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悪の華 (2003年)

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 2010年に80歳で他界したクロード・シャブロル監督の晩年の良作。昨年の<未公開傑作選>として日本では初上映されたもの。
 フランス・ボルドー。豪華な屋敷に住む平安に満ちたブルジョア一族ヴァスール家に、3年ぶりにアメリカからフランソワが帰国する。彼の帰国を喜ぶ義妹のミシェル。義母・アンナは市長選挙に出馬し多忙な日々を過ごしており、父・ジェラールはそれを不満に思っていた。そしてこの一家を見守るリンおばさん。そんな矢先、アンナの元に一枚の中傷ビラが送られてくる。それは第2次大戦末期から脈々とつづく一族の悪夢の連鎖だった。優雅な姿の裏側に隠されていた家族たちの素顔が暴かれていく――。

古典のような格調の高さ、次々展開していくサスペンスに目が離せなくなってしまう。ブルジョア階級の退廃をテーマとした作品を偏愛しているわたしには、控えめだが満点作品だった。
フランソワと義妹ミシェルの近親相姦、浮気を繰り返す父のジェラール、選挙戦に余念のない義母のアンナ、極めつけは父親殺しの過去を持つリン伯母さん・・・・・・近親者との複雑な血縁関係と血ぬられた歴史は、途絶えたかに思えた家族に、悪夢はふたたび襲いかかるのだが。逆境さえモラルさえ、一族の風靡を揺るがすことはなく、素知らぬ顔で収束していく事件に背筋が冷えるおもい。

ヒッチコックの影響を受けているそうで、サスペンスの趣はたしかに類似してるかも。黒澤明の重厚さと、ヴィスコンティの退廃も思い出した。名匠たちの作品を観たあとの充足感は、若い監督にはない滋味がある。


(104min/出演 ナタリー・バイ、ブノワ・マジメル、シュザンヌ・フロン、他/LA FLEUR DU MAL)

by haru733 | 2012-04-20 09:09 | フランス映画 | Comments(0)

灼熱の魂 (2010年)

 
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 至高のミステリーとして話題を呼び各方面で絶賛された、過酷なエンタテイメント。
『お母さん、あなたが生き続けた理由を教えてください』――母に秘められた過去が、胸を揺さぶる。

 (あらすじ) 初老の中東系カナダ人女性ナワル・マルワンは、ずっと世間に背を向けるようにして生き、双子の子どもたち、ジャンヌとシモンにも心を開くことがなかった。そんな普通とは違った母は、謎めいた遺言と二通の手紙を残してこの世を去る。手紙は、二人が存在すら知らされていなかった兄と父親に宛てられたもので、遺言に導かれ初めて母の祖国の地を踏んだ姉弟は、その数奇な人生と、自らの出生の秘密、家族の宿命にはじめて向き合っていく――。

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宗教や宗派間による対立が火種となった内戦で、母親は何度も命を落としそうになりながら生き延びた。許されない恋というのはどこにでもあるけれど、その恋が、死やそれ以上の悲劇を引き寄せるなんて、わたしには到底理解できない世界。殺し合う宗教って、いったいなんなのだろう。
母親が背を向けたのは、世間だけじゃなく、子どもたちに対してもだった。姉のジャンヌは、いち早く中東の祖国へ兄を探す旅に出るけれど、弟シモンはカナダに留まる。まともではなかった母に反抗していたらしいシモンの態度が、たくさんを物語っている。
母の過去を知らずに育った双子の姉弟たちにしても、長男、父親にしても、驚愕の結末を突き付けられて、それでも生きていかなくてはいけない彼らが気の毒でしかたがない。このわだかまりはそういうところから来ている。果たして母に愛はあったのか・・・それさえわからなくなってしまった。
遺言どおり手紙は届けられ、母親の真意が明かされるラスト。結末に納得して劇場を出たはずなのに、時が経つにつれて、更なるわだかまりを憶えるのも事実。

レバノン出身の劇作家原作らしく、内戦の悲劇を扱った、先のよめないエンタテイメントは、あくまでも娯楽である良質のミステリーだった。回想と現実を行き来しながら、抉られるような痛みと恐怖を味わえる。

(監督・脚本 ドゥニ・ヴィルヌーヴ/131min/カナダ=フランス)
by haru733 | 2012-03-30 23:20 | カナダ映画 | Comments(0)

フェイ・ダナウェイ

d0235336_212524.jpg ぐうぜん観たフェイ・ダナウェイ繋がりで、おもうこと。30年代LAを舞台にしたハードボイルド映画の傑作、『チャイナタウン』 (1974年)から。

 私立探偵ギテス(ジャック・ニコルソン)の元を訪れた女がミセス・モーレイの名をかたって罠を仕掛けた。その後、本物の夫人(ダナウェイ)が現れた矢先、ダム建設技師の彼女の夫が溺死体で発見される。ギテスは、事件の背景に町を牛耳る彼女の父親(ジョン・ヒューストン)がいるのを嗅ぎつけるのだが――。

ポランスキー作品は、本編も合わせて、むかしのほうがおもしろかった。(最新作『おとなのけんか』はかなり食指が動くけれど)
探偵ものとしては王道をいきながら、アメリンカン・ニューシネマな雰囲気と哀愁の宝庫。ポランスキーらしいシャレたカットに、仄かなユーモア、きちんと留めを刺してくれる毒の要素が大好きだ。
探偵が、いつしか一線を越えて愛してしまう人妻にフェイ・ダナウェイ。彼女の、鋭利でナーバスなヒロイン像が、ニコルソン以上に映画全体の不健全さを盛りたてていく。物語の暗部には父娘相姦が横たわり、私利私欲に纏わる陰謀と、後味の悪さ、そして見事なデッドエンドが素晴らしい。
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極細眉は、ディートリッヒを彷彿とさせて、非情なヒロインを連想させてしまうかもしれない。しかし実際は哀しい過去を秘めたひとりの女であり、母なのだった。
隙のない脚本は長さを感じさせず、ロスの乾いた大地に、ささやかな愛を渇望する人々の人情味溢れた傑作は、とてもおもしろかった。

(131min)


つづいてもう一作品は、シドニー・ルメット監督の十八番、緊迫感ある社会派ドラマ『ネットワーク』 (1976年)

d0235336_21252433.png (あらすじ) 低視聴率を苦にノイローゼになったニュース・キャスター、ビール(ピーター・フィンチ)が生放送の番組のなかで自殺を予告し、視聴率を盛り返す。彼に目をつけた女性プロデューサー、ダイアナ(ダナウェイ)と社の上層部は、さらに注目を高めるため人間性を踏みにじる狂気の世界へと突き進んでいく――。

 「映画っていいものですねー」とはよく思うけれど、「テレビって節操ないですねー」も同じくらい思っている。それなので、あまり観ないようにはしているのだけれど、こういう作品を観ると改めて、テレビの裏事情に怖気立ってしまう。
ダイアナと老いらくの恋をする、元テレビ局のプロデューサーで、ビールの盟友マックス(ウィリアム・ホールデン)が彼女に放ったラストの台詞がすごい。
「君はテレビの化身だ。他人の苦しみを感じることができないし、喜びを感じることもできない。君がふれるとすべては死んでしまうんだ!」

もう一つ。ビールがテレビ本番中、視聴者に向かって訴えた台詞。

「あなたがたは、テレビによって操られていることを知りながら、それでもなお毎日テレビの前に座り続けている。今からでも遅くない。今、私が画面に映っているこの瞬間に、テレビのスイッチを切りなさい ! 」

嗚呼、コワイ。病んでいるのはけしてビールだけではない・・・ダイアナのけたたましい饒舌もかなりの狂気を孕んでいる。
家庭を捨ててまで、なぜに人徳者のマックスがダイアナを選んだのか、疑問の残るところではあるけれど、別れ際に吐き捨てた前出の台詞には、かなり胸がスッとしてしまう。二人の関係に真実味がないのは、なるほどテレビ界の物語らしくて絶妙。
本編でもフェイ・ダナウェイは異彩を放っていて、ほとんど男しかいない画面に強烈に花を添えている。マックスと初めて過ごす夜、ベッドの上でもずっと業界の話題を大音量で叫びつづけるダイアナは、本作のシニカルな見どころのひとつだと思う。 (121min)


 ちなみに、最近、菊地凛子がフェイ・ダナウェイに似てるなーと思ったことがあった。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の『バベル』を観たときだ。意識してのことか、ただ似ているのかはわからないけれど、エキセントリクさも似ている気がする。
アカデミー賞にノミネートされて話題となった『バベル』は、じつはわたしはあまり好きになれなかった。ライフルを巡る三つの物語が<要因⇔結果>のようにして繋がっていくお話で、日本のシーンになると拭いようのない違和感に包まれてしまうのだ。アメリカとメキシコはともかくとして、、。
しかも、父(役所広司)と娘(菊地凛子)の関係は近親相姦だったのか、、釈然としないままで、とても現実離れしたものとなっていた。ケイト・ブランシェットとブラピの場面、メキシコの国境で起こったドラマは良かっただけに残念。
by haru733 | 2012-03-15 23:25 | アメリカ映画 | Comments(0)

ソーシャル・ネットワーク (2010年)

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 さすが鬼才デヴィッド・フィンチャー!としか、いいようのないスリリングなノンフィクション群像劇。“facebook”にはノンタッチ、ベン・メズリックのベストセラー本も知らなかったけれど、創業秘話の光と闇はとても楽しかった。微塵も退屈させないスピードフルな演出が見事。

2003年の秋。ハーバード大学の学生にして天才プログラマー、マーク・ザッカーバーグは、ボートクラブのサイト立ち上げに関わる傍ら彼らを出し抜いて、親友のエドゥアルドとともに、ハーバードの学生を対象としたソーシャル・ネットワークのサイトを立ち上げる。それは瞬く間に登録者を増やし、急速に拡大していくのだったが――。


物語はfacebook成功後、訴訟の場面から回想形式で語られる。なぜ親友が、なぜボートクラブのエリートたちが、ザッカーバーグを訴えるに至ったか・・・。
実際のザッカーバーグ氏がどんなか知らないけれど、ジェシー・アイゼンバーグ演じる人物像には、天才なだけに、周囲と上手く付き合うことができない不器用さが滲み出ている。一見、人でなしに見えてしまう人物、けれど本人に悪気はなく、しかし実際はしたたかかもしれない、異才の若獅子。

最新のフィンチャー監督作品がこんなにおもしろいと、『ミレニアム』のリメイク版『ドラゴン・タトゥーの女』 が見逃せなくなってしまうね。


  監督  デヴィッド・フィンチャー
  原作  ベン・メズリック
  脚本  アーロン・ソーキン
  出演  ジェシー・アイゼンバーグ  アンドリュー・ガーフィールド  ジャスティン・ティンバーレイク

   (120min/ THE SOCIAL NETWORK)
by haru733 | 2012-02-04 14:56 | アメリカ映画 | Comments(0)

フェアウェル さらば、哀しみのスパイ (2009年)

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 敬愛する映画監督、エミール・クストリッツァの初主演作品。(写真右)
『黒猫・白猫』『アンダーグラウンド』『アリゾナドリーム』『ライフ・イズ・ミラクル』どれも大好き。役者をやることは知っていたけれど、見るのはこれが初めて。初主演にかかわらず、堂々たる演技で、しかもとてもいい表情と佇まいだった。

1981年──ソ連崩壊のきっかけとなった、ひとりの父親の真実の物語。

ソビエト連邦を崩壊させたきっかけの一つともいわれる、実在のスパイ事件“フェアウェル事件”を基にしたヒューマン・サスペンス。愛する息子と祖国の未来のため、危険なスパイ行為に及んだ男の実像と、民間人でありながら仲介役としてスパイ活動の一翼を担ったフランス人技師の葛藤を、それぞれの家族との関係を軸に描き出していく。

ソ連国家保安委員会(KGB)の幹部、グリゴリエフ大佐(クストリッツァ)は、ソ連の未来に危機感を抱く孤独で信念の強い男。一方、上司に頼まれるまま、大佐からの機密情報の運搬役となっていくピエール(ギョーム・カネ)は、一介の技師に過ぎなかった。
危険な役を押し付けられたピエールは、はじめ躊躇し手を引こうとするのだが、いつしか二人の間には友情が芽生えていく。ソ連崩壊前夜まで、命懸けで世界を揺るがし続けた彼らの生き様とその人柄に、並みではない魅力を感じた。
派手さはなく一見地味だけれど、静かにこころが震える作品となっている。

製作国フランスらしく、レーガン大統領が、役者から抜けきらない無能な人物のように描かれているのが、じつにシニカル。レーガンに限らず、ミッテランやゴルバチョフも、そっくりさんが演じている。

歴史の動く瞬間。国益のためなら、市民はまるでちいさな虫けらのように、かんたんに捻り潰されてしまう。
家族を愛し、命懸けで闘ったグリゴリエフ。彼が遺したひとり息子は、父の真実を知った時、ソ連崩壊後、どんな道を歩んだのだろう。
社会主義というものやKGBは、どうしてこうも非人道的な怖ろしさを持つのだろう。

  ―――――――――

 監督  クリスチャン・カリオン
 原作  セルゲイ・コスティン
 脚本  クリスチャン・カリオン  エリック・レイノー

 (フランス/113min)
by haru733 | 2012-01-23 16:57 | フランス映画 | Comments(0)

死刑台のエレベーター (1957年)

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 あまりにも有名なルイ・マル監督による犯罪サスペンス。
社長殺しの完全犯罪を企てた、技師ジュリアンと、その愛人で社長夫人フロランス。殺人現場に残してきた証拠に気づいたジュリアンは現場へ戻ろうとするが、週末に電源を落とすエレベーター内に閉じ込められてしまう。その間に、新たな犯罪が引き起こされていく――。

決行後、落ち合う約束のカフェに、ジュリアンは現れない。それもそのはず、彼はエレベーターの中なのだ。待ちくたびれるフロランスの横を彼の車が通り過ぎ、その助手席には若い女が座っている――という、なんとも粋な誤解が二重にも三重にも、最初の犯罪を盛り上げていて目が離せなくなる。
おもしろかったのは、路駐してあったジュリアンの車を盗んだ若いカップルが、逃避行の果てに行きがかりの第二の事件を、さもかんたんに犯してしまう件。そして、いともかんたんに睡眠薬を飲んで死のうとする温度のなさ。写真が動かぬ証拠となってしまうラストシーン。このへんのフランス映画の描き方が好きだ。
さほど凝った素振りも見せないのに、ふたつの事件が絶妙に絡んでくる妙味が味わえる名作となっている。
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それにしても、ジュリアンの淡々としたパニックの様子がまたいい。アメリカ映画なら「ファーック!ファーック!」とわめき散らすとこだもの。

(モノクロ/92min)
by haru733 | 2011-10-31 22:05 | フランス映画 | Comments(0)

野性の証明 (1978年)

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 先日の「鬼畜」も「野性の証明」も、どちらも1978年に作られた、邦画史に残る骨太映画。
往年の名作とはいえ、時を経てもまったく古臭くなっていないものもあれば、古臭さがまたいいものもあり、本作は迷わず後者といえる。
ツッコミをいれればきりがなく、今では笑って観てしまう場面が多い。ただ役者さんの味だけは鳥肌がたつほど羨ましい層の厚さで、壮絶な演技の目白押し。「鬼畜」の緒形拳さんも、本編の高倉健さんも、なんてステキなんだろう。歳のころは中年でも、マジ惚れしそうな魅力全開。

 東北の寒村で大量虐殺事件が発生。ショックから記憶喪失となっていた、唯一の生き残りの少女を、当時山中でサバイバル訓練を行っていた自衛隊員・味沢は引き取った。退役し、静かに暮らすふたりに、しかし過去の巨大な陰謀が襲いかかる……。

話には聞いていた戦車の登場や、サバイバルで気の狂った隊員の奇行や血みどろの描写は、さすがに時代を感じさせる。角川映画らしい、えげつないほどの。
健さん(味沢)が善人なのか悪人なのか物語が破たんしていて結局釈然としないけれど、頼子(薬師丸ひろ子)との逃避行には、手に汗握っていた。彼を愛してしまった女性記者(中野良子)や、加勢する刑事(夏八木勲)の存在も物語を濃いものにしている。
それにしても、記憶の戻った頼子が真実を知って、いきなり人が変わったみたいになるのはナンセンスだった。情け容赦なし。健さんの渋い演技がなければ最後まで楽しめなかった気がしてしまう。

 (カラー/143min)
by haru733 | 2011-08-19 23:46 | 日本映画 | Comments(0)

127時間 (2010年)

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『スラムドッグ$ミリアネア』のダニー・ボイル監督最新作。パワフルでスリリングに、生きていることの素晴らしさを謳い、絶妙な音楽とユーモアセンスで、映画の醍醐味をいつも実感させてくれる、ボイル作品は大好きだ。

当時27歳だった青年登山家アーロン・ラルストンによる、ノンフィクションの原作を映画化。彼は庭のように慣れ親しんだブルー・ジョン・キャニオンで、この日、アクシデントに遭遇する。大きな落石に右腕を挟まれ、谷底で身動きがとれなくなってしまったのだ。
荒野のど真ん中、誰にも行く先を告げていない絶望的な状況で、いかにして彼は精神と肉体の限界から抜け出し生還したのか・・・臨場感いっぱいに描き出す――。

ジェームズ・フランコ演じるアーロンが魅力的である、その効果も大きいけれど、回想シーン以外ほぼ一人芝居となる90分、飽きることなくハラハラドキドキの連続だ。自然を満喫する人生を謳歌していたアーロンが、窮地に陥ってはじめて後悔するのは、いつも自分を支えてくれていた身近な家族や友人を、なおざりにしてきたことだった。渓谷へ来ることを誰にも告げていない彼を、探してくれる人はひとりもいない。

谷底で思い出すのは、家族や友人たちとの楽しかった日々。水が底をつき、ついに幻覚をみるようになっても、表れるは大切な人たちとの、かけがえなかった日々の場面ばかりだ。

人間は生かされている、そうひしと感じて、胸があつくなってくる。平凡な日常はずっと続いていく気がするけれど、それはたんなる思いあがりで、いついかなる場面で、当たり前でなくなる日がやってくるかわからない。
本来、人生って、そんな危うさのなかで、なんとかバランスを取りながら存在する、ただそれだけのものなのだろう。だからこそ、いまを大切に、人生を謳歌しよう、生きているって素晴らしい! そんなふうにぐいぐい導いていくボイル作品には、素直に心打たれてしまう。
それでいて、説教くささの欠片もないことが、この監督の最大の魅力だ。

いつ谷底に落ちるのか、いったいどうやって腕を・・・・? 当然くるべき決断の場面へと突き進む間じゅう観客はびくびくしてしまう、息つく暇のないエンタテイメント作品となっている。
持つべきものは、強靭なこころと肉体、知恵と知識とユーモア、そして自然を畏怖するこころ。山登りするなら、心得ておこう。そして家族にちゃんと行き先を告げていくことも、忘れないようにしなければ。



†    †    †


監督/ ダニー・ボイル
原作/ アーロン・ラルストン 『奇跡の6日間』
脚本/ ダニー・ボイル  サイモン・ボーフォイ
音楽/ A・R・ラフマーン
出演/ ジェームズ・フランコ  アンバー・タンブリン  ケイト・マーラ

(カラー/94min/アメリカ=イギリス)
by haru733 | 2011-06-22 16:41 | アメリカ映画 | Comments(0)

ミレニアム2 火と戯れる女 (2009年)

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 監督が変わり、よりスリリングにコンパクトになった、『ミレニアム』シリーズの第2話目。
孤高のヒロイン、リスベットの孤独な闘いは激しさを増し、あれよあれよというまの130分。画面が地味とはいえ、そこに味があったりする。
生い立ちを隠してひたすら復讐に命を懸けるリスベットと、彼女の力になりたい雑誌「ミレニアム」の編集長ミカエル。ふたりは、知らず知らずのうちに同じ人物の周辺を探るうち、思いがけない再会を果たすのだが・・・。

背中に大きなドラゴンのタトゥー、鼻ピアス、悪魔のようなメイクに身を包んだ、小柄なリスベットは、悲惨な生い立ちのせいで完全に病んでしまっている。ともすれば、彼女が生身のか弱い女性だということを忘れそうになるけれど、けして不死身ではないのだ。
第2話では、悪い奴らにコテンパンにやられてしまう。殴られ撃たれ、土に埋められ・・・・痛々しくて見てられないほど徹底的に。
そんなとき、唯一駆けつけるミカエルが、けしてハンサムではないのに、守護天使ミカエルなみに頼れる男と見えてくるあたりがおもしろい。最終話が楽しみになった。

ハリウッドでのリメイク版はデヴィッド・フィンチャー監督、ルーニー・マーラ、ダニエル・クレイグが主演だそうだ。来年公開予定。
デヴィッド・フィンチャー監督のサスペンスには定評があるし、美男美女を並べられるとこのオリジナル版は見劣りするに決まっている。。けれども、スウェーデン独特の陰鬱さは、なかなか表現しきれないのではないかな。
ひとつだけ言えるのは、ダニエル・クレイグであれば、ミカエルのすけこましぶりに違和感がない―これはだけはたしかだ。        (スウェーデン=デンマーク=ドイツ合作/130min)
by haru733 | 2011-06-16 22:21 | 多国合作映画 | Comments(0)

ファニーゲーム (1997年)

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 不条理に唸って、くやしいほど感情を操られて、暴力の在り方にゾッとさせられてしまう、文句なしのサスペンス。オーストリアの巨匠ミヒャエル・ハネケ氏によるまさに渾身の一作。10年後、監督自身による、細部まで似せたアメリカバージョン『ファニーゲーム U.S.A』が作られています。

とある湖にバカンスにやってきた家族。夫ゲオルグと妻アナ、息子のショルシ、愛犬のロルフィー。やがて別荘に着いた一家のもとに、ペーターと名乗る見知らぬ若者がやって来る。はじめは礼儀正しかったペーターだが、青年パウルが加わり、ふたりは態度を豹変させていく。
ゲオルグの膝をゴルフクラブで打ち砕くと、突然一家の皆殺しを宣言。家族はパウルとペーターによる“ファニーゲーム”の参加者となるのだった―。
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この不愉快さや怖ろしさは、ほんとうに怖い生の感覚。実際の暴力事件もこんなかと思うと、一生関わり合いたくない、切にそう願ってしまう。
理不尽なまで、死に向かって真っ直ぐ突き進んでいくストーリー。犯人のパウルは観客を煽るように、時おり、カメラに向かって話しかけ、ウインクする。
観客は、被害者どころか、望んでもないのに加害者にまでさせられてしまうから悔しい。それはハネケ監督の思うツボ。何から何まで操作させれていることを痛感するだけ。

どうにかして生き延びるために足掻く、家族のひっしの攻防さえ虚しく、救いのない不快と、憤りを越えた虚脱感は、映画史上もっとも最悪な余韻を残したかもしれない。

父親役には、『わが教え子、ヒトラー』『善き人のためのソナタ』のウルリッヒ・ミューエ。2007年に他界してしまったことが惜しまれる方です。

(108min/FUNNY GAMES)
by haru733 | 2011-06-15 23:31 | オーストリア映画 | Comments(0)


映画,読書,山,古物をめぐる―日々のきろく


by haru733

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