妹・早苗が健気に立ちまわっている姿は、いいようのないほど美しい。さすがの金田一探偵も、別れがたいのではと思うのだが、原作にあるらしいプロポーズに似たセリフなどなく、今度もさっぱりと清々しく島を去るのだった。石坂浩二の金田一像は、そのひ弱さ不潔さ、優男ぶりまでピカイチだとおもう。


 監督  市川崑 (141min)

by haru733 | 2012-06-12 17:35 | 日本映画 | Comments(2)

エッセンシャル・キリング (2010年)

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 『アンナと過ごした4日間』で17年ぶりに復帰したイエジー・スコリモフスキ監督の新作。
アフガニスタンで米兵を殺害し拘束された男ムハンマドは、軍用機での移送中、突然の事故で雪深い大自然に投げ出される――。アメリカ兵の追跡から懸命に逃れ、極限のサバイバルを繰り広げる一人のアラブ人兵士の姿を、セリフを排したシンプルな構成で描き出した異色のサスペンス・アクション。
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2003年に監督した『ブラウン・バニー』以降、すっかり干されてしまった感のあるヴィンセント・ギャロが主役を務めることでも気になっていた。アメリカ人のギャロがアラブ人に見えるか否かは別として、ただひたすら逃げつづける姿は鬼気迫るものがある。生への執着と渇望、本能剥き出しのエグみと強靭さ。
d0235336_9323191.jpgもはや人種や宗教の垣根など存在せず、生き抜くことだけに必死な男の姿に、スコリモフスキ監督のシンプルだけど揺るぎない信念みたいなものを感じる。

大自然を前にしては、どんな神を信じようと打ち砕かれてしまう人間存在の弱さ。命を捧げる覚悟さえ虚しい。そんな時、村の一軒家に住む主婦(エマニュエル・セニエ)が、瀕死の重傷を負ったムハマンドを助けるシーンがある。恐る恐る介抱し、食事を与え、追っ手から隠す。彼女の優しさは、ムハマンドの祖国に残してきた妻と、なんら変わりがないのだった。幸せの根源はそんなささやかな家庭の温かさのなかにこそあるのかもしれない。


(83min/ポーランド=ノルウェー=アイルランド=ハンガリー合作)

by haru733 | 2012-04-20 10:24 | 多国合作映画 | Comments(2)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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